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瀬名 紫陽花
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アクヤ
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3
登場人物
叶斗
雪兎
弱音を吐きたかった
辛かったから
愚痴を言いたかった
黒い何かが溢れそうで
泣きたかった
限界だったから
でも
意地でも吐かない
溢さない
泣かない
だって
長男だから
全て飲み込む
本当は自由に勉強したい
心から楽しみたい
でも
夜になると怖くなる
大切な人が消えてしまったら
それを考えると眠れなくなる
吐き気がする
息が上がって
涙が出る
苦しくなる
救いはない
昔
何度か相談したことがあった
一時的に楽にはなったけど
それでも
自分の中にあるナニカは
ぎりぎりだった
そんな時
誰も彼も
自分のことで精一杯なんだって気付いた
だから
今度は自分が聞く番
してもらったように
相談に乗って
上手く出来ないかもしれない
けれど
優しくは出来ると思うよ
そんな時さ
言われたの
「もう、心も体も限界なんだよ」
ってさ、
何が分かるんだろう
そう思ったよ
このモヤモヤ
言えたらさ、どれだけ楽なのか
ずっと考えた
大切な人を
全員守りたい、って気持ちは
持っちゃ駄目だったのかな
って
不可能だって真っ向から否定された
その時だよ
相談しても
泣いても
何も変わらない
ただ、誰かに本音を知られるだけ
何も言わない
まぁ…楽だとは思うけど
それでも
吐いただけじゃ
何も変わらなかった
「それはそうだよ」
「だって」
「人間は誰しも辛かったら」
「世界で一番、自分が辛いんだから」
よく聞く綺麗事
よく見る綺麗事
…
『…が…ゎ 』
「ふふ、何が分かるんだ、って?」
「何もわからないよ」
「俺は叶斗じゃないからね」
…何をしに来たんだろう
「俺は…さ、余命があってね」
「病気なの」
「ちょっとね、」
「辛かったし、なんで俺が、って」
いきなりそんなことを言われた
「いきなり言われても困るよね」
「辛いときほど周りを見れない」
「…辛いよね」
「心のモヤって」
「ずっと纏わり付いてくる」
それから
彼は一人でずっと喋り続けた
長男だから…って溜め込まなくて良いんだよ
人間なんだから
綺麗事を嫌っても良いんだよ
眩しすぎるから
絶望を与えてくるから
でさ、俺、もう…
疲れちゃった
君は?
雪兎 …ありがとう
ど~うでもいい話、聞いてくれて
…一方的に語られてたのを右から左へ流してただけだけど…ね
叶斗 …それを俺に話すのは、なんで?
雪兎 う~ん…特に理由はなかったけど…
そうだなぁ…俺と叶斗くんは全く違う
けれど…似てたから…?
なんだ、その理由は…
雪兎 …言葉ってさ
武器と一緒なの
大丈夫って言葉は縄だ
時には盾かもしれないけど…
自分を縛り続ける縄だって俺は思うよ
縄…
そう聞いたとき、少しだけ納得してしまった
期待とか、そればかりが縛り続けるんじゃない
大丈夫も縛り続けるんだ
雪兎 ふふ
雪兎 大丈夫なんて言葉
今だけ、忘れちゃお?
コメント
1件
ああ、読んだ……これ、すごく重いけど、すごく繊細で大事な話だね。 「長男だから」って全部飲み込もうとする叶斗の強さと脆さが、冒頭の韻を踏んだような文体でじわじわと胸に迫ってきた。特に「大丈夫って言葉は縄」っていう雪兎の比喩、すごく納得した。自分を縛ってしまう言葉の暴力性と、それを自覚しながらも手放せないもどかしさ。 一方で雪兎が「余命がある」って唐突にカミングアウトした流れ、あれは決して安易な同情じゃなくて、「お前の辛さだけが特別じゃないよ」でもなくて、ただ「似てるから」って理由で隣に立ったんだなっていうのがじんわり来た。 救いがない中で、最後の「今だけ、忘れちゃお?」って軽い口調が、逆にすごく優しくて。この距離感、好きです。次が気になる。