ATTENTION
単品短編第三弾。書きたいとこ書いただけ。
家族パロ。年齢操作あり。かなり捏造色強め。
この作品は動画上の彼らのキャラクターと名前を借りた二次創作であり、本人やその他団体とは一切関係がないよ!
解釈違い注意。割と好き勝手に捏造に捏造を重ねて書いたからキャラ崩壊がすごいと思う。多分。
推敲はしたけど誤字があるかもしれない。ある程度は脳内補完して、あんまりにも酷かったら教えてくだちい。
以上のことが許せるぜ!!バッチこい!!って人のみお進みください。
軽い設定
グルッペン 26歳
大手外資企業勤めのサラリーマン。孤児院に住んでいた子供たち全員を引き取り、養っている一人。親バカな一面があり、子供たちにゲロ甘。お小遣いが万単位。貧弱で無理しがちなので定期的にぶっ倒れる。
兄さん 26歳
海外の企業に勤めるサラリーマン。グルッペンと共に子供たちを引き取り、養っている一人。子供たちを弟のように思っている。海外住みのため、滅多に子供たちと会えない。週一回行う子供たちとのテレビ通話が心の癒やし。
トントン 25歳
育児担当。平日はスーパーでバイトしている。グルッペンと共に子供たちを引き取り、養っている一人。子供たちにデレデレだが、周りみんなが甘やかすため自分だけは厳しくいこうとしている。お説教は大体トントンの役目。
オスマン 25歳
大手化粧品メーカー勤めのサラリーマン。営業のプロ。グルッペンと共に子供たちを引き取り、養っている一人。甘い物がとにかく大好きで、週に二回子供たちを連れて街のカフェ巡りをするのがお決まり。子供たちの服選びはオスマンの仕事。
しんぺい神 25歳
小児科医。グルッペンと共に子供たちを引き取り、養っている一人。子供たちが大好き。定期的におもちゃを買い与えている。子供たちの起きている時間と勤務時間が被っており、子供たちの中でレアキャラ扱いされている。
ひとらんらん 24歳
農家。グルッペンと共に子供たちを引き取り、養っている一人。子供たちにとても甘いが、叱るときは叱る。食卓に出る野菜のほとんどがひとらん産。子供たちを寝かしつける時の子守歌は大人にも効果絶大。
鬱 22歳
大学四年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。主に家事担当。大学に籍はあるが、一切通っていない。学費を払ってくれているのに大学に通っていないことを申し訳なく思っている。その代わり家事と子供たちの面倒見を頑張っている。
エーミール 22歳
大学四年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。教師を目指している。子供たちの良いお兄ちゃんになろうと日々頑張っているが、空回ることも多々。子供たちと定期的に勉強会を開いている。カフェ巡りには必ずついて行く。
コネシマ 18歳
高校三年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。サッカー部部長。弟のように年下を可愛がるが、ボディタッチが多いため煙たがられることも。変なところで遠慮しがち。エーミールのおすすめの本を読むのが最近の楽しみ。
ロボロ 17歳
高校二年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。放送部所属。将来は声優になりたいと思っている。子供の中でも年上に属するため、しっかりしたお兄ちゃんを目指し頑張っている。トントンに次ぎ真面目。
シャオロン 15歳
中学三年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。野球部部長。高校でも野球をしたいと思っている。好奇心旺盛のやんちゃ盛り。たまーにやりすぎて怒られる。不器用だが面倒見が良い。
ゾム 13歳
中学一年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。やんちゃ第二号。人見知りが激しく、友達を作るのが苦手。少し吃音気味で、そのせいで過去に嫌な思いをしたことがある。大人含めた家族が世界で一番大好き。
チーノ 8歳
小学三年生。グルッペンらに引き取られた子供の一人。お喋り大好き。気づけばたくさんのお友達が出来てる。負けず嫌いで、ゲームも勉強もお兄ちゃんたちに負けないよう頑張っている。兄さんやしんぺいともっとお喋りしたいと思っている。
ショッピ 5歳
保育園年長さん。グルッペンらに引き取られた子供の一人。お昼寝と猫が好き。人見知りしがちで園の友達は少ない。周りの口達者な人間に影響され、たまに物騒な言葉を放つことがある。最近はゲームにお熱。
「あちゃ~、これは風邪だねぇ。」
しんぺいが医師を務める小児科にて。一通りの診察を終えたしんぺいが、パソコンに診断結果を打ち込みながらそう苦笑した。
しんぺいの前にある回転椅子に座るのは、頬を真っ赤にしたゾム。目はぼんやりとしていて、どこか焦点が合っていない。ぽやぽやした雰囲気である。保護者としてゾムを連れてきた鬱は、やっぱりかぁ、とこれまた苦笑いをこぼした。
「やから着込んでから外で遊べって言うたんに。」
「まぁはしゃぎたくなっちゃうよね。」
久しぶりの雪なんだもん、ねぇ?、と、はにかんだしんぺいは、甘やかすようにゾムの頭を撫でた。
__________
12月中旬。吹き抜ける風は凍えるほどに寒く、地方によっては雪が降り積もる頃。街はイルミネーションで飾られ、夜になると煌々と夜の街を彩る。世間はすっかりクリスマスムード。スーパーやショッピングモールではジングルベルなど、クリスマスの定番の曲が流れていた。
そんな中、グルッペン家は寒さに負けぬ盛り上がりを見せていた。
「雪やああぁぁぁぁああ!!!」
「いええええぇぇえぃ!!!」
数年ぶりに、大雪が降ったのだ。毎年ちらちらとは降るものの、積もるどころかすぐに止んでしまうために積もることが無かった。積もったとしても一センチにも満たないほど。雪だるまはおろか雪玉一つもまともに作れず、外の景色を見るなりしょげた様子になる子供たちは記憶に新しい。
しかし、今年は例年以上に雪が長く、多く降った。この地域に長く住むトントンらも驚くほどだった。厚さにして5,6センチほどで、辺り一面雪景色。子供たちにとって、初めての景色だ。ずっと雪で遊ぶことを夢見ていた子供たちは、興奮そのままに外へ飛び出していった。邪魔だからと、手袋もせずに薄手のジャンパーのみを羽織って。
「おりゃっ!」
「うおっ!?おいゾム!」
「くははっ!ボケっとしてるのが悪いんやでシッマ!」
「油断したなゾム!」
「わぶっ!っシャオロン…!!」
「おら二人ともォ、俺の豪速球をくらえ!!」
「野球部ずるいやろ!」
「ふーん、俺も負けちゃいないぜ!!」
「ぐあっ!シッマの野郎!」
「はっはっは!!!」
ゾム、コネシマ、シャオロンは飛び出てすぐに雪合戦を始めた。足下の雪をすくって球状に固め、相手に投げつける。野球部であるシャオロンの雪玉は綺麗に弧を描いてクリーンヒット。速度も中々である。そんなシャオロンに負けじと体格も生かして全力で投げつけるコネシマに、持ち前の瞬発力と足の速さを駆使し様々な場所から雪玉を投げる策士なゾム。ボフッ、ガツッ、と雪玉がぶつかり弾ける音は豪快だ。手袋も付けていないために指先はおろか手全体が真っ赤だが、気にもとめていない様子。
「こら、三人とも!手袋とか、もっと厚着せえへんと風邪引くで!」
そんな三人を見かねて、玄関から寒そうに身を震わせながら鬱がそう叫ぶ。こんな厳寒期に薄手のジャンパーだけでは、いくら体温が高ろうとバカだろうと風邪を引いてしまうだろう。看病する分には別に構わないが、熱で魘される子供たちを見るのはいささか心が痛む。そろそろクリスマスも来るし、こんな時期に風邪は引いてほしくないのだが。
しかし、鬱の心配はなんのその。
「いらへんいらへん!体温高いから大丈夫や!」
「シッマバカやから風邪引かへんよ」
「なんやと!?お前も大概アホやろ!」
「アホちゃうし!こんにゃろ!!」
「おわっ!」
「走り回っとるし体ぽかぽかやもん!大丈夫やでだいせんせー!!」
「あのなぁ….。」
聞く耳を持たず、また雪合戦に興じる。健康優良児であるからか、風邪を引かない自信があるらしい。
はぁ、とため息一つついて、風邪引いても知らへんからなー、と一応忠告をして。諦めて玄関先で雪遊びをするちびっ子たちに目を向ける。玄関先では、チーノとショッピが仲良く雪だるまなんかを作って遊んでいた。雪合戦にはしゃぐ三人とは違い、厚手のジャンパーに子供用のマフラー、オスマンお手製の手袋と防寒はバッチリだ。
「ねーねーしょっぴくん。ほら、この雪だるまおっきいでしょ!」
「ちっちすごい!ね、おれのももっとおっきくして。」
「いーよ!とびっきりおっきくしたげる!」
チーノは手のひらより少し大きいくらいの雪だるまをショッピの目の前に持ってきては、自慢するように見せつける。中々雪が固まらなかったのだろう、チーノの雪だるまの大きさに目を輝かせ、ショッピは作って作ってとねだる。満更でもなさそうな顔をしたチーノは、鼻息を歌い出しそうなテンションで雪だるまを作り始めた。ショッピも一緒になって雪玉を転がして、二人でえっちらこっちら雪だるまを作っている。はしゃぎ回る三人と比べ、随分と平和だ。漂う空気が和やかである。
「わ、わ!おっきい!おっきいよしょっぴ!」
「やった!これ、これこの雪だまのうえにのっけたら雪だるまかんせいやで!」
「よし、一緒に持と!」
「うん!……せーの、」
「う~~~….持てへん~~!」
「おっきすぎて持ちきれへんよぉ。」
「これが乗っかったら雪だるま完成なのに…。」
「おっきい雪だるま…..。」
子供二人で持ち上げるには大きく重すぎたのか、どれだけ踏ん張っても雪玉はびくともしない。二人して落ち込みショッピに至っては泣きそうな様子に、鬱は思わず助け船を出す。
「あー、ほら俺が持つの手伝ったるから。泣かへんの。」
「……ほんと?」
「やったぁ!ね、だいせんせーはやく!」
「はいはい。」
ショッピの目尻にじんわり浮かぶ涙を拭ってやり、雪玉を持つ。よっこらせ、なんておっさんくさい台詞をこぼしながら持ち上げると、中々な重さだった。確かにこれはチーノとショッピだけでは持ち上げられないだろう。ちびっ子二人はキラキラ輝く目で鬱を見る。少し気まずい。
「この雪玉の上に置けばええん?」
「うん!おいておいて!」
「よいっ….しょ!」
持っている雪玉より二回りほど大きな雪玉の上に、持っている雪玉を乗っけると大きな雪だるまが完成した。ちびっ子二人が初めて作ったにしては良い出来だ。背丈はショッピと同じくらいある。
「できたぁあ!」
「わーい!!」
「二人とも上手に作ったなぁ。すごいやん!」
「でしょでしょ!?二人でがんばったんやで!」
誇らしげに笑うチーノとショッピの頭をくしゃくしゃと撫でてやると、にへぇ、と頬を緩ませた。相変わらず可愛らしい笑顔だ。この顔を見るとなんでも許してしまう。
と、そのとき。
「ぶえっくしゅっ!!」
それはそれはでっかいくしゃみが響いた。音の発生源を見れば、鼻を真っ赤にして寒そうにしたゾムが鼻をすすっていた。どうやらくしゃみをしたのはゾムのようだ。心なしかぼんやりしている気がする。慌てて鬱はゾムの元へ駆け寄る。
「ほら、そんなでっかいくしゃみして。冷えてるんやないの?」
「う~~….ちょっと寒い…..。」
「もー…。ほら、もうみんな上がるで。みんな風邪引いてまう。」
「ええーー??もっと遊ぶ!」
「だぁめ!もう上がんで。」
「むぅ….。」
駄々をこねるシャオロンらを宥め、家に押し込む。雪だるまが溶けることを危惧してか、どうにも不安な顔をしたちびっ子には、しばらく雪が降る予報であることを伝え、なんとか上がってもらった。ゾムは、やはり顔色が悪い。体が若干震えているように見えた。
「ゾム、大丈夫…じゃなさそうやな。気分悪い?」
「ちょっと…頭痛い。」
「そぉか。家上がって温まろうな。」
コクッ、と一つ頷いたのを確認して、ゾムの肩を抱きつつ家へ上がらせる。雪を被りすぎたのか、上着はとても湿っていた。これは風邪かなぁ、と鬱は内心呟いた。
____
コツッと、ゾムの額と自分の額を合わせ、その熱さにびっくりしたようにひとらんらんは目を丸くした。こりゃ完全にお熱だねぇ、なんて苦笑する。額、首元に手を当て、熱さを再確認した後、ゾムの頭を氷嚢の上に寝かせた。
「多分風邪だね。めちゃくちゃ熱いや。」
「どうする?一応しんぺいさんとこの病院連れてく?」
「まぁ十中八九風邪だろうけど、お薬は貰っといたほうが良いしねぇ。行っとこっか。」
「…..うぅ…..。」
“病院”というワードが出た途端、ゾムが嫌そうに顔を顰める。
ゾムは病院が嫌いだ。そもそもゾムは人が多いところが苦手で、人の多さと昔のトラウマも相まって学校にもあまり通えていない。そんな中でも病院は一等苦手らしく、全員が優れない顔をしているあの雰囲気と漂う薬品などの匂いが苦手らしい。今はだいぶ頑張れるようになったが、幼い頃は熱のある中暴れ回って悪化させたり、酷いときは気絶したりと散々だった。
ゾムの気持ちを察してか、鬱が安心させるようにゾムの頭を撫でる。
「大丈夫やで、ゾム。しんぺいさんのとこやし、今の時間帯は人が少ないから。看護師さんにお話すれば人目つかんとこに案内してくれるやろうし。だいじょうぶ。」
「ん、…..わかった。」
「よし、偉い子。んじゃ、今から行こな。」
「どうする?俺も行こうか?」
「……げどちゃんも、来て。」
「ふふ、わかった。俺も行くよ。」
熱で少し潤んだ瞳で見つめられては、断るわけにはいかない。頭を撫でつつひとらんらんがそういえば、少し安心したようにゾムが顔を綻ばせた。
歩くのも辛そうなゾムを見かねてひとらんらんがゾムをおぶり、鬱の安全運転の元、三人はしんぺいが働く小児科へと向かった。
そして、冒頭に至るというわけである。
___
「ゾムは風邪やから、ゾムの部屋には入らへんようにな!」
「「「「ええぇーーー????」」」」
トントンが夕食の時間そう伝えると、食卓を囲む面々から不満げな声が上がった。主に子供たち。
「後でゾムとゲームする約束やったのに!」
「風邪引いたんやからしゃあないやろ。またゾムが治ってからにしぃ。」
ちぇっ、とつまらなそうに顔を顰めたのはシャオロンだ。シャオロンは年が近いこともありよくゾムとつるむ。同じやんちゃ気質で、鬱やエーミールにいたずらを仕掛けて遊んでいるのはグルッペン家においての日常である。二人はFPSを好んでよくしているため、今日も二人でFPSでもしようと約束していたのだろう。まぁ、雪の降る中薄手のジャンパー一枚で外で遊び回ったゾムにも非はあるのだが、今回ばかりはしょうがない。
「でもやっぱあれちゃうん。あんだけ遊び回ってゾムだけ風邪引いとるってことは、シャオロンとコネさんはバカってことじゃ….。」
「誰がバカじゃ!逞しいって言え。」
「別にシッマ逞しいわけちゃうやろ。背でかいだけやん。」
「それはそう。」
「なんやとぉ!?まぁその通りなんやけども。」
「認めるんかい。」
相変わらず食卓は喧しい。誰かが喋り、ボケ、そして誰かがツッコむ。テンポ良く会話が進む中、食卓に並ぶ料理は恐ろしい速さで無くなっていく。それでも、大食漢のゾムがいないからか減るスピードはいつもより遅い。
「グルッペンさん。ゾムさんにおかゆ持っていきますね。」
「おう。ついでに薬も一緒に飲ませてやってくれ。」
「了解です。」
キッチンでゾム用のお粥を作っていたエーミールが、お盆にお粥の入った小鍋を乗せて現れる。グルッペンに確認を取った後、薬の入った小袋も共にお盆に乗せてゾムの部屋に向かった。
「えーー、エミさんいーなー!」
「エミさんは看病のために行くの。我儘はだめめう!」
「じゃあじゃあ、エミさんが出てきてから俺も行っていい?マスクちゃんとするから!」
「んー….ほんとにちょっとの時間だけだよ?」
「マジで!?やったぁ!!」
「え、じゃあ俺も!!俺もゾムと喋らせてや!」
「おれも!!」
「おれも、あいたいです。」
「お前らなぁ…。」
「そういうロボロだって会いたいくせに?」
「うっ…。」
シャオロンの承諾が出た途端、子供たちが口を揃えて会いたいとごね出す。コネシマやチーノはともかく、ショッピまで言い出すものだから驚いた。本当であれば風邪がうつってしまうのを避けるため、最低限人は入れない方が良いのだが。なんだかんだいって全員ゾムが心配なのは変わらない。それに、ゾムは結構な寂しがり屋だ。誰もいない部屋で一人っきりの方がゾムは辛いだろうし、一人ずつでも全員に構って貰えるのはゾムも嬉しいはずだ。
「どうする?」
「まぁ、シャオロン許可してるし。なんなら俺らも行かへん?」
「ゾム寂しがり屋やし、構ったげよ。」
「そうすっか!よし、いいゾ!みんなで会いに行こう!」
「ほんま!?よっしゃー!!」
「いえーいっ!!」
「ぞむにあうー!」
「じょむしゃ!あう!」
グルッペンがそう高らかに宣言すると、子供たちは湧き上がったようにテンションが上がる。早速キャッキャし始める子供たちに、ゾム愛されてんなぁ、なんて呟いたのは誰だったか。大人組は顔を見合わせて苦笑いをこぼした。
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「ゾムさーん?入りますよ?」
コンコン、とドアがノックされる音でゾムの目が覚める。ぼんやりしてる中、柔らかなエーミールの声とふんわりしたお粥の匂いが漂ってきて、もう晩ご飯の時間かと思い至る。ゾムはええで、と声を出そうとして喉がつっかえ、代わりに咳が飛び出た。ちょっと苦しくて背を丸めて咳き込んでいると、咳の音に気付いたのか少し慌てた様子でエーミールが入ってきた。
「ゾムさん、ゆっくり。落ち着いて、焦らないで。」
エーミールがゾムの上体を起こして、ゆっくり背を擦る。少しひんやりとした手が心地良い。エーミールの柔らかい声にだんだん落ち着いてきて、咳も自然と治まってくる。エミさんってなんでこんなにも安心するんだろう、とぼーっとする頭でゾムは思った。
「落ち着きました?」
「….ぅん。」
「よかったぁ。ほら、お粥作ってきましたよ。食べられる分で大丈夫ですから、食べましょう?」
「たべる…..おなか、すいた….。」
顔色はあまり優れないものの食欲を見せるゾムに、エーミールは微笑んだ。この調子だと案外すぐに治りそうだ。
ゾムの体をゆっくりと起こし、腰と背中に枕やクッションを置いて固定する。掛け布団は掛けたまま。エーミールはゾムのベッドの横に椅子を持ってきて、それに腰掛ける。お盆を自分の膝元に置き、お粥を少量スプーンですくって冷ました。
「ふーっ…..はい、ゾムさん。あーん。」
「ぁ、….んぅ…..。」
はぷっ、と弱々しくはあるがエーミールに差し出されたスプーンを食む。むぐむぐと咀嚼し、こくっと時間をかけて飲み込んだ。
「ん、おいし….。」
「ふふっ、良かったです。ほら、まだいっぱいありますよ。」
少しばかり目をキラキラさせるゾムに、自然と笑みがこぼれる。一口ずつ冷ましながら、ちょっとずつ。しかしどんどん量は減っていく。やがてぺろりと全て平らげてしまった。
「食いしん坊さんですね。全部なくなっちゃいました。」
「……おなか、いっぱい。おいしかった。」
ゾムは満足そうに顔を綻ばせる。頭を撫でつつ、お腹がいっぱいになって寝てしまいそうなゾムに声を掛ける。
「ゾムさん、お薬飲まなきゃ。」
「……。」
渋々といった様子でゾムは頷いた。
ゾムは薬が苦手である。苦手すぎて薬の袋を捨ててしまうほど。粉薬はまずくて飲めないし、錠剤は喉につっかえる感じがして飲めないのだと。ゼリーや他のものに混ぜ込んでようやく飲み下せる。
「大丈夫ですって。ちゃんとゼリー持ってきましたよ。」
さっきとは違い憂鬱そうな顔のゾム。コロコロ変わる表情が彼らしい。宥めるようにまた頭を撫でながら、片手でコップにゼリーを注いでその中に錠剤を入れる。再びゼリーを追加して、軽く混ぜてやれば準備万端だ。
「ほら、ゾムさん。お薬。」
「ぅ~~…..」
スプーンで錠剤入りのゼリーを掬って口元に持っていくが、ゾムは中々口を開こうとしない。ムッと口をへの字に曲げている。
「ゾムさーん。お薬飲まないと、キツいの続いちゃいますよ?」
「……..。」
ゾムはスプーンを睨み付け、少しの間逡巡する。
確かにキツいのは嫌だ。頭は痛いし体は重だるいし、出来るなら早く治したい。でも、それ以上に薬を飲みたくない。苦いもん、薬。錠剤なのは分かるけど、それでも……。
「あ、このゼリーいちご味ですよ。」
「のむ。」
迷いは無くなった。
________________
「あ、エミさん出てきた!!」
ダイニングでエーミールが出てくるのをずっと待っていたシャオロンは、ダイニングに顔を出したエーミールを見つけては嬉々とした顔でエーミールに詰め寄った。
「エミさんエミさん!!ゾムの部屋入ってもいい!?」
「あー、ゾムさんですか?」
興奮気味にそう問うと、エーミールは罰が悪そうに顔を背ける。ポリポリと頬をかいて、苦笑う。
「お薬飲んだ後、すぐに寝ちゃいまして。皆さんが遊びに来るからと少しの間だけ起こそうとしてたんですが、ぐっすりでした。」
「えーーーー??つまんないのーーーー。」
シャオロンは不機嫌そうに顔を顰める。せっかく待っていたというのに、寝てしまうとはつまらない。
と、機嫌を損ねたシャオロンに、オスマンと共にダイニングで寛いでいたひとらんらんが声を掛ける。
「まぁまぁ。ゾムも風邪引いてるんだし、今日くらいは寝させてあげようよ。無理に起こすのも体に悪いしね。」
「俺は残念やけどねぇ。ゾムの照れてる顔見たかったし。でも、無理強いはあかんめぅ。」
「ちぇーっ。ひとらんもマンちゃんも言うなら分かったよ。今日は我慢する。」
不貞腐れつつではあるがそう頷いたシャオロンを、「えらいね~」なんて言ってオスマンは頭を撫でた。ひとらんらんも「偉い偉い」とのほほんとした目でシャオロンを眺める。思春期真っ盛りのシャオロンは至極嫌そうにそれを振り払っていた。
まるでおじいちゃんと孫みたいなやり取りやな、と遠巻きに眺めていたエーミールは思った。
__________
ふとお腹がほんのりあったかいのに気付いて、ゾムは目を覚ました。カイロなんかの人工物じゃなくて、人肌みたいな柔らかで落ち着く暖かさ。誰だろうとぼんやりする視界の中探してみる。
少しだけ視線を彷徨わせて、柔らかな間接照明に照らされきらめく金を見つけた。その金に伏せられた深紅を見た途端、思わず「えっ?」と声が漏れてしまった。
「……ぐるっぺん?」
「….ん?なんだ、ゾム起きたのか。」
徐々にはっきりとしてきた視界でよくよく見てみれば、グルッペンは俺のお腹に右手を置いて擦りながら、もう片手で本を読んでいた。片手で本のページをめくれるなんて、グルッペンは器用やなぁ。
「ぐるっぺ、いま、なんじ….?」
「んー。大体一時くらいじゃないか?」
「夜の?」
「ああ。」
夜の一時って言ったらもうとっくに寝てる時間やなぁ。グルッペンって仕事も無いのにこんな時間まで起きてるんや。あれ、そういやなんでグルッペン俺の部屋におるんやろ。
疑問に思ったらすぐに口に出してしまうのがゾムの性格である。熱に浮かされ思考がろくに働いていないのも相まって、ポロリと言葉が口からこぼれ出た。
「ぐる、なんでここにおるん?」
「ゾムが寂しくないか、心配でな。」
「…..むぅ。別に、寂しがりとちゃうし。」
不機嫌なことを示そうと、頬を膨らませて反発する。そんな露骨な顔を見たグルッペンは普段の彼らしくない柔らかな笑みを浮かべ、優しくゾムの頭を撫でた。今日はたくさんの人に頭を撫でられるな、とゾムは思った。グルッペンの細く白い指から伝わるほのかな温もりが、カイロよりあったかく感じて自然と笑みが零れる。
「ぐるちゃ、の手、あったかいなぁ。」
スリ、と猫のように頭を押し付ける。
「今日な、みんなにいっぱいあたまなでられた。みんなの手、めっちゃあったかかった。ぐるちゃも、だいせんせも、えみさんも、げどちゃんも、ぺしんも。みんな。」
「そうか。それは良かったな。」
「おれ、あたまなでられるの好きかもしれへん。」
「いくらでも撫でてやるさ。撫でてほしくなったらいつでも言え。」
「ん、わかった。……じゃあさ、おれがねるまであたまなでてほしい。おなかもぽんぽんして。」
「ははっ、甘えんぼさんだなぁ。構わんよ。寝るまで一緒だ。」
「んふふ。」
ゾムは上機嫌そうに高く喉を鳴らした。グルッペンは読んでいた本に栞を挟んで閉じ、ゾムに向き直ると左手で頭を、右手で腹を撫でさする。こうして幼子のようにあやしてもらうのは久しぶりで、戻ってくる懐かしさに浸っていると自然と瞼が下がっていく。布団でくるまれているのより、何倍もあったかい。
「んふ……あったかい。」
グルッペンの手も、鬱やエーミール、ひとらんらんやしんぺいの手も。エーミールが作ったお粥も。この布団も。雰囲気も、おうちも。全て、全てがあったかい。
「……おれ、みんな…..のこと……」
“だいすきや”
最後はほとんど掠れていたが、しかしグルッペンの耳にはしっかりと届いていた。俺もだゾ、とはゾムに届いているだろうか。どちらにせよ、ゾムの寝顔はとても穏やかで幸せそうだった。
あとがきみたいなの
長い!!!!!!!!!!現時点で一万七四一字!!長い!!!ちょっと設定紹介があったとはいえ、本文だけで九千字くらいある。こんなに長くなるつもりはなかったのに….。
今回はずっと書きたかった家族パロでごぜぇます。やっと書けた…!!ぞむさんメインで、みんなに甘やかされる話、なはず。
僕的にぞむさんって味方最大の脅威とか、そういったカッコイイ一面が押し出されてることが多いけど、本人は末っ子属性マシマシだよなって思ってる。ぴくんもメンバー結構甘いけど、それはなんか”後輩”としてって感じがあって、やっぱ”末っ子”はぞみーだよなってなる。魔!とかは割とその一面が多いんじゃ無いかな?伝説の「構ってえやマジで」もだし、割とメンバーに甘やかされてる節あるよね、ぞむにき。そんで本人もそれを自覚してる。だからこそちょっと過ぎたイタズラとかもなんだかんだ許されてるんだろうなぁ、と勝手に思ってる。
なので、今回はひたすら幼く、みんなに構われ甘やかされるぞむさんを書きまちた。中一の割には幼すぎる気もするけど、それはまぁ裏に設定があるっていうことで….。書くかは分からん。全ては僕の気分次第だ….!!!!()
てなわけで。皆様、僕の長ったらしい駄文を最後まで読んでくださりありがとうございました。また次の作品でお会い致しましょう!おつしろ!!
コメント
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投稿お疲れ様です! いやー癒しです!長時間かけてにこにこしながらよんでました! 主様が無理しない程度に続編的なものを書いて欲しいです。待ってます!