さくこじ
※半分くらいラウさく
佐久間side
めっちゃくちゃ久々のオフだったからもう何も迷うことなく真っ直ぐアキバ行ってオタクライフを謳歌した。もーね、当たり前の事なんだけどさぁ…やっぱ最高だよ俺の嫁たちは。語りたいとこではあるけど明日も仕事あるしそろそろ帰んなきゃ。片手に2、3袋ずつ紙袋をぶら下げて車まで行ってなんとか一人で積み込む。そのまま新しく買った嫁たち…なんか語弊が生まれそうな言い方だな。まあいいや、新しい嫁たちを連れて家に帰った。帰ってからまた少し外出をして、恋人に会いに行く。5ヶ月くらい前からずーっとメンバーにも内緒で付き合ってんの。んでそいつと飯食ってバイバイして家帰ってアイス食ってると昨日康二とした会話を思い出して窓から外を眺めてみる。大きな月が出ていて彼も今これ見てんのかな、なんて。電話を掛けてみた
『”…もしもしさっくん?どないしたん?”』
「”あ、もしもーし、いやあれ見てるかなって”」
『”あれ?”』
「”ストロベリームーン”」
まさかの忘れてるパターン?名前教えてくれたの康二だったはずなのに。と言うかストロベリームーンって名前してる割に言うほどピンクじゃねえな。どっちかっていうとオレンジじゃね?
『”あ、ストロベリームーンのこと?見とるよ今、ちょっと薄めのピンクや”』
「”嘘ぉ?これオレンジっぽくね?”」
ほんとに同じもん見てんのか?ってくらい違うこと言ってる。先入観に惑わされてるか見てないけど見た体で話してるかだと思ってたら彼から1枚の写真が送られてきた。彼の家のベランダから撮られたであろうその写真に写る月は確かに淡いピンク色をしていた
「”えガチじゃん”」
『”せやろ?ちゃんとピンクやねん”』
得意気に話す彼に此方から見えている月も送ってみた。結構オレンジ色のやつ。彼には劣るけれどなかなか上手く撮れたんじゃない?
『”めっちゃオレンジやん!笑”』
「”だろ?!すーげえオレンジなのよ俺の家から見えてる月!”」
お互いのメンカラの月を見ているだなんて平安時代とかなら和歌とかにされてたんじゃねえの笑 彼から送られて来たピンク色の月を生で見てみたかったなと思ったら彼からこんな言葉が
『”来年はオレンジのやつ肉眼で見たいわ笑”』
「”わかるー!!自分のメンカラの月とか人生で一回は見てえよな”」
同じこと考えてんじゃん、まあ5年も同じグループでやってきたらそりゃこうもなるか。あとこの画像保存してもいいかな
「”あんさ、さっき送ってくれたピンクの月の写真保存していい?”」
『”ええよええよ、ほな代わりにさっきのオレンジの月保存してもええ?”』
「”全然いーよ!何枚でも保存しちゃって笑”」
『”流石に1枚でええわ笑”』
やっぱ最終的に冗談交じりの会話になったけれど写真を保存する許可はもらった。早速保存して待ち受けにするか考える。が、待ち受けを今の画像…”彼”の寝顔の写真から変えたらまた不服そうな顔を向けられそうだからそれは辞めといた。その後も康二と電話していると俺のスマホがまた通知音を鳴らした
[”見て見てすっごい佐久間くんカラー!”]
そんな可愛らしいメッセージを送ってきたのは最愛の人、ラウールだった
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向井side
ストロベリームーンを好きな人と一緒に見たら結ばれるみたいなジンクスがあるのを、さっくんは知っとった上で電話掛けてきたんかな。まあ知らんわな、てかこれは一緒に見たことになっとるんかいね。これが一緒に見た判定に入っとるんやったら俺のこの長い恋は報われるんやろうか。こんな月のジンクスごときで叶う恋やったら苦労してへんのやろうけど。元々二人とも人との距離が近いタイプやから、特別な人にだけスキンシップとかそんなんは無い。やから余計やりづらいと言うか、意識させにくいと言うか。そんなこんな考えながら話していたらさっくんが突然声を上げた
「あ、ごめんちょっと大事な連絡来たからそろそろ切ってもいいー?」
『ん?おーん、ええよ』
「ごめん!また明日ね~」
その一言を残して電話はプツリと切れた。意味があるとは到底思えんけど神頼み的な感じで初めて月に祈った。思い描く彼との未来が、少しでも実現しますようにと。この願いのせいでこの先の俺たちの関係が、拗れるだなんて思いもしないまま
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佐久間side
電話していい?と言うラウの一言に二つ返事で了解を入れて康二との電話を切った。かなり長いこと話し込んでいたし、康二には申し訳ないけどラウの方が若干ウェイト的には重く置いてるから
[”…あ、もしもーし”]
「”もしもしー?”」
[”お、良かった声聞こえる”]
「”ん、聞こえてるよー!”」
会えるし、夜は忙しいしで最近は出来てなかった電話。付き合い始めた当初はよくしていたけれど最近全然していなかったからなんだか新鮮な感じ
「”んでどーしたの?電話したいとか珍しいじゃん”」
[”あー…っとね、月見てたら佐久間くん思い出しちゃって、声聞きたいなって笑”]
なんだその理由、可愛すぎんだろ。自然と上がっていく口角を彼に見られなくて良かったと思いながら幸せを噛み締める。やっぱりこうやって素直に言葉を届けてくれる彼が好きだ。お互いαだし歳もめちゃくちゃ離れてるしで世間体が気になって全く公表していない交際だし、デートもほぼ家でしか出来ないけれどそれでも幸せなのは彼とだからなんだろう
「”かわいいねぇ、俺ラウールのそういうとこすげえ好きだよ笑”」
[”ほんと?俺も佐久間くんのそういうとこ大好き”]
「”どういうとこだよ笑笑”」
この幸せが続くと思っていたのに
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「…ごめん、別れて欲しい」
[え、?]
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俺は、取り返しの付かないことをしてしまった