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自身の叫び声で目が覚める。


「何で朝からこんなにも夢見が悪いのよ…。ああもう何なの…。」

いつも通りの日常を繰り返す。普段よりも重い体をベッドから引き離し、うがいをしトイレに行き、着替えた後朝食を食べる。


「おはよう、戌亥(いぬい)。頭痛の方は大丈夫?今日は顔色が少し暗く見えるから、思い切って赤でも使ってみたらどう?」


「ん?…あぁ、おはよう。頭痛?…今は特に無いけど。そうね…廻(めぐる)の意見に従って、今日はそうしようかしらね…。」

前々は水とバナナのみの朝食であったが、廻がこの家に来てから健康的な食生活に変わった。そのお陰なのか、前よりも肌の調子も良くなった気がする。


「本当?じゃあうちが戌亥のメイクをしてあげようじゃないか!」

「は?ちょっと、ワタシまだご飯中なのよ!?”止まれ”って言われても無理な話なのに、もしアイラインが失敗したら笑いものじゃない!」


「大丈夫大丈夫、失敗したら歌舞伎キャラに変更すればいいだけだから。」

にこにこと悪魔的笑みを浮かべる廻が、今の戌亥にはホラー映像そのものに見えた。




「ふぅ、之で完了。…却説、うちも家事が溜まってるから、お仕事頑張ってね。いつでも連絡は待ってまーす。」


「はいはい、廻も無理はしない程度に頑張りなさいね。」

準備が整えば、廻の方を振り向き「行ってきます」と笑顔で述べ、一直線に職場に向かう。




「…最近は夢見が悪い事ばかり増えたわね。もしかして、朝霧が座敷童子みたいな存在だったのかしら、…なんてね。」

今朝の出来事を回想しながら、先日亡くなった同僚の顔を思い出す。目乙木戌亥(めおとぎ いぬい)は、都会のビルが佇む警察署の警部である。凝り固まった自分の顔を解す様に口角を上げ下げしつつ、自分の机に向かえば、当たり前の様にどさりと置かれた書類な山々。


《初めの頃は、これを見る度数え切れぬ程の絶句を味わったものの、今じゃこんなもの慣れたものね》


と苦笑しながら作業に移る。既に用意されていた珈琲を体内に流し込み、脳を活性化させながら作業を着々と進めていくと、ふとある資料が目に入る。


「葬儀屋?」

脳内に今朝の夢の回想が流れ込む。同僚の葬儀に参列し、久納と共に外で黄昏ていた時に見せられた手紙。《おとうさん だいすき》と書かれた手紙の重みと、あの葬儀屋の顔が脳裏に焼き付いている。そして、血塗れて銃の撃たれた跡を残した久納の警察手帳。夢の中だと言うのに、妙に生々しく作り込まれた夢が吐き気を誘発する。


「ぅ”…苦し…。」


「あれ、警部!如何しましたか?珈琲が二日酔いに悪い意味で効いてます…?」


「おい、目乙木。昨日の朝霧の葬式から様子が可笑しいぞ。大丈夫なのか?…昨晩飲み過ぎたんじゃねぇか?」

夢の中に出てきた久納や、これでもかという程ワタシに過保護をやる部下がやって来る。


そうか、ワタシ…昨日に朝霧の葬式に参列して…夜に居酒屋で酔い潰れる程飲んだのか。


「今日は余り動かない方が的確だと思うが。表の仕事は暫く休んで、裏方の書類整理に専念しろ。捜査は俺が受け持つ。良いか?」


「うぅ…御免なさいね。今回はお言葉に甘えて、そうさせてもら……、」

我ながら素敵な同僚と部下に恵まれてたな、と思いながら二人に視線を向ける。


「…ね、めおとぎ、警部。これ、たべる?《おとうさん だいすき》うまい。あは、は、ノーミソだあ!」


「貴方……、ワタシの部下の…」


「そうですよ?うちは貴方の部下であり、貴方の支援者、そして貴方の為の捕食者です。…けど、こんなかたっくるしーしゃべり方も疲れちゃうんだあ!…でもでも!こうして、食べることで学習できちゃうの。」

んふふ、と笑みを浮かべながら久納の頭部をかぶりつく部下。対する、久納は手足を痙攣させながら、赤い液体に侵され続けた末、終いには動かなくなった。


「ねえ、はやく目乙木けいぶも、たべたいなあ。ずっと我慢してたのに、すぐにげちゃうじゃん。ねえ、もう邪魔するものはいないよ。いいよね?」


「いや…嫌、…嫌!!!」

発砲音が鳴り響く。何度も、何度も繰り返される。ベリーを潰した様な跡が残るものの、撃たれた本体に損傷は出ていない。


「…ふふふ、あは、は、抵抗するの、すきなの?かわいい。でも、もう、あきらめて。」

目乙木は正気を失っている為、弾切れになろうと関係なく部下に擬態した化け物に銃口を向ける。すると、化け物も懐から同じものを取り出した。


「へぇ、これがめおとぎ、けーぶもつかってた、銃ってやつか!すごい、すごい!こんなの、しょくじしやすいー!」

化け物は無邪気な顔ではしゃぎながら、ぴょんぴょんとうさぎのように跳ねる。そのまま引き金を引き、四方八方に発砲音を響かせる。


「ッ”…!!!」

「?あ!!けいぶー!どうしたの、当たっちゃったの?いたい?つらい?だよねだよね、かわいそう。よしよし。」

「ッ…触らないで!!」

顔を顰めながら、仕事柄身についた特有の目つきで睨みを利かせる。だがその顔を見ても恐れることなく、化け物は楽しそうに微笑んだ。



「…はあ。そんなしけたかおすんなよ。じゃあていくつー。つぎはいいかおしてね!」

そう言うと、目乙木に銃口を向ける。目乙木は苦しそうな顔をしながら、「やめて」と口を開けながら音の無い言葉で抵抗する。


「あ!すごくいいかお!へへ、だいすきだよ、目乙木けいぶ。」

その後、室内に2発の発砲音が鳴り響いた。

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