テラーノベル
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そもそもの始まりも一目惚れだった。
原が尊敬する先輩として引き合わされて、その時はちょっと暗い先輩だなとしか思ってなかった。
でもそうじゃなかった。
髪の揺れさえも振付だと錯覚するほど全身を踊らせる、しなやかな佐久間くんのダンス。
指の先まで美しくて計算されたそれに、ただ見惚れるしかなかった。
何より、踊る曲調によってガラリと変わるその表情。
力強く凛としたかと思えば、楽しくて堪らないって感じの全開の笑顔。そして時に艶すら感じさせるその美しさに、目も心も全てを奪われた。
あの日からずっと、もう何年も。俺は佐久間くんに一目惚れを繰り返してる。
ただの後輩だった時も、同じグループのメンバーになってからも、もう何度も何度も。
『惚れ直す』ってよく言うけど、そんなもんじゃないんだ。
毎回毎回、佐久間くんの色んな表情を見付ける度に新しく恋に堕ちてる。
きっと俺はもう、この先佐久間くん以外好きになることはない。
だからって、そんなことメンバーで、しかも歳下の男に言われたって困るでしょ。
だから言わないって決めた。
この恋を抱えて俺は一生佐久間くんを想って生きてく。
それでもたまに抑えきれずに、気持ちが溢れ出しそうになる。それを隠すために自分からはあまり近付かなかったんだけど…。
佐久間くんが、気にするなんて思いもしなかった。
やめてくれないかな、本当。
期待が膨らんだところで辛いだけなんだよ。
そうは思うけど、腕を組んでくる佐久間くんを振りほどけるわけもなく。
ただ静かに、スタジオまでの長くはない距離を一緒に歩いた。
まるで恋人同士みたいに寄り添って。
(…佐久間くんが、本当に恋人だったらいいのに…)
そう思って、何だか泣きそうになった。
「ありがと、蓮」
やがてスタジオに到着すると、佐久間くんはぱっと俺から身体を離した。
そしてはにかんだように微笑む。
「…何で、ありがとう?」
「俺のワガママに付き合って、ここまで一緒に来てくれたから。お前やっぱり優しいよな」
でもさ、と続けながら佐久間くんは少し俯いた。
「優しいから、勘違いしちゃうんだよ」
「それ、どういう意味…?」
「っ…誤解されて惚れられないように気を付けろってこと! アイドルにスキャンダルは御法度だぞ!!」
そう言って顔を上げた佐久間くんはいつも通りの明るい笑顔。なんだけど。
上手く言えないけど、何か違和感。
いつか見たことがあった気がして、でも何て言っていいか分からなくて。
そうこうしてる内に集合がかかって、佐久間くんは俺に背を向けて駆け出していった。
気のせいだったのかも。そう思いながら、やっぱり拭いきれない違和感が残った。
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