テラーノベル
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「じゃあ次は部屋の案内かな。」
りいが立ち上がる。
「行こっか。」
「はい。」
ゆきも後を追う。
すると。
臨時と一樹も当然みたいな顔でついてきた。
「なんでついてくるの。」
「暇だから。」
「帰れば?」
「冷たっ!」
「うるさい。」
「久しぶりなんだからもうちょっと優しくしろよ!」
「嫌。」
「即答!?」
一樹がため息をつく。
「騒ぐな。」
「お前まで!?」
廊下を歩いている途中だった。
「ん?」
誰かが立ち止まる。
ゆきが顔を上げる。
知らない男だった。
男はゆきを見ていた。
数秒。
そして。
「キミ、可愛いね」
「は?」
ゆきが眉をひそめる。
男は気にしない。
「新人?」
「そうですけど。」
「へぇ。」
笑う。
「名前は?」
「長瀬ゆきです。」
「ゆきちゃんか。」
「ちゃん付けやめてください。」
「えー。」
「やめてください。」
「厳し。」
男は楽しそうだった。
「俺、百軸翔太。」
「どうも。」
「彼氏いる?」
「いませんけど。」
「じゃあいけるじゃん。」
「何がですか。」
「俺。」
「いけません。」
「即答!?」
百軸が笑う。
「好きなタイプは?」
「聞いてどうするんですか。」
「参考にする。」
「しなくていいです。」
「連絡先交換しよ。」
「嫌です。」
「じゃあインスタ。」
「嫌です。」
「じゃあ――」
「嫌です。」
「まだ何も言ってない。」
「どうせろくなことじゃないので。」
「ひど。」
「ひゃっきー。」
りいが呼んだ。
百軸が振り向く。
「何?」
「新人ナンパしないの。」
「してないっすよ。」
「してる。」
「してない。」
「してる。」
「交流だって。」
「それをナンパっていうの。」
「交流。」
「ナンパです。」
百軸が黙った。
そこへ臨時が来る。
「お前何してんだ。」
「交流。」
「交流じゃねぇ。」
「交流。」
「彼氏いる?って聞いてたじゃん。」
「交流。」
「ナンパ。」
「交流。」
「ナンパ。」
一樹が口を開く。
「ナンパだな。」
「味方いねぇ。」
百軸は肩を落とした。
そしてゆきを見る。
「ゆきちゃん。」
「何ですか。」
「俺諦めないから。」
「諦めてください。」
「冷た。」
百軸は笑いながら手を振る。
「またな。」
「どうも。」
「また話そうね。」
「嫌です。」
「…俺、傷付くよ?」
「嘘ですよね。」
「ばれた。」
百軸は去っていった。
「絶対また来る。」
臨時が言う。
「来るね。」
りいも頷いた。
しばらく歩く。
りいが一つの扉の前で立ち止まった。
「ここ。」
カードキーをかざす。
扉が開いた。
「ゆきの部屋。」
「おぉ。」
思ったより広い。
机もある。
本棚もある。
ベッドもある。
「すごいですね。」
「でしょ。」
りいが少し得意そうに笑った。
その時。
「ゆき。」
聞き慣れた声がした。
ゆきが振り向く。
「翼。」
長瀬翼だった。
翼も少し驚いた顔をしている。
「今日だったのか。」
「うん。」
「問題なかったか。」
「今のところは。」
自然な会話。
りいが首を傾げた。
「知り合い?」
翼が答える。
「妹です。」
沈黙。
「……え?」
りいが固まる。
ちょうど戻ってきた百軸も固まった。
「妹?」
「妹。」
「マジ?」
「マジ。」
百軸はゆきを見る。
翼を見る。
またゆきを見る。
「兄妹だったの?」
「そうだけど。」
「初めて聞いた。」
りいもまだ驚いていた。
「聞いてないんだけど。」
「言ってないですし。」
「そりゃ聞いてない。」
臨時が笑う。
「俺らは知ってたけどな。」
「幼馴染だから。」
一樹も頷いた。
りいはゆきと翼を見比べる。
「全然似てない。」
「失礼。」
「失礼だな。」
兄妹の声が重なった。
一瞬静かになる。
「あ。」
りいが言った。
「何ですか。」
「そこは似てる。」
今度は百軸まで頷いた。
「確かに。」
「確かにじゃない。」
ゆきはため息をつく。
その横で。
臨時だけが大笑いしていた。
コメント
4件
えー、ゆきちゃんと翼くんが兄妹だったの!? 全然雰囲気違うけど「失礼だな」が重なるシーン、確かに似てるって思っちゃった笑 百軸さんのナンパ?交流?も面白くて、でも全然隙与えないゆきちゃんがかっこよかったです🖤 りいちゃんの驚いた顔、見たかったな…