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次の月曜日。
和也は学校の屋上にいた。
授業の合間の昼休み。
ぼーっと空を見ていると、誰かがドアを開けて入ってくる音がした。
桃子:「……あ、やっぱりいた」
声をかけてきたのは、福地桃子さんだった。
彼女は和也の隣にそっと座り、少しだけ間を置いてから言った。
桃子:「金曜日のこと、ちゃんと謝りたくて……ごめんね、勝手に“和也くんが好き”って思い込んで、期待してた」
和也は、穏やかに首を振った。
和也:「いや、俺も……曖昧に優しくして、余計な期待持たせてもうたかもしれん。こっちこそ、ごめんな」
彼女は少し笑った。
桃子:「……でもね、思ったの。“好き”って、ちゃんと伝えてもらわないとダメだなって。私は“優しさ”と“恋”を、勝手に重ねてた。和也くんが“好きって気持ちがよくわからない”って言ったとき、少し寂しかったけど……なんか、スッとした。ちゃんと本音で向き合ってくれたんやなって」
和也は、ふっと肩の力を抜いた。
和也:「俺、正直……“恋をしなあかん”って、ずっと思ってた。みんなそうしてるから、自分だけ何か足りてへん気がして……でもな、最近ようやく気づいた気がする。“わからないまま”でも、人と繋がってええんやなって」
そのとき、彼女が小さく笑って言った。
桃子:「じゃあ、和也くん。“友達として”もうちょっと一緒に笑ってくれへん?」
和也:「もちろんや」
二人は同時に笑った。
その午後、和也は教室に戻ると、
丈一郎と恭平が「おかえり〜」と手を振ってくれた。
謙杜が「さっき福地桃子さんと一緒やったやろ!どないなったん!?」と食いついてきたが、
和也はいつもと変わらない笑顔でこう返した。
和也:「友達になったんや。ちゃんと、言葉で繋がれたからな」
謙杜:「ふーん……なんか、和也がまたちょっと“カッコええ男”なっとる気するやん」
和也:「やかましっ。元からイケメンやろ」
そのとき、流星がぽつりと呟いた。
流星:「……恋って、“気持ちがわかる”よりも、“気持ちに向き合おうとする”ほうが、大事なんかもな」
大吾:「それ、深いやん」
恭平:「急に哲学っぽいやん」
丈一郎:「流星、夜中に詩でも書いてんの?」
ワイワイとふざけ合うみんなの中で、
和也は、あたたかい空気を深く吸い込んだ。
“わからない”ことも、“向き合った”ことで、確かに前に進んだ。
恋じゃなくても、ちゃんと通じる想いがある。
そしてそれは――優しさとも、ちゃんと違う形で育っていける。