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増田は会議室で重役を従えて、この会議の主が来るのを待ち構えていた




午前9時、会議室に入って来た、ビシッとビジネススーツに身を包んだ一分の隙もない鈴子の姿を見るとワクワクした、今日も血潮が湧く商談が始まる



鈴子が上座に座り、朝礼をして口を開いた




「それでは問題点から先に報告していただきましょうか」



一人の重役が立ち上がった



「ハイ、では私の急ぎの案件から・・・明石海峡のホテルは早く転売した方がいいと思います、関東で名乗りを上げた購入希望者が来ているんですが、昨日行って検分した所、惨たんたる状態なんです、改装するのに一億はかかると思います」


「それでその関東で名乗りを上げて下さった購入希望者さんはホテルはもうご覧になったの?」


「いえ、明日案内することになっているんです」



鈴子は書類に目を通しながら言った



「それでは来週に延ばしなさい、その間に塗装業者を入れて、なんとかボロを隠しましょう、購入希望者さんを案内する日は、エキストラを雇って、ロビーの出入りを急がしく見せるのよ」



「承知しました」





増田は首を縦にウンウン振りながらニヤリと笑った、また別の重役が立ち上がった




「それからデザイン会社が新しい冷凍食品のパッケージ図案を持って来ています、今私の部屋で待機していますが―」



「後で見せていただくけど、そろそろこのお役目を私ではなくて他の人に振ってちょうだい、私は報告を聞くだけにしたいわ、良い報告をね」



「かしこまりました」





さらに別の人物が立ち上がる



「新ビルの融資に加わるはずだった筒井海上生命保険会社ですが―」


「それがどうかしたの?」


「まだ契約書にサインしないんです、少しビビッているんじゃないですか?」




鈴子は話をメモした




「あの会社には、あとで私が直接話しましょう、次は?」


「次のプロジェクトに予定している住友銀行の八億五千万ですが」


「それが?」


「急に過剰融資だと言い出して、融資をやめたがっています」


「取り決めた利息は何パーセントなの?」


「十七パーセントです」


「それじゃあ、午後にその人達を呼んでちょうだい、二十パーセントなら文句ないでしょう、私が直接話をつけます」



その時鈴子のスマートウォッチが鳴った




「ち・・ちょっと・・・失礼!」


「会議中だぞ!」




増田はそう言って目を丸くして鈴子の腕でチカチカ光っているタグ・ホイヤーのスマートウォッチを見た、ベルトは高級ゴールドのレディース用のブレスレットにカスタマイズしているが、今まで鈴子がこんな時計を付けていたのは見たことがなかった




「ごめんなさい!ちょっと抜けるわ、後はみなさんで話し合って決めてください」




そう言って鈴子は腕のスマートウォッチを気にしながら出て行った、増田は彼女の後姿を不思議に思いながら見送った






・:.。.・:.。.






ピッ!

『鈴!』



鈴子のスマートウォッチから元気そうな浩二の顔が映し出された



クスクス・・・「もう!会議中よ!」



『急に決まったんだけど、今夜はちょっと明石の方へ行くから帰れないよ』



「ええ?そうなの?」




途端に今日は特別にホテルオークラから出張寿司職人を呼び寄せて二人で素敵なディナーを取ろうと考えていたのが台無しになって鈴子はガッカリした




『お土産沢山買って来るから待っててね』



「わかったわ・・・」




鈴子は途切れたスマートウォッチの文字盤をじっと見つめていた、何だか付き合っていた時よりも、彼と同棲している今の方がどういうわけか寂しかった



自分はいつでも彼の為に時間を割くつもりでいるのに、彼は一度外へ飛び出して行ったらなかなか連絡が付かない、何時に帰って来るのかもわからない




「帰らない旦那様の事を鉄砲玉とは良く言ったものね・・・」




鈴子は同棲すればもっと二人は一緒にいれて幸せな時間を過ごせると思っていたのに、もう三日もすれ違いで彼に抱かれていない






ボソ・・・「寂しいわ・・・」






冷たい重厚な窓におでこを引っ付けて、彼女はポツリと呟いた




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