喜びの嬌声が上がる中、いち早く歩み寄って声を掛けたのはレイブであった。
「ヴノ、ヴノぉっ! 一大事なんだよ、起きてよぉっ! 大事件が進行中なんだよぉっ! 起きて起きてぇ! ほらっ、起きろよ爺(ジジイ)っ! ええいっ、こうだこうだこうこうこうっ!」
バシィッ! パシィッ! パンパンパンッ!
『ぐあぁ? 痛いのぅ、なんじゃレイブか…… んんん? レイブ…… お前、いつの間にそんなに大きくなってしまったんじゃ? まるで伝説の巨人のようでは無いか…… お、おおお? ペトラとギレスラまでぇ、何でそんなに急成長? ヴノ、些(いささ)か混乱っ、じゃぞい!』
レイブは澱みなく説明口調に入る、立派じゃないか。
「違うよヴノ、僕達が大きくなったんじゃなくてヴノが縮んじゃったんだよ! 原因は、えっとぉ、多分僕がタンバーキラーを付け忘れてしまったウッカリなんだよね、ゴメンナサイ…… んで、今しがた、ジグエラとあそこの巨大な竜、後はあの馬、ザンザスかな? どうやったかは判らないけど彼らが何とかしてくれたと思うんだよね! でしょ? ええっとぉ」
キョロキョロと周囲を見回して同意を求めるレイブ。
手近に居たザンザスの顔をジィーっと見つめた物の、当の馬は天を見上げてこちらに視線一つ寄越さない有様である、恐らく自分の力の漲(みなぎ)りとかに酔いしれているのではないだろうか? 全くっ……
レイブの視線に答えてくれたのは、スリーマンセルであるギレスラ、稚竜の拙い声である。
『ソノトオリ、ガッ! ジグエラ、ト、ガイランゲル、ガ、タスケテクレタンダ、ガッ! ザンザス、ハ、ナンニモシテナイヨッ、ガガッ!』
「だってさヴノ」
『ほぉー、そうなんじゃな? なるほどのぅ~、手間を掛けてしまったようじゃのぉ、ジグエラ、ガイランゲル…… ワシの様な年寄りの為にお前達の様な幼い竜にまで無理をさせてしまったんじゃのお、、不必要だったのにのぅ、コレこの通りじゃ、ごめんごめん、許せよ? 稚竜ジグエラ、稚竜ガイランゲルよぉ』
『『へ?』』
申し訳無さそうにしながら、頭を下げる小さなヴノに対して、揃って首を傾げる二頭の巨大な竜であった。
縮小版になってしまった猪は言葉を続ける。
『レイブの言によるとな、タンバーキラーを付け忘れたナイフのせいでワシが縮んでしまったんじゃろう? と言う事はレイブのナイフ、ゼムガレのナイフが特別製だったと言う事じゃろうが? そんじょそこらの物とは違う、特殊な効果を付与された聖遺物、アーティファクトだったと言う事なんじゃぞい? 魔獣や竜を消滅させ得る聖遺物…… となると、恐らく神聖銀なんじゃなかろうかのぉ? 恐ろしい事じゃわい、こりゃ些(いささ)か迂闊(うかつ)だったのぅ、ヴノ、猛省じゃあ、所謂(いわゆる)、シュン、って所じゃのう! ブフォフォフォフォ♪』
ほおぉ、なにやら事情通っぽい発言を繰り返しているヴノ、俄然興味が沸くじゃあないか。
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