テラーノベル
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3ヶ月で本気(マジ)になる恋。
🩷佐野勇斗
💛吉田仁人
🤍山中柔太朗
❤️曽野舜太
💙塩﨑太智
第13話 大好き、なんて。
一昨日の夜。
勇斗とのデートを終えた仁人は、
帰りの車の中で眠ってしまった。
寝ぼけたまま勇斗に甘えて。
「もうちょっと、いてぇ……?」
なんて、普段なら絶対に
言わないようなことまで口にして。
けれど、そんなことを言った記憶は、
仁人にはない。
翌朝、目を覚ましたときには、
なぜか自分のベッドにいて、
隣には勇斗がいた。
💛「……なんで勇斗がいるの!?」
そんなふうに大騒ぎして。
そのまま二人で寝坊して、
コンビニでおにぎりを買って、
慌ててスタジオへ向かった。
いつもと変わらない、賑やかな朝。
……のはずだった。
昨日の夜。
仁人はソファに座り、
スマホを片手にSNSを眺めていた。
💛「…………」
いつものように、
流れてくる投稿をスクロールしていく。
……そのとき。
仁人の指が、ぴたりと止まった。
画面に映っていたのは、
見覚えのある車内。
そして、見覚えのある横顔。
💛「…………え?」
思わず、声が漏れた。
画面の中では、
勇斗が助手席で眠る仁人を見つめていた。
少しだけ目を細めて。優しく笑って。
まるで、愛おしくてたまらないものを
見るような顔で。
そして。
🩷『……大好きだよ』
💛「………………えっ!?」
仁人は、勢いよくスマホを顔に近づけた。
💛「ちょ、待って待って待って……!!」
動画を止める。
もう一度、最初から再生する。
🩷『……大好きだよ』
💛「…………っ」
思わず、息を止めた。
画面の中の勇斗は、眠っている自分に
向かって、
あまりにも自然にそう言っていた。
照れたように笑って。
少しだけ、声を落として。
🩷『……ほんと、大好き』
💛「………………」
仁人は、しばらく画面を見つめたまま
動けなかった。
だって。
あんな声で、あんな顔で。
『大好きだよ』なんて。
💛「…………いや、待って」
はっと我に返る。
💛「……これ、配信じゃん」
そう。これは、
一昨日の夜のインスタライブ。
自分が眠ってしまったあとも、
配信は続いていたらしい。
💛「……え、俺、これ知らないんだけど……」
そりゃそうだ。
寝ていたのだから。
💛「……てか、なんでこんなに広まってんの……?」
画面を少し下にスクロールすると、
コメントが次々と目に入ってきた。
『勇斗くん、本気じゃん……』
『寝てる仁人に言うのずるい😭』
『あの声、絶対いつものファンサと違う』
『さのじん尊すぎる』
『仁人くん、これ知ったらどうなるんだろう』
『勇斗くんの目が優しすぎるんだけど……』
『これを見て本音じゃないって言える???』
『上着かけてあげてるのも優しすぎる😭』
『もうこれ、本当に付き合ってるでしょ……』
💛「………………」
仁人は、ゆっくりスマホを下ろした。
💛「……いやいやいや」
小さく首を振る。
💛「……違うでしょ」
誰に言い聞かせるわけでもなく、呟いた。
💛「……勇斗、俳優だし」
そう。
勇斗は俳優だ。
人をときめかせるような言葉だって、
自然に言える。
優しい表情だって、できる。
ファンが喜ぶことだって、
きっと分かっている。
💛「……あれくらい、普通にできるでしょ」
そう言って、スマホをテーブルに置いた。
…………。
💛「…………」
数秒後。
そっと、スマホを手に取った。
💛「…………もう一回だけ」
そして、再生ボタンを押した。
🩷『……大好きだよ』
💛「…………っ!!」
💛「いや、だから!!!」
慌てて動画を止める。
💛「……なんでそんな優しい声なの……」
ぽつりと漏れた言葉に、
自分でも驚いた。
だって。
いつもの勇斗なら、
もっと軽い感じで言いそうなのに。
「大好きだよ」って。
笑いながら、少しふざけながら。
そういう言葉なら、まだ分かる。
でも、動画の中の勇斗は違った。
眠っている自分を見つめながら。
誰に聞かせるためでもないみたいに。
ただ、そこにある気持ちを、
そのまま口にしたみたいに。
💛「…………」
仁人は、思わずクッションを抱きしめた。
💛「……いや、でも」
違う。
💛「……配信中だったんだし」
もしかしたら、
ファンに向けた言葉だったのかも
しれない。
恋人同士の設定なのだから、ああいうこと
を言うのも自然なのかもしれない。
💛「…そう、ファンサ……」
自分で言って、少しだけ頷く。
💛「……ファンサだよ、うん」
…………。
💛「………………」
💛「……でも、あれがファンサ……?」
また、分からなくなった。
だって、勇斗は自分が寝ていると
思っていたはずだ。
いや、実際に寝ていたのだけれど。
ファンに向けて見せるためなら、
カメラに向かって笑えばいい。
恋人らしいことをするなら、
もっと分かりやすく、
いつもの調子でやればいい。
それなのにあんなふうに、自分を見て。
あんな声で。
💛「…………っ」
仁人は、顔を覆った。
💛「……もう、やだ……」
何が嫌なのか、自分でもよく分からない。
動画を見なければ…
よかったのかもしれない。
そうすれば、昨日までと同じように、
何も考えずに勇斗と話せたのに。
今だって。
💛「…………」
明日、勇斗に会う。
その事実を考えただけで、
なんだか落ち着かなくなった。
いつもどおりに話せるだろうか。
いつもどおりに笑えるだろうか。
もし、
勇斗があの動画のことを知っていたら。
いや、本人が言ったのだから、
知っているに決まっている。
💛「……俺が見たって、気づくかな……」
気づいたら、何て言われるんだろう。
「見たの?笑」
なんて、いつもの調子で聞かれたら。
💛「…………」
絶対、まともに顔を見られない。
💛「……いや、なんでだよ……」
仁人は、クッションに顔を埋めた。
💛「……別に、変なことじゃないじゃん」
恋人同士なのだから。
「大好きだよ」くらい、
言ったっておかしくない。
そう。二人は、恋人なのだから。
……三ヶ月だけの。
💛「…………」
そのことを思い出して、
胸の奥が少しだけ重くなった。
三ヶ月の約束。
その中で、勇斗は自分を恋人として
扱ってくれている。
デートにも連れて行ってくれるし、
優しくしてくれるし、時々、
びっくりするくらいドキッとすることも
言ってくる。
でも、それは。
💛「……恋人だから、だよね」
ぽつりと呟いた。
恋人だから、優しくする。
恋人だから、好きだと言う。
恋人だから、あんな顔をする。
……そう考えれば、全部説明がつく。
💛「……うん」
仁人は、小さく頷いた。
💛「……そういうこと」
自分に言い聞かせるように。
けれど。
どうしても、最後にもう一度だけ、
動画の中の勇斗の顔が浮かんでしまう。
あの、優しい目。
あの、少し照れたような笑顔。
そして。
🩷『……ほんと、大好き』
💛「………………っ!!」
💛「もう忘れろ、俺!!!」
部屋に響く、自分の声。
もちろん、返事はない。
仁人は深く息を吐くと、
スマホを伏せてテーブルに置いた。
もう見ない。
絶対に見ない。
そう決めたのに。
数分後には、
またスマホに手を伸ばしかけていた。
💛「………………」
💛「……いや、見ないって」
慌てて手を引っ込める。
……何やってるんだろう、自分。
ただの切り抜きだ。
ただの、恋人らしい言葉だ。
それなのに。
💛「…………明日、どんな顔して会えばいいの……?」
小さく呟いた声は、誰にも届かなかった。
そして、今日。
M!LKの仕事がある日。
仁人は、楽屋の前で一度だけ深呼吸した。
💛「…………」
大丈夫。
いつもどおりにすればいい。
昨日の動画のことなんて、
何も気にしていないふりをすればいい。
そもそも、勇斗が本気で言ったとは
限らないのだから。
💛「……よし」
自分に言い聞かせて、
楽屋のドアを開けた。
すると。
🩷「おはよ、仁人!」
聞き慣れた声が飛んできた。
そこにいたのは、いつもどおりの勇斗。
いつもどおりの笑顔。
いつもどおりの声。
何も変わっていない。
……はずなのに。
💛「…………っ」
昨日の動画が、頭の中で再生された。
🩷『……大好きだよ』
💛「…………」
💛「……おはよ」
思ったよりも、そっけない声が出た。
🩷「……ん?」
勇斗が、不思議そうに首を傾げる。
🩷「……なに?笑」
💛「……別に」
🩷「え、なんか冷たくない?笑」
💛「冷たくない」
🩷「いや、冷たいって笑」
いつもなら、ここで言い返せる。
「うるさい」とか。
「気のせいでしょ」とか。
でも今日は勇斗の顔を見るたびに、
あの動画が浮かんでしまう。
💛「…………」
🩷「……仁人?」
💛「……なに」
🩷「いや、なんでもないけど……笑」
勇斗は、少し困ったように笑った。
その笑顔を見て、
仁人の胸がまた落ち着かなくなる。
……何なんだよ。
いつもどおりじゃん。
何も変わってないじゃん。
それなのに。
💛「…………」
どうして自分だけ、
こんなに意識しているんだろう。
🩷「……今日、なんか変だね?笑」
💛「……変じゃない」
🩷「ほんと?笑」
💛「……ほんと」
仁人は、勇斗から目を逸らした。
その瞬間。
ガチャッ
また、楽屋のドアが開いた。
🤍「おはよー」
❤️「おはよー!」
💙「おはよ! 何、もう二人ともいるん?」
柔太朗、舜太、太智が続けて入ってきた。
🤍「……あれ? なんか、仁人今日静かじゃない?笑」
💛「……普通だけど」
💙「え、そう? 俺にはいつもどおりに見えるけど笑」
❤️「……んー?」
舜太は、仁人と勇斗を交互に見た。
勇斗はいつもどおり。
仁人は、どこか落ち着かない様子。
……何かあったんやろか。
そう思いながらも、
舜太はすぐには聞かなかった。
そのとき。
🤍「……あ、そういえばさ」
柔太朗が、何気ない調子で口を開いた。
🤍「一昨日の配信の切り抜き、流れてきたんだけど」
💛「…………っ」
仁人の肩が、ぴくっと跳ねた。
🩷「……え?」
🤍「勇斗が仁人に『大好きだよ』って言ってたやつ」
💙「あーーー!! それ!!!」
太智が、ぱっと顔を上げた。
💙「俺も見た!! え、何あれ!? 本物!?」
🩷「えっ、ちょ、待って!?笑」
💙「いや、だって!! 寝てる仁人に向かって『大好きだよ』って言ってたやん!!」
💙「しかも、めっちゃ優しい声で!! え、あれ何!? ほんまに付き合ってる人のやつやん!!笑」
🩷「いやいやいや!!笑」
勇斗は目を丸くした。
🩷「あれ、切り抜き出てんの!?」
💙「出てる出てる!! めっちゃ流れてきた!!笑」
🩷「うわ、まじか……笑」
思わず顔を覆う勇斗。
まさか、あそこまで広まっているとは
思わなかった。
🤍「あと、上着かけてあげてたところもね」
💙「そうそう!! あれも優しすぎた!!」
🤍「コメントもすごかったよ。『本音じゃん』とか、『絶対好きでしょ』とか」
🩷「…………」
勇斗は、困ったように笑った。
🩷「……あのときは、仁人には内緒ねーって言ったのにぃ😭」
💙「いや、全世界に配信されとったんやから無理やろ!!笑」
🤍「笑笑笑」
🩷「ほんとだよぉ……笑」
🩷「俺、普通に内緒にできると思ってたんだけど……笑」
💙「なんでやねん!!笑」
🩷「だって、みんな黙っててくれるかなって……笑」
🤍「いや、あの内容を見て黙ってるのは難しいでしょ笑」
💙「そうそう!! 俺なんか二度見したもん!!笑」
🩷「……うわぁ、もう……笑」
勇斗は恥ずかしそうに笑った。
🩷「……仁人にも見られてるし……」
その言葉に、仁人の肩がぴくっと動いた。
💛「……別に」
🩷「……ん?」
💛「……見たけど、別に何とも思ってないし」
🩷「……えっ、あ、うん?笑」
仁人はそれだけ言うと、
ぷいっと顔を背けた。
……何とも思ってない。
そう言ったのは自分なのに。
💛「…………」
本当は、
何とも思っていないわけがなかった。
あんな声で。
あんな顔で。
『大好きだよ』なんて言われたら。
……いや、自分に言ったわけじゃない。
寝ている自分に向けた言葉だとしても、
配信中だったのだから、
ファンへのファンサだった可能性だって
ある。
💛「…………」
仁人はそっと視線を落とした。
その様子を、
少し離れたところから見ていた舜太。
❤️「…………」
さっきから、あまり口を開いていない。
いつもなら太智の話に乗っかって
笑うこともあるのに、
今日はどこか考え込んでいるようだった。
それに気づいた柔太朗が、
隣から顔を覗き込む。
🤍「……舜太?」
❤️「ん?」
🤍「今日、静かじゃない?笑」
❤️「……そう?」
🤍「うん。もしかして、体調悪かったりする?」
❤️「いや、体調は全然大丈夫やで笑」
🤍「ならいいけど……なんか考え事?」
舜太は少しだけ視線を動かした。
勇斗は太智に何かを言われて、
困ったように笑っている。
仁人はそんな勇斗を見ないように、
スマホを触っていた。
❤️「…………いや」
❤️「……一昨日の配信のこと、ちょっと思い出してて」
🤍「あー、あの切り抜き?」
❤️「……うん」
舜太は小さく息を吐いた。
❤️「……俺、あの配信、生で見てたよ」
🤍「……え?」
❤️「一昨日の夜。リアルタイムで」
柔太朗が、少しだけ目を見開く。
❤️「……勇斗が『大好きだよ』って言ったとこも」
❤️「そのあと、『今のは仁人には内緒ね』って言ったとこも」
❤️「……全部、見てた」
舜太は苦笑いを浮かべた。
❤️「……流石にびっくりしたわ、あれは」
🤍「……笑笑」
❤️「いや、だってさ……」
舜太は、
少し考えるように視線を落とした。
❤️「最初は、恋人企画やし、そういう演出なんかなって思ったんよ」
❤️「でも……」
そこで、言葉を止める。
あのときの勇斗の顔が、頭に浮かぶ。
眠っている仁人を見つめる目。
声を出さないように笑う表情。
上着をかけるときの、
あまりにも自然な手つき。
そして。
🩷『……大好きだよ』
あの言葉。
❤️「……なんか、演出っていうだけじゃ説明つかん気がして」
🤍「…………」
❤️「……ほんまに、好きなんかなって」
柔太朗はすぐには答えなかった。
ただ、ちらっと勇斗の方を見て。
🤍「……さあね?笑」
そう言って、意味ありげに笑った。
❤️「……いや、絶対なんか知っとるやん笑」
🤍「えー? 何のこと?笑」
❤️「その顔!!笑」
🤍「どんな顔よ笑」
二人は小さく笑った。
けれど、舜太の胸の中には、
まだ疑問が残っていた。
もし、あれが本当に勇斗の本音だったら。
仁人は、
それを知ったらどうするんだろう。
そして、勇斗は。
あんな言葉を口にしてしまったあとで、
これからも今までどおり、
何もなかったように笑えるんだろうか。
❤️「…………」
舜太は、もう一度だけ勇斗を見た。
勇斗は笑っている。
いつもどおり、明るく。
でも、仁人が少しだけ視線を向けると、
ほんの一瞬、嬉しそうに目を細めた。
……あ。
❤️「…………そっか」
小さく呟く。
やっぱり、
気のせいじゃないのかもしれない。
あの「大好きだよ」は。
ただのファンサなんかじゃなくて。
勇斗の、
本当の気持ちだったのかもしれない。
一方、その頃。
仁人は、勇斗の声を思い出していた。
🩷『……大好きだよ』
💛「…………」
何度も、何度も。
本音にしか聞こえない。
でも、信じるのは怖い。
もし、自分が勝手に勘違いしているだけ
だったら。
もし、勇斗にとっては、
恋人企画の中での何気ない言葉だったら。
💛「…………」
勇斗のことを考えるたびに、
答えは遠ざかっていく。
本当は、聞いてしまいたい。
あの言葉は、どういう意味だったのか。
本当に、自分のことが好きなのか。
それとも。
ただのファンサだったのか。
💛「…………はぁ」
仁人は、小さく息を吐いた。
今までだって、
勇斗にドキッとすることはあった。
優しくされて、
嬉しくなったこともあった。
でも、そのたびに思っていた。
……勇斗は俳優だから。
こういうことに慣れているだけ。
そう考えれば、何も問題はなかった。
なのに。
昨日のあの声だけは。
どうしても、そう思えなかった。
💛「…………」
もう一度、勇斗の方を見る。
勇斗は太智と笑いながら話していた。
いつもどおりの笑顔。
いつもどおりの声。
何も変わっていない。
それなのに。
💛「…………」
自分だけが、昨日からずっと変なままだ。
――あれが本音だったら、どうしよう。
そんなことを考えてしまう自分が、
いちばん分からなかった。
そして。
もし、あれが本音だったとしたら。
自分は、
勇斗に何と答えればいいのだろう。
💛「…………」
仁人は、そっと目を伏せた。
まだ、分からない。
勇斗の気持ちも。
自分の気持ちも。
ただ一つだけ。
もう、勇斗の「大好きだよ」を、
ただの言葉として聞き流すことは
できなくなっていた。
――今さら、どんな顔して会えばいい?
jinto _ .
90
#ysdjnt
apricot
4,667
コメント
12件
切り抜ききた〜!!仁ちゃんにバレてんのもすごいし、舜ちゃんがリアルタイムで見てたのも衝撃やし笑うちもリアルタイムで見たかったな〜
ゎゎ !! これもしかして私が考えたお話だったりしますか … ?? ( ( 今回はただただ吉田さんが可愛いだけのお話じゃん !! ✨️ 続きが楽しみすぎる っ 💭🍒
今回も最高の小説でした…( ´ཫ`) もう好きすぎて滅です(?) 仁人くんのなんとも言えない感情と 勇斗くんの完全にバレないと思っていた天然さが尊すぎて読みながら何回か死〇してたかもしれない… 続き待ってます!