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鈴子と浩二は神戸は三宮駅直結のサウスタワーマンションのロビーにいた、浩二は巨大なビルから見える景色を眺めながら言った
「このビルが・・・君のものなのかい?」
「正確に言えば私の会社と銀行のものよ」
エレベーターは最上階まで直行した、四十階右半分の全フロア5LDKが彼女のコンドミニアムだった、鈴子は二層になったコンドミニアムのあちこちを見せて回った
白の大理石の暖房が効いた床が素敵な大きなリビングには、アンティークの家具がお洒落に配置されている
暴風対策用のガラスの柵に囲まれた広いテラス、食堂、主寝室が三つに、バスルームは二か所あり、そのほかにキッチンと、書斎と、執務室があった
あまりに豪華で浩二が目を見開いてキョロキョロしていると鈴子が言った
「私達、一緒にここに住まない?」
「本当に?」
その言葉に浩二はまだ混乱していた、こんな豪華な住まいは自分にはふさわしくないかもしれないと考えているのだろうし、不意に彼の腕に装着されているスマートウオッチを眺めて鈴子に言った
「でも・・・先週・・・君からこんな豪華な時計をプレゼントしてもらったばかりで・・・悪いよ・・・何から何まで・・・」
鈴子は自分とお揃いの「タグ・ホイヤー」に特別に作らせたペアのスマートウォッチを浩二にプレゼントしていた
ベルト部分がチタンシルバーで画面枠にはダイヤが埋め込まれていた、それは特別な鈴子専用の通信機器が搭載されていて、どこにいてもすぐに二人は会話やメッセージのやりとりが出来た
彼が戸惑いながらいながら言う
「でも・・・今は引っ越しとかしている時間は・・・」
「そんな必要は無いわ、必要な物は全て揃っているから、こっちきて」
鈴子は浩二の手を引っ張って行って、一つの衣裳部屋に入っていた
「う・・・わぁ・・・・」
そこにはクローゼット一杯に浩二にあつらえたスーツがぎっしり並べられていた
「引き出しも開けてみて」
恐る恐る・・彼が一番上から衣装タンスを開けていくと、上から、ビジネスシャツ、ドレスシャツがカラーごとに一ダース入っていた、さらにアンダーウェアに革靴も、浩二の家の二倍の衣装が全てここに揃っていた
どれも浩二の体にあつらえた様にぴったりフィットしていて、彼はこんな素敵なスーツを着て、国会を闊歩する自分を思わず想像してしまった
いつの間に彼女は自分のサイズを測ったのだろう・・・ここまで彼女の財力を見せつけられると頭がクラクラしてくる、改めて彼は自分が凄い女性に好かれていることを自覚した
「ねぇ!こっちも来て!」
さらに鈴子に手を引かれてもう一つのドアを開けると、そこは続き部屋になった見事な書斎が彼の目に飛び込んで来た
部屋の壁に埋め込まれている本棚には、綺麗な革表紙の六法全書や民事訴訟実務要覧がびっしり並べられ、今すぐ法律事務所が開けそうなプリンターや電子機器が揃っている
「素晴らしい!」
浩二は真っ黒で重厚に光る立派な机を撫でながら言った、そして感激してそのまま椅子に座ると、柔らかいレザーの椅子がずっしりと浩二の尻を包んだ
「ここで、あなたは講演会の原稿など考えてくれたらいいわ」
鈴子が座っている彼を後ろから抱きしめた
「今のあなたのマンションはそのままにして、二人で外であちこちで会ってたら、いつか噂が立つわ、ここのコンシェルジュはキチンと教育されているから私達の事は誰にもバレないわ・・・しばらくは私・・・二人の事は秘密にしておきたいの」
浩二は鈴子に優しくキスをした
「このコンドミニアム・・・お気に召した?」
「最高の書斎だよ・・・ありがとう鈴子・・・君は僕が生涯愛する最高の女性だよ」
―私も生涯愛する愛しい男性はあなただけ・・・これは本当だわ―
「それで・・・いつからここに来てくれる?」
浩二が微笑んで言った
「今日からでも」
「嬉しいわ」