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北原家での一夜が明け、葉月は寝室で目を覚ました。まさか本当に大正時代に来てしまったとは信じがたかったが、目の前の景色は確かにそれを物語っていた。大正時代の着物を着たまま、彼女は時計を見つめる。
「この時計が時を超えさせたのか…」
昨夜の出来事が夢ではないことを思い出し、彼女は深く息をついた。玲や蒼の言葉が頭の中で繰り返される。特に、蒼が言った「家宝」という言葉が気になっていた。
葉月が屋敷の廊下を歩いていると、玲が現れた。冷たく見下ろす彼の姿は、昨日と変わらない。
「目が覚めたか?」
「ええ…でも、まだ何が起こっているのか理解できなくて…」
玲は無言で葉月を見つめた後、背を向けて歩き出した。
「俺について来い。兄が話を進めたがっている。」
仕方なく、葉月は玲に従い、再び広間へと向かった。そこでは、蒼が深く思索にふけっていた様子で、葉月の到着を待っていた。
「おはよう、葉月さん。今日はもう少しこの時計について話す時間を取りたいと思っている。」
蒼の穏やかな声に、葉月は少し安心したが、緊張も隠せなかった。
蒼は懐中時計を手に取り、じっくりと眺めながら話を始めた。
「この時計は、北原家に代々伝わるものだが、ただの家宝ではない。時を超える力を持っている可能性があることは知っていたが、実際にそれを目の当たりにするのは初めてだ。」
葉月はその言葉に驚き、時計に再び視線を向けた。時を超える力…本当にそんなことが可能なのか。
「それにしても、どうしてあなたがこの時計を手にしたのか…その謎が解けない。」
蒼は葉月に真剣な目で問いかけた。葉月は言葉に詰まりながらも、出来事を正直に話し始めた。
「私がこの時計を手に入れたのは偶然です。現代のアンティークショップで見つけて、なんとなく引かれるものがあって…。その後、気づいたらここに…」
「なるほど…だが、それが本当に偶然だったのかどうかは、まだわからない。」
蒼は深く頷き、さらに続けた。
「この時計には、まだ多くの謎がある。それを解明するためには、もう少し調べる必要があるだろう。」
その後、蒼と玲は葉月を北原家の書庫に連れて行った。そこには、北原家に伝わる古い書物や文献が並んでいた。蒼はその中から一冊の古びた本を取り出し、葉月に手渡した。
「これは、時計にまつわる伝承が記されたものだ。この中に何か手がかりがあるかもしれない。」
葉月はその本を受け取り、恐る恐るページをめくった。中には、時を超える力についての古い伝説や、時計にまつわる不思議な話が記されていた。
「これは…本当に昔から伝わるものなの?」
「そうだ。この時計はただの家宝ではない。時空を操る力を持つ、特別なものだ。」
蒼の言葉に、葉月は再び息を飲んだ。
その夜、葉月は自分の部屋で時計と伝承の本を見つめながら考え込んでいた。自分がなぜこの時代に来たのか、この時計が自分に何を求めているのか…その答えはまだ見えていなかった。
「この時計が、時を超える力を持っているなら…私は現代に戻れるのだろうか?」
葉月は一人、薄暗い部屋で時計を見つめながら、これからどうすべきか考え続けた。