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その足取りは昔よりもぎこちなくて、“慣れていない”という感じがしていた。
そんな足取りで蹴っていたのは、薄汚れた白と黒のサッカーボールであの日、この場所で遊んだ“あの”サッカーボールだった。
「遅れてごめん。宙、サッカーしよ。」
先輩は俺の目を見て俺に伝えていた。
先輩の表情は昔と変わっていなかった。
息が切れている先輩。劣っている先輩。高校の時とは大違いで“格好悪い。”あの先輩が格好悪い。
とてもとても、心から可笑しかった。
先輩が年をとっていた。
「先輩、年取りましたねッ。」
笑ってしまった。笑わないでいようと思っていたわけじゃないけれど。
顔をくしゃっとして笑ってしまった。
この音声が俺の声でありますように。心から願った。
俺の目の前の二人は顔を見合わせて驚いているような、嬉しいような表情をしていた。
「サッカーしたいです。」自分でもこの言葉を機械音だと思“え”なかった。
本当に先輩とサッカーをしたかった。
これは“俺の言葉”だった。
先輩はいつもいつも俺を助けてくれた。
俺が辛いとき、苦しいとき、生き詰まったとき、どんなときでも知らない間に俺を助けてくれた。
それはこの河川敷でのことだった。