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朔弥「 」
攻めの人喰『』
人間【】
人喰《》
それでは本編へレッツゴー!
【今日は外に出ちゃダメよ。絶対にね】
母の声はいつもよりずっと強かった。
けれど4歳の僕には、その理由がよく分からなかった。
村の大人、子供達が家に閉じこもり、外では風も鳴りを潜めたみたいに静まり返っている。
“狩りの日”だと誰かが言っていた
人喰が来る日。
怖い怪物が人間を攫っていく日。
そう聞かされても、実感なんてなかった。
…ただ、押しつぶされそうな静けさが嫌で、少しだけ外を見たくなった。
母の言いつけを破り、家の戸を少し開けて、そっと家を出る。
空は曇っていて、村じゅうが薄暗い。
歩くと土が少し湿っていて、僕の足音だけが響いた。
その時だった。
「…あれは…?」
村の外れの方に、誰かの影が見えた。
近付くほどに、影は大きく、人間とは少し違った形をしていることに気が付いた。
瞬時に答えが出た。
──人喰だ。
だけど体は動かない。
逃げなきゃ、と思っているのに足が動かない。
怖い、と思っているのに目が離せない。
その人喰はゆっくりと振り返り、真っ直ぐに僕を見つめた。
縦に細長い瞳孔。
人に似た顔立ちなのに、全く違うような。
森の暗闇の中でもその目だけは月のように光っていた。
その目に吸い込まれそうで、息が止まる。
『…子供?』
男の人のような声がした。
低くて、冷たい。
でも不思議と怖くなかった。
人喰は僕に近付き、僕の目の前にしゃがむ。
近くで見るとやっぱり怖いのに、逃げられない。
『お前、迷ってんのか?』
何を言っているのか理解できない。
僕は首を横に振る。
そもそも、人喰が人間を見て攫わないことがあるのかどうかが不思議だった。
その動きを見て、人喰は少しだけ目を細めた。
『…ふぅん。』
どうしてだろう。
まるで興味を持たれたみたいだった。
次の瞬間、体がフワッと浮いた。
気付けばその人喰の腕の中にいた。
『着いてこい。』
僕を抱っこしているのは君で、僕は逆らえないのに。変だと思った。
でも僕は怖くて、震えて、声も出なくて。
ただ抱きしめられている。
村の方から人の悲鳴が聞こえた。
お母さんの悲鳴も聞こえたような気がする。
僕はその声を聞きたくなくて。
自然と人喰の胸に顔を寄せていた。
不思議と温かかった。
僕はそのまま連れていかれた。
“狩りの日”に。
“人喰”に。
そしてこの出会いが僕の人生を大きく動かすなんて、この時の僕は考えもしなかった。
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