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3話目もよろしくお願いします!

スタートヽ(*^ω^*)ノ




パーティー当日。

夕暮れの駅前で、レトルトは少し落ち着かない面持ちで辺りを見回していた。

買ったばかりのスーツに身を包み、髪も丁寧に整えてある。ネクタイはキヨが選んでくれた深いネイビー。いつもとはまるで違う自分に、レトルトはそわそわしていた。


「……うっしー、まだかなぁ。」


そんなことを呟いた直後、背後から聞き慣れた声が響いた。


「おい……誰かと思ったら……」


振り向いた瞬間、スーツ姿のうっしーと目が合う。

だが、うっしーの視線はレトルトの全身をじっと見ていた。


「……な、なに?」


「いや……すっげぇ、似合ってんじゃん。びびったわ」


「えっ……あ、あの、これ……買ったばかりのやつで……。その、どうかな……?」


そう言って、レトルトは恥ずかしそうに袖をいじる。

赤くなった耳を隠すように少しうつむきながら、うっしーの反応をうかがっていた。


うっしーは少しだけ笑って、肩をすくめる。


「正直、お前がこんなキッチリした格好してくると思ってなかったわ。馬子にも衣装ってやつだな笑」


「もー!!酷いようっしー!!笑」


2人の笑い声が響く。


「レトルト、モテそうだな笑」


「モ、モテるわけないやんっ……!」


「キヨの焦る顔が目に浮かぶわ笑」


そう言ってからかうように笑ううっしー。


けれどその目は、ちゃんとレトルトの緊張を察していた。


「ま、安心しろよ。今日はずっと一緒にいてやるからさ。な?」


「……うん、ありがとう、うっしー」


二人並んで歩き出す。

夕暮れの風が、スーツの裾を優しく揺らしていた。




会場前に着いたレトルトは、大きなガラス張りのビルを見上げて、思わず足を止めた。

煌びやかな照明、受付前にはすでにスーツ姿の人々が集まり、笑い声が絶えない。


「……なんか、場違いな気がする……」


ぼそっとつぶやいたレトルトの声は、心なしか震えていた。

その隣で、うっしーはポケットに手を突っ込んだまま、涼しい顔をしている。


「レトルト、深呼吸しろ。そんなに肩に力入ってたら倒れるぞ」


「……う、うん……」


ぎこちない動きでレトルトが呼吸を整えると、うっしーは自然な流れでその腕を軽く取った。


「ほら、俺が一緒にいるだろ。ちゃんと、支えてやるから」


その言葉に少しだけ心がほぐれ、レトルトは小さくうなずいた。

緊張しつつも、ゆっくりと受付に向かって歩き出す。


だが――その様子を、誰かが見ていた。


受付の奥、パーティー会場へと続く廊下。

スーツ姿がよく似合う長身の男の姿。


キヨだった。


会場に入ってくるレトルトと、その隣にぴったりと寄り添ううっしーの姿を見た瞬間――

キヨの手が、ほんの少しだけ強張る。


(……なんであんな距離近いんだよ、クソ)


口元には穏やかな微笑みを浮かべたまま、キヨの瞳だけが静かに濁る。

笑顔の裏で、心の奥底からじわりと湧き上がる感情――嫉妬。


その視線に気づかず、レトルトは緊張しながらもうっしーにエスコートされて受付を済ませた。


会場のドアが開いた瞬間、眩しい光と、音楽。

見た事もない豪華な会場。

レトルトは固まって動けなかった。




「……レトさん」


優しい声が、どこか鋭さを帯びて耳元に届いた。


2人が振り向くとそこにはキヨが立っていた。


振り向いた先に、キヨがいた。


深め赤いジャケットに、艶やかな黒のシャツを合わせたパーティースタイル。

髪も少しだけセットされ、普段とはまるで別人のような大人の色気を纏っている。


けれど一番目を引いたのは――その笑顔。


『来てくれてありがとう、2人とも』


穏やかにそう言ったキヨの瞳は、笑っていた。

けれどその奥に、燃えるような感情が揺らめいていた。

レトルトの隣に立つうっしーへと、ほんのわずかに視線が刺さる。


レトルトはそんなことに気づく余裕もなく――

ただ、キヨの姿に目を奪われていた。


「……キヨくん……なんか、すごい……かっこよ……」


思わず口元に手を添え、呟く。

顔が赤くなるのが自分でもわかった。胸がドキドキして苦しいくらい。


そんなレトルトに一瞥もくれず、キヨはニコッとした笑顔のまま、うっしーに視線を向ける。


『今日は”付き添い”ありがとうね。レトさんのこと、よろしく頼むよ』


「へぇ……今日はずいぶん素直なんだな。心配しなくても”俺が”しっかり守るよ」


にこり、と笑いながら、うっしーが応じる。

一見穏やかなやり取りだけれど、その間に漂う空気はピリついていた。


お互いの視線が交わったその瞬間、火花が散るような音が聞こえた気がした。


笑顔のまま、静かに火を燃やすキヨ。

いつもの皮肉を忘れず、堂々と睨み返すうっしー。


――まるで、レトルトを挟んでの、無言の対決。


だがその空気を、当のレトルトだけが感じ取れずにいた。

顔を真っ赤にしたまま、キヨの姿をちらちらと見つめ、心臓の音に気を取られている。


(キヨくん……かっこいい。)


パーティーの喧騒の中、3人の静かな幕開け。

交錯する視線の先にあるのは――まだ、誰にも見えていない結末だった。



つづく

俺の彼氏は世界一

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こんなん誰でもトゥンクしますて、!

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