第2話 夢じゃなかった
「―さて、瑠奈さん非常に残念ですが…貴方は学園から出て言ってもらわなければなりません」
残念だとかなんだとか言いながらもその表情がひとつも見えないのは気のせいであろうか
話を聞いていた少女は内心とても落ち込んでいた―訳でもなく、
なんとこの少女はまだ夢の中にいると思っているのである(気付くの遅)
うわ、なに?私退学やん。入学初日から退学とかやばすぎて草。まぁたかが夢だし?現実にはちゃーんと登校する学校があるんですよねぇ
現在は闇の鏡に入る寮がないと言われ、入学式(?)が終わってマントを被った集団がすたこらさっさと寮(?)へ戻って行き、この場には学園長と私、2人きりである
すげぇな〜うちの想像力。夢だとしてもこんなにリアルに世界観再現できるとか、自分天才では??
「夢…?貴方、まだ意識がはっきりとして居ないのですか?」
「え?」
あれ、心の声もろ出てた?やっべ()
「だって魔法とかそんなの現実世界では有り得ないし、あるとしてもラノベの世界とか漫画とかしか出てこないじゃないですか」
そもそも科学的根拠など1つも無い
人間って想像力凄いな、と思う
たぶん貴方も私の空想上の人物でしょ?、と言ったあと、学園長は何言ってるんだコイツみたいな顔をした後、深刻そうな顔をした
「……貴方、どこの国からきたんです?」
今度は自分が何言ってるんだコイツという顔をする番である。
変なの(2回目)と、思いながらも日本です、と答えると学園長は首を傾げた
「ニホン……?はて、それはどこでしょう?」
……ん?
「私は全生徒の出身地を把握していますが、そんな地名は聞いたことがない」
いや待て待て待て、全生徒の出身地把握してるって何??怖すぎんだろ。この人堂々とストーカー発言したよね??
あとここ日本じゃないのならここどこだよ
「あなた、嘘をついているんじゃないでしょうね?」
怪しげな視線で私を見下ろす学園長
そんなまさか、と眉を下げて苦笑いしながら答える
嘘なんかつくわけねぇだろ!!日本語喋ってんだから日本にしか決まってるじゃん(大暴れ)
思うのもつかの間、私はさっき出てきた棺にぐいっと背中を押し込まれた
「闇の鏡よ!この物をあるべき場所へ導きたまえ!!」
薄暗い部屋に学園長の声が高らかと響き渡る
すると闇の鏡が見たこともないような渋い顔をして低い声で物語った
『…………何処にもない』
「………………なんですって…?」
それに続くように学園長も低い声で言う
「…ほんとに日本が分からないんですか?」
あれ、これがもし本当なら笑い事じゃなくね??
あれ??
「………………」
私が尋ねると闇の鏡はまた渋い顔をして再度「何処にもない」と言った
「……ふむ。こうなるとあなたが異世界から飛ばされてきた可能性がありますねぇ」
「―異世界?」
瑠奈が繰り返すと学園長は真面目な顔のまま頷く
言葉では疑問形だが何故か心の中で、すとんと納得している自分が居た
火を吹く猫に、浮いている棺、どれも自分が知っている世界には無い
「なんで私が?」
「闇の鏡が別の世界から生徒を呼び寄せるなんて…こんな例は聞いたことがない。
瑠奈さん、と言いましたよね?瑠奈さんの居た世界のことを詳しく知れるものはありますか?なにか手掛かりになるかもしれません」
「手掛かり?」
「はい。例えば保険証とかスマホとか」
「それが目が覚めたら棺の中で…鞄を持ってたはずなんですけど財布も、スマホも、服と一緒に無くなってたんです。」
「あ、異世界にもスマホはあるんですね」
あ、そこ???
「なるほど。ともかく身一つですか。困りました」
確かにそうだ。今の自分は何も持っていない。学園長に言われて少し心細さを感じた。もし、もし元の世界に帰れなかったらどうしよう、と改めて事態の重さに気づく
「ここで考えても仕方がない。ひとまず今晩はナイトレイブンカレッジに泊まりなさい」
「…えっ、泊めてくれるんですか?」
「ええ、この際は仕方がない。教育者としても女子高生一人放り出すのはいせませんからねぇ…
ちょうどうちで使っていない寮があります。今晩はそこで寝泊まりするといいでしょう」
まあちょっと古いですが…と言葉を漏らす学園長
「ありがとうございます」
まじか学園長!ありがとぉ〜!今初めて学園長が優しいって思ったよ!!!(失礼)
「ああ、私ったら教育者の鏡ですね!なんて優しいのでしょう!!」
そう得意そうに笑う学園長を見て、感謝の眼差しから引く眼差しに変わったのは無意識だろうか
……前言撤回。こうゆう所は変わってねぇや
続く