「では、今日からよろしくお願いします」
「…はい。」
暗い顔で、私はうなずいた。今日から私が行く場所は、とある学校だ。しかし、人数の関係で、生徒に問題があるクラスだ。
絶対にクラスメイトと仲良くしたい。うまくいくかな。
先生によると、異能力を持ち、人から化け物呼ばわりされていた子が多く、警戒心が高いそうで。それに、表向きは学校だが、ほんとは能力の研究のようだ。そのため、年齢層もばらばらだ。
どうして一般人の私が…
「ねえ、転校生が来るんだって。」
「…そうか。」
「それがね!異能力がないんだっ!」
「…それは、本当…?」
「怖い怖い怖い…」
登校当日
「行ってきます…」
「うん。気を付けてね。僕も頑張るから。姉さん。」
四つ下の悕がぼろぼろの人形をもった手を振って私のことを見送った。親のいない私たち。初めて学校に行くしては、寂しすぎた。
私は、慣れているけど。
悕は、唯一の家族がいなくなって一人になることに対して、恐怖を感じているようだ。ごめんね、悕。姉さん、失敗ばっかりだね。次は頑張るよ。そして、悕にもっといい生活させてあげるから。
「転校生の、琴吹 恋です。」
あまり緊張はしなかった。なんでだろう。怖いのに。
ほとんどの子が、目を合わせてくれない。
一人の子と目が合う。白い髪に、赤い瞳の少女。表情はなく、冷たげだ。どんな能力があるのだろう。年は。20歳くらいだろうか。すぐに目をそらされた。
車いすに乗った子供もいる。そして、その子にそっくりな兄のような青年が付き添っている。
「よろしくね!」
凍り付いた雰囲気に場違いな明るい声が聞こえた。金髪を一つにくくった男の子供。年は悕より幼そうだ。無邪気そうで、何も知らなそうな子だ。
「よろしくお願いします。」
小さくお辞儀をする。案内された席は、白髪の少女と、金髪の少年の間だった。
「あのね、僕、シャルルっていうんだ!仲良くしてほしいな!」
「そうなの?私も。恋って呼んでほしい。」
「わかった!あ、あの子はシーナだよ!僕はしいちゃんって呼んでる!」
少女は、名前を出されても微動だにしなかった。
休み時間
「ねえ、緊張してないの?」
車いすの子供の兄のような人だ。ほわほわした優しそうな笑みで、私に話しかけてくれた。
「うん。環境が変わるのは慣れてるから。あなたは?」
「奇遇だね。僕もだよ。僕は、花宮朔良。あそこの花宮更紗の父です。」
「父?…ずいぶん若いですね。」
「うん。何か気になることがあったら僕に聞いてね。」
「それは…いや、なんでもない。ありがとう」
なんだか、変な感じの人だ。よくわからない。少し…怖い?
「ねえ、恋!一緒にお昼食べに行かない?」
「えっと…シャルル、と…?」
シャルルに付き添っている、黒い艶やかな髪に、金の瞳の青年。こちらを警戒しているのか、まったく目を離さない。
「この子?希更だよ!親友!恋も仲良くしようよ!」
「そう。よろしく。」
「シャル、時間の無駄だ、行こう。」
「わ!まって!ごめん、またあとで!」
誰かと仲良く一人なりたい。そう思った私は、近くの子に声をかけた。
「ねえ、一人だったらお昼一緒に食べない?」
「え…あ、嫌、ごめんなさい…」
「そう…」
「ごめんなさい、ごめんなさい…殴らないで…」
目の前の子は、かなり怯えている。シャルルや朔良がかわっているのだろうか。ほとんどが、私をいないもののように扱う。
「可哀そうね。」
どうして私が悪者みたいにならないといけないんだろう。普通に生きたいだけなのに。
なんで?
能力があったから。ほかの子と違うから。そんな理由で差別されていたのもわかるよ。でも、私は関係ないのに…
「恋さん!!」
朔良が叫んだ。目の前の子が震えている。その子を守るように、ゆらゆらと橙色の炎が立ち始めていた。そして、私を焼き殺そうと、ゆっくり近づいてきた。
「ごめんなさい…!逃げて!」
この子は、自分の能力を自分で操れないんだ!だから、怯えているっていうことか。
一人でいるのは、もう嫌だ。
裏切られるのはもう嫌だ。
私の居場所を殺さないで。
またあんな目にあうのなら
燃やしてしまえ。
壊してしまえ。
すべて終わりにしてしまえ。
全部、焼き尽くせ。
まずいな…
私は、燃える炎に突っ込んだ。そのまま、うつろな瞳のその子を抱え、窓から落下した。
炎に包まれる。その子は、操られているように、手のひらから炎の弾をだす。本気で私を殺そうとしている。
そのまま惹きつけ、突進してくるその子を避けた。バランスを崩してプールに落下したその子を、そっと引き上げる。
ぐったりしてるな…
あれ。安心したら、私も…
「ここは…?」
「やっと起きたのか?」
「あ!うん…ねえ、あの女の子…」
「…私が仲良くしたがってたやつか?まだ寝てる。傷が深いようだ。キャロルは、無事か?」
「うん。なんで、私、…」
「知らない。ただ…あいつは、キャロルのことずいぶん丁寧に扱っていた。落ちた時も…」
「落ち…!?私、落ちたの?」
「ああ。被害が広がらないようにしたんじゃないか?その時も、完全に恋が下だった。」
「そう、なんだ…」
「じゃあ、また。早く来いよ。」
「あ、あの、恋、さん…」
揺さぶられて、起きた。さっきの子が、私をのぞき込んで震えている。
「よかった。けがは、ない?」
「恋さんこそ!私は、自分の力が制御できなくて…ごめんなさい。だから、人と関わらないようにしていたのに。」
「別にいい。とにかく!あんまり自分に自信がないのもよくないわ。」
「はい!あの、許してくれるんですか?」
「能力が暴走しただけでしょう?あなたは悪くないわ。」
「ありがとうございます…あ、私、キャロルって言います。」
「そうなの?」
「はい。シャルルの、妹です…嫌われているんですけど。」
なんだか複雑そうで、すぐに口をつぐんでしまった。そんなキャロルが少し可哀そうで。悕に見えて。
ぎゅっ、と抱きしめた。
「一緒に、もうひと眠りしようか」
あとがき
凛雨です!初めてノベルに挑戦してみましたが、どうだったでしょうか?
コメント・アドバイス待ってます!ついでに、キャロル、恋のアイコン載せておきます。
アイコンメーカーころころ変わるかもです。
ラ・キャロル・レーヴェ ↓守ってあげたい女の子っぽいイメージです。
琴吹 恋 ↓ 恋は中性的なイメージです。
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