第7話:世界市場の混乱
配信の幕開け
「こんばんは、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、カーキのトレーナーに灰のハーフパンツ。靴下は片方だけ少し下がっていて、無邪気に足をぶらつかせていた。
「ねぇミウおねえちゃん……ヤマトコインって、昨日すっごく上がったのに、今日は急に下がったんだって。みんな困ってるってニュースで見たよ。どうしてかなぁ」
ミウは、グレーのニットカーディガンにTシャツ、灰のタイトスカート。髪はゆるく三つ編みにまとめ、細いブレスレットを手首に光らせている。
彼女はふんわり笑みを浮かべ、頬に手を当てた。
「え〜♡ でも、上がったり下がったりするのが“市場”ってものなんだよね。
だから、未来を信じられる人だけが勝つんじゃないかなぁ」
コメント欄には「もっと買う!」「売らなきゃ損する」「どっちが正しいの?」と混乱する声が次々に流れ込んだ。
Zの仕掛け
暗い部屋で、緑のフーディの**Z(ゼイド)**は二台のPCを操っていた。
一方の画面では、仮想取引所にヤマトコインが大量に売り浴びせられて暴落。
もう一方では、Botが「ヤマトコインは次に爆上げする」と買い煽りを拡散していた。
Zは冷たい声でつぶやいた。
「上げても下げても俺の利益。だが民衆は“未来を信じるかどうか”で判断し、勝手に資金を突っ込む」
画面には、株価指数や為替が次々と赤字で崩れ落ちていくチャート。
日本円、ドル、ユーロ……どれもヤマトコインの乱高下に引きずられて揺れていた。
レイNewsと月刊蜜
翌朝のレイNewsは、こう見出しを打った。
「ヤマトコインの乱高下で世界市場に衝撃」
「投資家の損失、過去最大規模」
「大和国の資産力に不安の声」
さらに月刊蜜では「経済特集」として、暴落直前にヤマトコインを“偶然”売り抜けて大儲けした投資家の証言を掲載。
だがその投資家は、Zが作った“偽の人物”だった。
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろはカーキのトレーナーの袖を握りしめ、無垢な瞳で語った。
「ぼく……ただ“どうしてかなぁ”って思っただけなのに、株とかお金のことまで大変になっちゃった……」
ミウはブレスレットを指先でなぞりながら、ふんわり微笑んだ。
「え〜♡ でも、そうやってみんなが“考えるきっかけ”をもらえたんだよ。
損した人もいるかもしれないけど、それも未来を選ぶ一歩なんじゃないかなぁ♡」
コメント欄には「次こそ上がる」「まだ信じてる」「ありがとう、勇気をもらえた」と、経済危機の只中とは思えない熱狂があふれていた。
結末
Zはモニターの赤いチャートを眺め、薄く笑った。
「数字は恐怖と欲望でしか動かない。
はごろも党が投げた無垢な一言で、世界市場そのものが歪む……最高の舞台だ」
無垢な問いとふんわり同意、その裏で世界市場は乱高下し、幻想の通貨が現実の経済を崩壊へと導いていった
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