・・・数週間後、この村にいろいろなところから大人たちがやって来た。
今住んでいたところに不満を持ち、子供しかいないこの村にやってきたらしい。
やがて子供が多かったこの村は、大人の方が数が多くなった。
(なんでこんなに人が・・・)
人があまり好きでは無い柚津は、警戒心を強めた。見つからないように、息を潜めていた。
進化していく村。明かりが灯る。
ほんの数週間前の薄暗い風景とは大違いだ。
だが、子供たちに目を向ける大人はいなかった。
やがて、この村を完全に占領しようとした大人たちが、「子供は邪魔だ」という思考を持つようになり、子供を捕まえ閉じ込めた。
柚津はなんとか逃げようと必死だったが、体力がない柚津に逃げ延びる力などない。
他の子供たちと同じようになってしまった。
暗く狭い。月明かりしか灯らないその部屋には、わずかな子供たちがいる。
その中で1人、柚津に声をかけてきた。
「やっほ!」
人に話したことがない柚津は、目を合わせることしか出来なかった。
「捕まっちゃったね〜。狭い檻に。」
能天気だな・・・。と思いつつも、そいつに耳を貸す。
「いやなもんだよね〜ほんと。大人たちってこういうところがあるから嫌いなんだ。」
「ほんと、子供に生きる権利はないのか!って話だよね〜。」
そいつの言っていることがよくわかる。
「僕は五十嵐詩哉(いがらしうたや)!!ねね!僕と友達になろうよ!!」
展開が早くて読めない。
(友達・・・ってなんだ??)
「あ、あの・・・。」
緊張しながらも聞く。
「友達って・・・何??」
詩哉は驚く。友達を知らない人がいるなんて思わなかったからだ。
「そ、その・・・僕、記憶が無いんだ。」
詩哉は納得した。
「あー!そゆことね!!」
「友達っていうのは、助け合ったり、慰めあったり、時に怒りあったり、笑いあったりする人のことだよ。」
柚津は少しわかった気がした。
こいつと友達になっていいのか・・・?
そう思ったが、こいつなら大丈夫な気がする。と思えた。脱出にいい協力相手になりそうだし、なんにせ
同じ考えなんだから。
「いいよ・・・!友達。」
詩哉は喜んだ。
「やったー!ねぇ!君の名前、なんて言うの?」
「僕は古記柚津・・・!よろしく。」
柚津がそういった後、詩哉は何か言いたそうだった。
「ねね!柚津!」
「僕・・・足が片足ないんだよね・・・。」
柚津は驚いたが、よくよく見ると右足がない。
僕と同じ障害者だと、この時は安心していた。
「そうなんだ・・・!大丈夫。」
「僕も同じようなものだから。」
詩哉はほっとした。
「じゃあ柚津!これからよろしく!」
柚津は新たに、「友達」故に「仲間」を学んだ気がした。
柚津と詩哉のビジュアル
上 柚津
下 詩哉
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