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最早言葉ではなく黙したままの頷きだけを返したジグエラは、大きく開いた口の中で、魔力の結晶とも言える光球を次々と生じさせて行く。
赤、青、そして黄色。
対峙したガイランゲルは彼女の速度に合わせる様に、余裕の風情を浮かべながら同様の光球を産み出していた。
土色、風の緑、そして漆黒の闇、命の光球だ。
目と目を合わせた次の瞬間、ジグエラが口中のブレスを混濁させヴノの少し上に向けて発射し、寸分違わぬタイミングでガイランゲルも同様の射出で合わせる。
泥濘(でいねい)の様に三つの色合いがマーブル模様で混ざり合い、見るからに邪悪な二つの光の球は、狙いを過つ事無く死んだ様に伏せたままの猪の真上でぶつかり合うと、瞬間、周囲に眩い閃光、白光と化して放出されヴノを中心に倒れていたバストロ、フランチェスカ、レイブ、ペトラ、そして眩しそうに見上げていたギレスラを包み込んだのであった。
ついでといってはなんだが、ボーッと成り行きを見守っていたザンザスにも半分位降り注いでいたのである。
「ん、んん? 俺は一体ぃ…… はっ、セスカっ! 確(しっか)りしろ、だ、大丈夫かぁ!」
「うう、アナタ…… アタシは大丈夫…… はあぁ、アナタこそ、元気そうだわね…… ほっ……」
「う、うう~ん…… お腹がぁ、い、痛くない? か…… ああ、ペトラ! ペトラペトラぁっ! 確りしてぇっ! 死んだらだめだよぉー!」
『レイブ、お、兄ちゃん? う、うんペトラは大丈夫だよ、お兄ちゃんこそ大丈夫なのぉ?』
「う、うん、余裕~、かな?」
『漲(みなぎ)る、漲り捲るぞぉ! ザンザスが、いいや真なるザンザスザマックスがそこで待ぁってぇいぃるぅ~! 的な漲り具合だろこれ? 凄っいわぁー! 超感動ぉー!』
ふむ、どうやら周辺で倒れていたり眠っていた面々、プラス呆然としていただけの馬とかが最初に恩恵を受けたのかな?
一気に賑やかさを取り戻した崖際に、待望の呻き声が微かな音を立てる。
『………………ぐ、ぐうぅ、あぁ、ふいぃー、あああー、ぐうぅぐうぅー、スヤスヤスヤァ……』
「「「ヴノッ!」」」
『『『『『ヴノオォッ!』』』』』
つい今しがたまで呼吸も鼓動も止めたままで、なんだったらハエ的な羽虫が死臭をかぎつけて集まり始めて来ていた大猪(おおいのしし)、訂正、普通サイズの猪にトランスチェンジしてしまったヴノが、鼾(いびき)を掻いて大欠伸(おおあくび)、さらにすやすやグッスリープを再開し始めたのである、良かった。