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このでかい鳥もどきは一旦捌いて枝葉で隠すとして、周囲の状況を確認した方が良さそうだ。何か良くない雰囲気を感じる。
そもそも、俺はこの鳥もどきを見たことがねえ。前回、狩に出たときもだ。こんな村の近くにこいつがいたら真っ先に狩るはずだ。獲物としてもいいが、村に被害が出る可能性もある。おそらく奥地に生息していたのだろうが、より強い生物がこいつを追いやったに違いない。そして、追われたこいつは餌にありつけなかったことから、俺らを狙ったと推測する。
これが合っているかどうかは分からないが、かなり近いはずだ。
「サブ、コイツの臓物を出して、血抜きしたらもう少し先まで行くぞ」
「え、分かったっス。にしても見たことない生き物っスねー」
「ああ、だが、こいつもおそらく何かの標的だったんだろうな。逃げ延びて腹を空かせたって感じだな」
サブは、なるほどと手を打つ。俺は鳥もどきに近付く。
(――宿れ、刃虫)
形態変化させるように創造する。刀のようなものに腕を変化させた。そして腹を裂き、必要な臓物を葉に乗せて分ける。
太いつるを鳥もどきのでかい足に結ぶ。そして近くの木に吊り下げるようにくくりつけ、首を落とす。自然落下による放血処理を施した。近場にある、朝露を貯める籠草の水で洗浄し、食材をすべて吊るして枝葉で隠した。これでよし、と。
「ゲンの旦那あ、手際いいっスね。おれっち、つるを持ってきただけで終わったんすけど……」
サブのモヒカンが、感情表現のように少し項垂れる。お前のモヒカン、生き物かなんかなのか?どうなってんだそりゃ。
「これくらい、狩人なら朝飯前だと思え、サブ」
捌いていた腕刀の血を払い、元の腕に戻した。
「確かに、もっと学ぶッス!」
サブは元気な声で答えた。ふ、まあこいつも色々考えてやってるみたいだしな。さて、村に危害を与える生物の可能性は避けたいからな。散策に行くとしようか。
「あ、ちょっと、ゲンの旦那あ。先に行かないでくださいっス」
サブは、先々行くゲンの後ろ姿を小走りで追いかけた。
◇
――森林を抜けた先、広大な草原が広がっていた。ゴツゴツした岩場も所々にあり、何かがそこに潜んでいそうだった。
その場には死臭が漂う。おかしい。ここはバガールの群れが草を食べるために横断していく場所だ。だが、群れがそもそも見当たらない。
辺りを見渡しながら、しばらく歩く。
「なんか、静かっスね。あと、血の匂いが近づいているような……何かいそうっス……」
サブは肩を震わせながら、いつでも戦えるように腕をすでに形態変化させていた。
「そうだな、変だ。バガールの群れもいない。静かすぎる」
ここいらは、もう少し生き物がいてもおかしくはないはずだ。なぜこんなに静かなんだ。なっ――
二人が向かった先に、匂いの元凶があった。岩場に囲まれた場所の近くに、バガールの群れが山のように積まれていた。
――これは一体誰がやったんだ? 捕食者としてここまで出来るのは、相当な上位種でなければ無理だ。そしてこの裂傷。頭部を噛みちぎるかのような裂け方……ほぼ一撃でバガールを仕留めていると見て取れる。
「おれっち、トイレ行ってきやすね」
俺は手で合図をしてテキトーに返事をした。そして、バガールの仕留められた傷跡を手でしっかりと確認していく。
おかしい。こんなに大量の獲物を置いてどこかに行くなんて……何か見落としているのか?
背後で何か動いたような気がした。
サブは大声で俺に叫ぶ。俺は背後を見た。そこには、巨大な恐竜がいた。
巨大な橙色牙の王は、どうやら岩場に擬態していたようだ。
チッ、すかさずフライバエへ形態変化し距離を取ろうとした瞬間――
巨大な橙色牙の王が速かった。羽を一枚、噛みちぎられる。
があっ……なんて速さと噛む力だ。
俺は巨大な橙色牙の王を見据える。
こいつ、デカいな。