こんにちはミラです。ガーデニアってクチナシの一種なのですが、こじんまりとした白薔薇のような形状で、何より特徴的なのは花開く瞬間は特別いい香りがするそうですよ。
純白の天使
どがっ
玄関口に方からドアを足蹴にする音が眠気で霞む頭に差し込む。
ドアを蹴る音で誰がきたのか判っちゃうなんて、俺も随分絆されたな。と、他人事のように思う。
「はよ、三途。なんか用か。」
そう廊下に面する扉の方へ言葉を投げると、ピンクのお花畑がひょっこりと顔を出した。
「報告書、持ってきた。」
「ん、そこ置いといて。てかいくら合鍵渡してるとはいえピンポンくらい鳴らせよな。」
「やだ。」
「なんでだよ。」
三途と俺は互いに全てのセーフティハウスの合鍵を渡している。まぁ、それだけ信頼を置いてるってことだ。
反社には全く似合わない純粋で脆い心を持つ腐れ縁は今日も元気らしい。腕いっぱいにビニール袋を下げてそれを勝手に机の上に広げ始めている。毎度玄関扉を足で蹴るのは足癖に悪さ6割、お土産を買い込んでくる故4割といったところか。
「今日お前本部に出てこねぇだろ。」
「あぁ、今出たら流石に死ぬ。」
「そう思って色々買ってきた。」
三途は九井の仕事用デスクを買ってきたもので散らかしながらにかっと笑った。
「何買ってきたんだよ。」
「えーと、日本酒、ホッピー、黒ビール、スナック系のつまみとスルメ、パックのワインとチーカマ、あぁ、あとプッチンプリンも…」
ドラえもんの四次元ポケットのように次から次へとものが出てくる。
「今日俺に仕事させる気ねぇだろ。」
九井が半眼になって三途に問いかける。
「あったりー」
そんな様子を意にも介さず三途は棒読みでそう答えた。
「ふざけんな。」
「いーじゃん、偶には。今日俺もオフだし。」
三途が勝って知ったる様子で和室の方の押し入れから座布団を引っ張ってくる。
「あ、九井プッチンプリン冷やしといてー。」
「おー。でもなんでチョイスプッチンプリンなんだよ…俺なめらかプリン派なのに。しかも3パック。」
すると突如として三途がすんっとした顔になった。
「え、だってプッチンプリンは…正義じゃん。」
「おーおー訳がわからん。てか反社が正義を語ってどうする。」
「はっ、確かにな。」
執務室まで座布団を引き摺ってきた三途が今度は隣の部屋に立てかけられたローテーブルに着手する。
慣れた手つきで組み立てると執務室のカーペットの上へ広げ台所からとってきたプラスチックの皿と江戸切子のグラスを並べた。
それを見届けた九井もずるずるとベッドから這い出てくる。
「なんか…九井前世虫だった?」
「ふざけんなばかちよ」
「莫迦っていう方が莫迦なんですー、てか布団ごと落っこちちゃってんぞこっちゃん。」
ばかちよ。九井は時々三途をそう呼んだ。そして三途も九井をこっちゃんと呼ぶことがあった。二人きりの時だけしか呼ばない、二人の気が本格的に緩み始めた証拠である。
「っしゃぁ飲むぞー!」
「こっちゃん気合い入ってんなぁ!よし、じゃあ乾杯」
「乾杯。」
すっと当たらないくらいに互いのグラスを近づけると、そのまま二人は豪快に酒を煽った…
[豆知識]
結構一般的な話ですが、乾杯のときグラスをぶつけ合い鳴らすのは無作法ですし、少々はしたないです。品格や育ちを疑われてしまいます。もし知らなかった方は目上の方がいるときなどは気をつけるといいかもしれません。
「それでヨォ!あんのくそ女俺の腕をベタベタベタベタ…」
「わかるぜばかちよ〜、特にあの香水の匂い吐くっつうの!」
「ばかちよっていうなこのやろーーー!」
「なんだやんのかぁ⁈」
二人は完全に出来上がっていた。
顔はお互い真っ赤になり、力の入らない腕で取っ組み合いを始めていた。最早赤ちゃんのじゃれあいである。
三途が唇を尖らせぺちっと九井の頬を叩く。それに応戦するようにムスッすりとした九井が三途の真っ赤な頬をむにっと摘んだ。
「何してくれてんだこのばかちよ!」
「お前こそ離せ莫迦!」
「俺はなぁぁ!なめらかプリンが食いたかったんだよぉ!」
突然ボロボロと九井が泣き始める。
「赤音さぁぁぁん!」
その様子を見た三途が先程までの情緒は何処へやら、よしよしと九井をあやし始めた。
「大丈夫だー。俺たちにはプッチンプリンがある!強く生きてこうぜ、プッチンプリンのためにも。」
「赤音さんーーー、俺、俺絶対なめらかプリンのこと幸せにします!」
「そうだ!俺たちは絶対にプッチンプリンを幸せにするんだ!」
いくら両方の顔がいいとはいえ大の男が二人真っ赤になりながら抱き合っているところを想像してみてほしい。狂気の沙汰である。
ふと三途が夢から覚めたかのように大人しくなった。
「…なぁこっちゃん。」
「あぁ?」
「プッチンプリン、食おうぜ。」
それを聞いた九井もこの世の真理を発見したかのような顔になる。そして、
「なんでテメエはなめらかプリンを買ってこなかったんだっ!」
近くに開けっぱなしにされたプッチンプリンを引っ掴むと三途の口に向かって中身を出した。
「んぐっ⁈」
そして自暴自棄になったのか三途の口に入りきらなかったプッチンプリンを自分の口に突っ込んだ。
「プッチンプリン…うめえ。」
瞳孔ガン開きの三途がぽそっと呟く。
九井も驚いたように目を見開いている。
「「プッチンプリンうめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
二人の絶叫が部屋いっぱいに響き渡った。
寝室に置き去りにされた九井の携帯のバイブレーションは、その声に掻き消されてしまうのだった。
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なんで私が書くとこんなにも話が進まないのだろうか…けどこういうのを書くのが一番好き。
Special thanks 明司-三途-千 さん
コメント
1件
*プリン戦争 と言う題名で平和なのを察した。が、こんなにも面白いとは… *こっちゃんとばかちよかぁ…可愛いあだ名つけるじゃないか *こっちゃんの携帯の☆☆☆レーション、誰が、何の用件でかけてきたのか… 予想ではマイキーとかそこらが仕事内容を伝えにかけたと思うが…どうなんだろう *プッチンプリン最高。プッチンプリンが至高。さあ、貴方もプッチンプリン派に‼︎