今日の服装もだったけれど、貴仁さんは休日でもだいたいワイシャツにジャケットのスタイルが多かった。
それも長身の彼にはよく似合っていて素敵ではあったけれど、もっとラフなかっこうもたまにはいいんじゃないかなとも思いながら、服を見て回った。
「あっ、こういうパーカーとかは、どうですか?」
棚に並んだカジュアルなパーカーの一着を手に取り、広げてみる。
「そういう服は、着たことがないんだ」
彼が口にして、戸惑いの表情を浮かべる。
「だったら、きっと似合うと思うんで、着てみませんか」
「そう……だな」
着慣れないファッションにためらいを見せる彼に、白いパーカーを試しにと当てがってみた。
「こんな風に、ジャケットの下に着てもいいので」
彼の胸元に当てて、着ていたジャケットに被せるように合わせた。
「ほら、いい感じじゃないですか?」
「ああ、君が言うように、こうやって着てみるのも、いいかもしれないな」
ジャケットとのコーデに目を落として、笑顔でそう話す貴仁さんに、(よかった、気に入ってくれたみたい)と、たまらない嬉しさが込み上げた。
「後は、このパーカーに色味的にマッチする、明るめなパステルカラーのトップスを……」と、ショップ内に視線を巡らす。
すると、ペールブルーの薄手の上着が目に留まった。その近くには、ハンガーに掛けられたチノパンが並んでいて、そのジャケットと白いパーカーに、ライトグレーのパンツを合わせるのは、好ましい装いに思えた。
「この三点コーデは、いかがです?」
と、彼にセルフコーディネートのセットを手渡す。
「君が推してくれるなら、着てみようか」
彼が口角を緩めフッと微笑んで、服を手にフィッティングルームに入った。
「……どうだろう?」
やや心もとなさそうにも問いかけられ、仕切りのカーテンが開けられると、
「すっごく、イケてます!」
その爽やかな着こなしに、思わず感嘆の声が漏れた。
スラリとして高身長な彼にはもともとなんでも合うところはあったけれど、いつものきっちりとしたイメージとは異なり、初めて見るざっくりめのファッションは、よりスタイリッシュで魅力的にも感じられた。
「自分ではあまりわからないんだが、そんなに合っているのか?」
「はい! とっても!!」
片手をギュッと拳に握って見せ、そう力説をする。
「じゃあ、今日はこれを着ようか」
彼がクスリと笑って口にして、着てきた服を紙袋に詰めてもらうと、
「さぁ、行こう」
と、私の手をさり気なく取った。
──目新しい彼のラフなかっこうに、気取りのないスマートな仕草が相まって、そのギャップ感にキュンとさせられたのは言うまでもなかった。
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