鐘がなる時間。この塔に音が響き、誰かの瞳がうっすらと光り輝くのだ。
「また、この時間が来てしまった」
そうどんだけ嘆いても救ってくれることはなかった。
「次は、次こそは」
救ってみせるから。
「愛し、愛された彼らを、この塔に閉じ込めるは、神が許さないのだろうか」
そう、語る1つの影。その影に話しかけるように影がもう1つ現れた。
「あなたが犠牲にした命の1つや8つくらい、あなたがその命の重みを考えねばどうするのでしょうか?」
愛し、愛されていた彼ら。果たしてそれはそうなのか。愛していた?愛されていた?確かに8人は確かに愛し愛されていた、が。それ以外の不特定多数の人々に愛されていたのだろうか?
過去に、いじめられていた彼女らは、生きる道を決められた彼らは、孤独で生きていた彼らは、泣くことすらできなかった彼女らは。今確かに8人で愛し愛されていたとはしても、他の人はどう思うだろうか。体の一部に、謎の痣を生まれながらに持っていた彼女・彼らは、人ならざるものとして扱われてきたのだから。
「彼女らが他の人々から愛し愛されていなく、命に価値を考えていなければ喜んで、と返事するでしょうね」
「しかし、彼女らは共に愛し愛されている。8人で生きていけないことは罪でしかないだろう」
「それは、この塔での生活を見て、考えてはいかがでしょうか?
目が覚めたら知らない塔の中にいた八人。一人ずつ紹介していこうか。
「んぁ、、ここどこ?」
最初に目覚めたのは天ヶ瀬むゆ。体の頬に痣がある彼女も自分の居場所を知らないようだ。
「んぅ、むゆ、、?ここどこーー!!」
次に目覚めたのは鏑木ろこ。体の腹に痣がある大学一年生の彼女。いつものテンションは変わらず。
「ぁ?ろこちゃん、か、、。うるさい」
そして目覚めたのは風楽奏斗。体の背中に痣があり、マフィア一家の嫡男の彼はうるさい鏑木にキレているようだ。
「ねぇ、ここどこなん?みんな知らん?」
そのまた次に目覚めたのは先斗寧。体の右太ももに痣があり、アルバイトをしている彼女は関西弁で不思議そうに尋ねた。
「んぁ、みなさん、、勢揃いですね?」
目覚めたのは四季凪アキラ。体の左太ももに痣があり、請負人の彼は、丁寧な口調でいつも通りであった。
「あー!!よく寝た、、ってここどこ!?」
そしてまたまた目覚めたのは渡会雲雀。体の右手のひら怪盗の彼はうるさいほど元気よく目覚めたようだ。
「んぁ、、体痛い!ってここどこ!?」
また目覚めたのは海妹四葉。体の左手のひらに痣がある、貧乏大学生の名を背負ってる彼女は相変わらずの元気だった。
そして。
「んぁ、、みんないるの?何かあったっけぇ」
最後に目覚めたのはセラフ・ダズルガーデン。体の首に痣がありフリーのエージェントの彼はふにゃふにゃとした口調で尋ねた。
彼らが目覚めたのは儀式が今にも行われそうな不思議な祭壇の上だった。セラフを囲うように他の七人がいた。セラフを除いた七人の背後には小鳥が入っていそうな形をした鉄の籠があった。この時はまだ皆何が起こるのか理解できていなかった。
「何かわかった?よつはぴ〜」
「んー、全く!!ww」
「俺も〜」
いきなり塔の中に閉じ込められてわかったことはいくつかある。
・塔にある窓は開けることができない。
塔の窓は全て見て回ったが、開けられないよう板で封鎖されていた。
・塔は外側に階段があり、内側に部屋がある。
階ごとに1つ1つ部屋がありいろんな部屋があった。図書館とかもあったし、寝室的なのもあった。
・最上階には行けない。
最上階には頑丈に鍵が閉められていて俺も試してみたがびくともしなかった。
くらいだろうな。ここは封鎖された空間であること以外何もわからなかった。それでも日々何かないかと模索中だ。幸い食料や水、生きるのに必要なものは揃っていた。
何もなく、ただただ八人で生きていっていた。特に何もなく、ただ八人で笑ってはしゃいで、いつもみたいに過ごしていただけだった。あの時までは。
”ゴーン、ゴーン”
とある日、塔中に鐘の音が響き渡る。今までないことだったからみんな意味を理解できなかった。そして不可解なことが起こった。
「ね、ねぇ、、天ヶ瀬、がいないんやけど」
そう言い出したのはぽんちゃんだった。いつもみたいにご飯を食べようとしたら、そう言い出した。確かに、天ヶ瀬がいない。みんなで塔中を探したけれどいなかった。1つ、変わったことがあるとしたら。
「ぇ、、?」
俺たちが起きた祭壇のところ。俺たちの背後にあった鉄の籠。確かに天ヶ瀬が起きた時にあった背後の鉄の籠の中には、少しピンクがかった、赤色の魂が浮いていた。
それから全員の瞳に混乱と悲しみと警戒が浮かび上がる。次は誰が犠牲になるか。
鐘の正面に立つ二人の男の姿。
「これは仕方のない犠牲なんだ」
そう言い訳を述べる男一人にもう一人の男が扉を見つめて言った。
「次目覚めた時は幸せに人生を終えられるよう、微力ながら願っております」
「ごめん、ろこちゃん」
僕あなたにそう言い放った。
「風楽奏斗って意外に寂しがり屋だからねぇ、お母さんが一緒に逝ってあげる」
そう朗らかに微笑むあなたがこれほどに頼もしいと思ったことはない。太陽みたいに明るい彼女が僕ら全員大好きだった。いつでもろこちゃんはろこちゃんで。
「多分、ていうか絶対。このこと知ったらみんなおんなじ選択するよ。鏑木も、みんなも。だから風楽奏斗が選んだ道は正しい!鏑木たち似たもの同士だからさ。お人好しで優しすぎるから、鏑木たちが選んだ道正しいって言ってくれる!だから気に病まないで、ね?」
「っ、ぅん」
こんな時でも人を励まそうとしてくれる彼女。僕はこんなにも情けないのに。こんなに涙を流してるのに。彼女がすごく泣きたいのわかってるのに。
「いっせーの、で逝こう」
「おけ!」
ごめんね、みんな。先に逝かせてもらうよ。これを”裏切り”と呼ぶんだろう。本来あってはならないことなはずなのに。
「「いっせーのーで」」
鐘の音が鳴る。
奏斗とろこちゃんが消えた。また、天ヶ瀬のように、二人が起きたとき背後にあった鉄の籠に魂が浮かんでいた。白いけれど黄色がかってるような魂と青緑のような色の魂が浮かんでいた。
「誰が、こんなことをっ」
私たちは決して疑わなかった。この中の誰かが三人をこんな目にしたんだと。この塔の中で笑い合い、共に涙を流し、共に歩みあったこの五人の中に誰か裏切り者がいるのだと。海妹の言葉をただ鵜呑みにしていた。
「、、そういうことですか」
何かの運命か。それを知った時隣にいたのはぽんちゃんだった。
「そういうこと、、四季凪逝こう」
ぽんちゃんはもう覚悟を決めていたのだろう。力強い眼差しでこちらを見つめる。
「これって裏切りですよね」
「そうなるなぁwま、みんななら理解してくれるべ」
「そうですね」
じゃ逝きましょう。そう簡単に言えればよかった。みんなに隠し事をして、みんなを騙した。これを裏切りと呼ぶのだろう。言えればいいものの、、。理解してくれるかな。
「「ごめんなさい」」
また、鐘の音が鳴った。そして次はアキラとぽんちゃんがいなくなった。また、誰かがいなくなった。また、消えていく。それと同じく、魂がまた増えていた。二人のイメカラの、色の魂が浮いていた。残されたのは俺とよつはぴだけ。
「ねぇ、何かの間違いだよね、、?」
俺も、そうだと思っていたかった。でも、話を聞いたらみんなが間違っていないと思えた。みんならしいと思えた。
「私は行く。みんなも行ったんだよ。私だけなんてできない。あの子には、悪いけど。あの子も多分同じ選択するから」
俺は、選べなかった。けど、よつはぴの言葉を聞いて決断した。みんなについていくようにした。俺は、馬鹿だから、みんなについていったらいいと思うんだよ。
「俺、一緒に逝きたい。俺一人じゃできない、、」
子供のように泣いてよつはぴに縋りついた。よつはぴはお母さんみたいに俺の背中を撫でてくれた。
「お前ら変なところで赤ちゃんだからな〜、うん。一緒に逝こう。一人になんかさせないから」
そういったよつはぴはすごく優しかった。一人にしてくれなくて、
「「ありがとう」」
みんながいなくなった。祭壇にあった籠はみんなのイメカラの魂で埋め尽くされていた。俺は、意味が分からずただただ、祭壇に座っていた。
「あなた方がこの塔に招かれた理由をお話ししましょう」
そこに現れたのは、すごく見覚えのある人だった。
「弦月、さん、、?なんで、、」
先輩としてたくさんお世話になった人が俺の目の前にいた。いや、それよりも!
「招かれた、、?」
「はい、あなた方はこの塔に招かれたのです」
”とある理由によって”
「この世界はまず、1つの神によって成り立っています。世界には一人ずつ神が存在していて、神はその世界の全てを見ています。世界によって異なりますが、あなた方のいた世界は数千年で代替わりをします。
あなたは、神なのです。神として役目を一旦果たし、この世界に降りてきたのです。神を見守り神を支えていた7人の魂と共に。あなたはまた神としての役目が降りるまで何度も転生を果たし、毎回7人の魂と共に生きてきたのです。
そしてこの度あなたがまた神としての役目が降りてきたのです。きたのですが、神となるには神になる以外選択肢がないのです。あなたは今ただの一般人で魂も一般人なのです。この世界として役目を告げ、祭壇に魂を捧げることであなたは神となれるのです。神がいなければ。この世界は成り立ちません。あなた方がこのことを拒めばこの世界は終末を迎えます」
それは衝撃的なことだった。
「そして7の魂は捧げました。自らの魂を1つの世界に捧げました」
あぁ、みんなっぽいな。みんななら不特定多数の人々の幸せのために自分を犠牲にしそうだ。
「あとはあなた次第です。もしもあなたが拒むならば、この世界は終末を迎え、7つの魂とあなたは天界へと帰ります」
みんなと俺は、同じ道を行きたい。それがたとえ、目覚めぬ道であろうとも。
「行くよ。この世界の神に俺はなるよ」
俺はそう宣言した。この世界に命を捧げてでもいい。神となってでもいい。みんなと一緒にいれるから。みんなが選んだ道は正しいと証明したいから。
「左様ですか。では、こちらを」
弦月さんが差し出したのはただのナイフ。自害して、この世界に命を捧げる。みんな辛かっただろうな。みんなにこの話をせずに、勝手に命を捧げると決めたのだから。一番辛かったのはむゆさんかな。一番最初で迷っただろうに。
「でも、みんな間違ってない」
そう証明するために。俺はこの世界に命を捧げよう。
”ゴーンゴーン”
塔の鐘が鳴り響く。塔の最上階に存在していたのは、神の補佐官として務めている”弦月藤士郎”と
「ご苦労、弦月」
神の姿見をした”加賀美ハヤト”がいた。ただ、目の前にある鐘を見つめていた。
「また、新たなる神が誕生し、この世界の生命は神の消滅まで長引くであろう」
一人、また一人と命を犠牲にしていく過程で、鐘を鳴らしていたのは紛れもない本人たちであり、本人たちが、自らの死を告げるために鳴らしていた。
世界の生死をまだ幼き8つの命が定めるのは難しいことであった。しかし、彼らは愛すべき仲間と共に天界で暮らす道よりも、ほぼ永遠に近い時間を世界に捧げた。それはどれほどまで辛い決断であったか、もう人間でない加賀美ハヤトに知る術はなかった。
「これは裏切りである」
まだ自分がこの世界の神になる選択だってあった。しかし、それを選ばなかった。一緒にいた時間は短なるものであれ、後輩を犠牲にする選択をとった。つまり、
「私が彼らを殺し、この塔の鐘を鳴らした」
これを、裏切りと呼ばぬのなら、この世界中に”裏切り”という言葉は存在しないことになる。
そうして、神は眠りにつき、神を支えし7つの魂は神と共に眠った。そのことでこの世界の安泰は保たれ、世界から8つの命の存在は消え去った。体に宿し痣は次世代の神と神を支えし7つの魂に引き継がれた。神”加賀美ハヤト”はその後神として裏切りを幾つも起こしたことにより、存在をかき消され、異端者として扱われるようになった。神”加賀美ハヤト”は人間界へと降り立ち神として扱われなくなったのであった。
end.
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