巨大な橙色牙の王を睨む。まさか、羽を一撃で持ってかれるとはな。こいつマジでやりやがる。サブは、逆に足手まといになるかもしれない、ここは俺が時間を稼いで村のみんなに助けを呼ぶしかないか。「サブ!お前は村に危険を伝えろ!班を編成しこいつをやるんだ、俺が時間を稼ぐ急げ!」
「でも、それだと、旦那が……」
「俺はこんなところで死ぬわけねえだろうが!」
サブに強い眼差しを向ける。サブは、分かったと言うように頷きその場を離れる。
俺は即座に羽をまた形態変化で再生させ体勢を整える。
しかし、巨大な橙色牙の王は俺ではなくサブの方へ向かう。途中で岩場を砕き岩を口で咥えてサブを追いかける。
「おいっ!待て!」
サブは、必死に走るが、そこに巨大な橙色牙の王の速度には敵わない。
「なんッス!?」
――ゴッ
巨大な橙色牙の王は咥えた岩を、サブの足に押しつけた。そして、サブは岩のあまりの重さに泣き叫ぶ。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!」
サブの足は岩に挟まり、身動きが取れなくなってしまった。巨大な橙色牙の王はこの狩場から一歩とも獲物は逃してくれる訳にはいかないらしい。
「お、おい、サブ!落ち着け、落ち着くんだ、深呼吸しろ!」
「ゲンさん、旦那あ……無理だ……もう……足が抜けねえ、ごめん村のみんなに伝えれなくて……ごめん旦那、おれっちいつも、役に立たなくて……」
「馬鹿野郎!何言ってんだ、こんなところで、諦めるな意識を集中しろ、俺が助けるから待っとけ!」
くそっ、こいつはまずい状況になった。最悪、とんずらしようかと思ったが、そういう訳にもいかねえ。仲間を置いてくなんて御法度だ。奴をどうにかして撹乱してサブを助けないと。やるしかねえ。
(次は腕だ、宿れ――刃虫)
腕を刃に、背中は羽で飛翔し、奴を撹乱しながらやるしかない。この距離なら取り敢えずは、
――あっ!?
(無数の岩々が飛んでくる)
くそ、なんて奴だ、あの強靭な顎で抉った岩を放り投げてきやがった。ふう、あぶねえ、なんとか避けれたが、どう捌いていくか。だけど、余り時間をかける訳にもいかねえ。サブの容体が変わっていく前に助けたいが、あのでかい岩を、あいつがいる前でどうやって助けるんだ。くそ、思考がぐちゃぐちゃになってきた。
「よけでっ!」
(!?)
うおっ危なかった。岩にダイレクトに衝突する所だった。サブの声が聞こえていなかったら俺は致命傷どころじゃなかったかもしれない、それにさっきあいつと遭遇した時もそうだ、サブは俺の身を案じて……なんてやろうだ、お前いつからそんな成長してやがったんだ。
「旦那あ゙あ゙、おれっちはまだやれる、そいつを狩るんだ、おれっちのことは気にしないでくれ!」
おまえ、嘘だろ、前まで前線に立つことすら、盾役になることもあれだけ嫌がってたのに、泣かしてくれるぜ全く。
「ああ!漢の頼みだ!任せとけっ!!!」
飛翔した腕の刃虫を解き、フライバエの羽へと合体させる。刃の羽へと形態変化する。音はソニックブームを巻き起こすように空間に波が生まれた。そして、金属のようなツンザク音。お前にこの飛翔する刀を捕らえれるかな?さっきの倍は速いぞ?
体表を駆け巡りながら、巨大な橙色牙の王の皮を削ぎ落とす。しかし、鎧のような皮膚には傷が出来るのみでダメージは全くであった。
なんだ、こいつ、めちゃくちゃ硬いぞ。だけど、傷はついているみてえだな。
巨大な橙色牙の王は、駆け巡る俺が一瞬止まった瞬間を見逃さなかった。尻尾で思い切り地面に叩きつける。
「ガハッ」
やばい、意識が吹っ飛びそうだ、頭がクラクラする。だが、まだだ。巨大な橙色牙の王は、更に追い討ちを仕掛けた。俺は何が起きてるのか分からなかった。多分ふらついた俺を、胴体でタックルしてきたのだと思うが、一瞬すぎて見えなかった、気がついたら岩場に衝突して血反吐をぶちまけていた。少し身動きが取れそうにない。
やばいな、流石に強い。巨大な橙色牙の王は俺の顔に近付き今にも喰われるかのような近さで唸る。
「ガルルルル」
「はあ、はあ、何だよお前それ、もう終わりかって聞いてるのか?その鳴き声はよお、ふざけんじゃねえ、こんな所で終われるかよ!まだまだまだまだ、しこたま、俺にはやるべきことが残ってるんだ!」
巨大な橙色牙の王は無言で少し首を傾げた。
「お前はもう、俺をもう倒したと思っているだろうが
まだ終わってねえからな!」
巨大な橙色牙の王は飽きたのか餌とみなしたのか、いきなり口を開き橙色の牙で引き裂くようにかぶりついた。
――刹那
身を交わし、横方へと飛び出した。その際に腕を形態変化させて巨大な橙色牙の王の一部の肉を切り取った。先につけていた傷から少し肉を抉り取ったのだ。
「おい!このクソトカゲ野郎!俺の肉食う前に自分の肉喰われる所見てみろよ!お前の肉、何て不味そうなんだろうな、そんじゃ頂くな!」
――ガブっ、硬い肉だ、しかも味は最悪だ。死臭がまとわりついている。下処理無しだとこれが限界なんだろう。だけど今はドーパミンが身体を駆け巡ってるのもあるし、奴の目の前で食べているのを拝ませただけで無償に美味く感じる。
「ガアッー」
奴はブチギレている。こんな小物に自分が食われたとか思っているのだろう。ははは、だけどな目的はこれだけじゃない。お前のそのイカした牙、俺が宿らせてもらう。もう、イメージは出来てんだ。
「宿れ――巨大な橙色牙の王」
腕は刃虫とは比較にならないほど盛り上がり、装甲のような分厚い皮膚そして大剣のような腕刀へと形態変化した。刀身は橙色で、まるで琥珀のように長年の歴史が詰め込まれてるかのように美しい。凄えぞやれる、確実にやれる。
「俺の大剣だ、お前のその牙とどっちが硬えか勝負だ。」






