テラーノベル
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窓から見える景色はいつまで経っても変わらず大雨。
灰色と黒色で染まりきった空。雨の音が時間につれて大きくなっていく。
天気予報を見たら今日中に止むことはないという。
ここにいても苦痛なままだ。そう思い、病室を出ようとした。
??:「あ、あの、!まぜたさん…ですよね?」
Mz💜:「ㇸ、っ?…は、はい。」
突然声をかけられ、情けない声が出た。恥じらいながら声をかけてきた人を見る。
少し気が弱そうな人。多分年上の人だろう。
何処かで見たことがある顔。少しあっとと面影が似ている気がする。
兄:「急に呼び止めてすみません。あっとの兄です。」
Mz💜:「…お兄さんでしたか」
そりゃあっとと似ているわけだ。それにあっとのお兄さんは知っている。
ついさっき電話で話したばっかだ。だが、兄だと言われなければわからない。
名前は何というのだったのだろうか…小さい頃、一緒によく遊んでいた気がするが、全く思い出せない。
兄:「ちょっとお時間いいですか?お話したいことがあって、」
そう言い、彼は病室の近くにある自由コーナーへと歩き出した。
話とはなんだろうか。とにかくあっとのことでの話に違いはないだろう。
自由コーナーには運よく俺達以外に誰も居なかった。
普段はよく人がいるとあっとのお兄さんが言っていたから少し安心した。
兄:「あ、ここどうぞ。座ってください。」
とても気が利く人だ。兄弟揃っていい人なんだな…
「あの…その…き、聞きにくいんですけど…ぉ、弟の恋人…なんですよね?まぜ太さんは」
びっくりした。まさかバレていたなんて。
Mz💜:「、!はい、お付き合いさせていただいてます。」
兄:「ぁ、その、嫌味とかそういうのじゃないんですが…これだけお伝えしたくて、」
「…弟はよく言ってたんです、”自分のことで大切な人を悲しませたり縛らせたりしたくない”と。」
「”自分に何かあった時、記憶を失ったり死んでしまったら迷わず新しい人と人生を歩んでほしい”…そう言っていました。」
彼は、俺の手を握って言った。
「決めるのはまぜ太さんです。ですが…弟が記憶を取り戻す可能性は不可能なほど確率は低いです。」
「言い方悪いですが…あっとのことを思うなら、新しい人と人生を歩んでください。」
「それが弟…あっとの最後の願いです。」
気の弱そうな人だと思っていた。いや、少し気が弱いのはあっているのかもしれない。
けれど俺の目の前にいる彼は、思っていたより遥かに心の根が強い弟思いの優しい人だった。
「…、ぁ、これから塾があるので失礼します。」
彼の後ろ姿は弟の思いを背負っているようにたくましかった。
これ程一人残されたときの寂しさは感じたことがないだろう。
部屋全体に響く雨の音がどんどん遠くなっていく。
”新しい人と人生を歩む”?今更できるわけがない。
俺があっと以外の人を好きになるわけがない。あっとしか愛さないと好きになったときから心に決めたんだ。
…いや、あっとしか”愛せない”というのが一番あっているのかもしれない。
あっと以上に可愛くて愛おしい人など存在するわけがない。
俺が持っていないものをすべて持っている、憧れで誇らしい人。俺にはもったいないくらいだ。
俺を愛してくれた人、俺が愛した人。
とてつもなく愛おしい人。俺の命より大切な人。でも、あっとの記憶にはもう俺は居ない。
いつまで経っても塞がることのない、心にできた大きな穴。
一生をかけても埋まることはないだろう。
外はまだ雨が降っていた。
カバンには折りたたみ傘が入っている。取り出そうとしたがやめた。
傘を使わず家へ向かって歩いた。
いつもなら雨に濡れるのが嫌で、冷たく感じる雨。
けれど、その日は何故か何にも感じなかった。
ただ、雨の中なら泣いていることがバレないのではないか。ただそれだけを感じた。
コメント
11件
表現がめっちゃ上手い!ほんとによおこんなん思いつけるなぁ…俺にゃ無理だ☆ アイコン、完成したから見にきてなー!
見るの遅れた、 さすがだね!めっちゃ感情移入 しちゃった! あと、明日テストでアイコン間に合わない、ごめんね😢できるだけ早くできるようにがんばるね!
見るの遅れたー!書き方うまくまい?!