TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する






「バーカ。


 どこから来たかって、先生がこの人アメリカ人だって言ってたじゃん!」



「そうだよ、緒方のバーカ」



男子ふたりの野次が飛んだところで、ちょうどチャイムが鳴った。



(よ、よかった……)



私がほっとして息を吐き出したのと、チャイムに混じってレイが答えたのは同時だった。



『アメリカのロサンゼルスだよ。


 だけど今日は、ミオのとなりの部屋から来てる』



その言葉に、見るつもりはなかったのにレイを凝視した。



けれど反応したのは私だけで、ほかの三人は最後まで聞き取れなかったらしい。



「えっ、なんて言ったの?」



緒方さんが私に尋ねたけど、答えられるはずもないし、「な、なんでもない!」と、答えにならないことを言うのが精いっぱいだ。








(もう、レイのバカ! 信じらんない……!)



なんでそんなこと言うのよ、私を困らせて楽しんでるの……!?



レイを見ていられずに顔を背けて立ち上がる。



その時、先生がレイを呼び、彼は返事をして遠ざかっていった。



「……なんか、すごい人だったな、あの人。


 オーラがやばいっていうかさ」



「ほんと。マジでハリウッド俳優みたいだったな」



呆然とする中川くんと谷田くんのとなりで、緒方さんがずっとレイの後ろ姿を目で追っている。



この場の空気から逃げ出したくて、ひとり机を元に戻していると、突如杏の声が聞こえた。



「澪ーっ!! ちょっとーっ!!」



何度も手招きする杏の傍で、佐藤くんも戸惑いながら私を見ていた。



(あぁ、杏……)



私は軽い頭痛がする中、力なく笑った。



本当、この一時間で昨日の遊園地と同じくらい体力を消耗した気がする。



それもこれもレイのせいだと思いつつ、私は苦笑いのままふたりに手を振り返した。








「どういうことーっ!


 澪はレイさんが来るの知ってたの!?」



よろよろと杏に近付けば、杏が興奮した様子で声を張り上げるから、私は慌てて人差し指を唇にあてた。



「しーっ!


 杏ってば、声が大きいよ」



「あっ、ごめんごめん!


 ってか、やっぱ澪も知らなかったんだー」



「知らなかったよ、すっごい驚いたんだから」



事前に知っていたなら心づもりだってできたし、杏たちにも先に話して対策も練っていたはずだ。



そう思うとため息が漏れるけど、黙っていた佐藤くんが感嘆としたふうに言った。



「けどほんと、すげー驚いた。


 レイさん見た瞬間、幻かと思って固まったよ」



「私も私も! もう呆然としちゃった」



佐藤くんに同調した杏は、大きく頷いて顔を見合わせた。



(その気持ちはよくわかるよ……)



私もレイを見て呆然としたし、最後に不意打ちでまでされたから、まだ動悸が治まらない。







「レイさんがうちのグループに回ってきた時、へんな緊張がすごかったよ」



「うちも超緊張したよー!


 ってかそういや、別のグループが「彼女いますか」って聞いてたらしーよね」



「あぁ、それなんだけど」



どうやら佐藤くんはその話の詳細を知っているらしい。



私はなぜかドキドキしつつ、佐藤くんと杏の話に耳を傾けた。



「なんかさ、1人目の女子がそれ聞いて、レイさん笑ってかわしたらしいよ。


 けど2人目も同じ質問したらしくって、それでさ」



そこで一呼吸置いた佐藤くんは、遠慮がちに私を見た。



「「いないって言えば、俺と付き合ってくれるの?」って、すげー笑顔で聞いたらしい」



「……えーっ!


 レイさん……そうだったんだ」



両手を口に当てて驚く杏のとなりで、私はすぐにその情景が思い浮かんだ。



だから女子たちは、キラースマイルにやられて顔が真っ赤だったんだろう。






「ちょっと、どうするの澪!」



「えっ。どうするって、どうもしないよ」



杏は興奮したまま私の肩を揺さぶる。



「まぁ……。


 あれはその場を収めるための、レイさんの方便だってわかってるしね」



「えっ、あっ、そっか!」



佐藤くんが私を気遣うように言うと、杏はほっとしたように笑い、手を離した。



(いやいや、ちょっと待って……!)



この様子だと、やっぱりふたりは私とレイの仲を信じている気がする。



「あのね」と否定のような弁解をしかけた時、それより先に、杏が思い出したようにこちらを睨んだ。



「そうだ、ってか澪ー!


 レイさんにあんな態度はひどいよ。

 さっきの授業中「話しかけないで」オーラ全開だったじゃん!」



杏の発言に、佐藤くんも「あぁ……」と、眉を下げて私を見る。



















loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚