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耀聖(ようせい)
698
ゆあ。🪽
41
46
それでは、
どうぞっ。
ーーーーー
部屋には見慣れない箱がいくつも並んでいる。
明日のために用意された装飾品、新しいドレス、封を切られていない手紙。
どれも綺麗だった、でも全て私と同じ偽物に見えて吐き気がした。
月明かりを受けた硝子細工の髪飾りが淡く光ったのが目に映って、明日になればこれも自分のものになるのだろうと指先に力が入る。
そして力を抜いた。
🤍「綺麗。」
僅かに遅れて澄んだ音が静かな部屋に響く。
飛び散った硝子の破片が元の髪飾りよりもずっと輝いていた。
こんなに輝いているのに綺麗なのに、脆い。
そんな儚い存在を元の輝きを消し去ってまで形を変えようとする意味がわからなかった。
気付けば部屋中の硝子を次々に落としていた。
グラス、皿、花瓶。
次の硝子が見つからなくなっても気持ちは収まらなかった。
禁断症状のように呼吸が浅くなりながら見渡すと白い箱が目に映る。
凄く魅力的だと思ったのに、箱の中を覗けばくだらない婚約指輪だった。
これも壊れてしまえばいい。
そう思って精一杯力を込めて手を振り下ろした。
🤍「なんで、壊れないの。」
何度も無機質に音が鳴る。
それなのに小さな物体は傷つくこともなく私だけが自暴自棄になっていくだけだった。
何度投げたか分からなくなった頃、リングが鏡の縁に当たって目を奪われた。
その中にいるのは完璧な王女の姿が写る。
綺麗に整えられた髪、皺ひとつない衣服、誰に見られても恥ずかしくない姿勢。
そして、口元には薄い微笑み。
笑うことは何年も前から強いられてきた習慣だった。
🤍「全部偽物なのに。」
🤍「気持ち悪い。」
褒められるたびに、正しい顔を覚えていった。
嫌なことがあっても笑うこと。
腹が立っても声を荒げないこと。
泣きたくても、人前では泣かないこと。
王女なのだから王女らしく誰からも愛される、聞き分けのいい子でいなさい。
それが“ユリア“という偽物の名前を呼ばれ始めた日に言われた言葉だった。
だから、我慢して本音を隠して笑った。
でも心の中ではずっと願っていた。
好きな人と普通の女の子として普通に外を歩いて私だけがデートと思っているお出かけがしたい。
叶うなら片思いでもいい。
それで良かったのにそれすらも叶わないこの世界にはもう疲れてしまった。
怒りと悲しみ、欲張りな願望、あの人の顔が駆け巡って頭がショートしそうになる。
こんな姿は王女に相応しくないそう思って、全てかき消すようにぎゅっと硝子の破片を握り締めた。
鋭い痛みを感じても生きている心地はしなかった。
やっぱり私は偽物かもしれない。
🩵「ユリア様。」
🩵「手を傷付けてしまいます。」
🤍「……」
耳が撫でられるような優しい声。
大好きな声だけれど何一つ響かない。
全部嘘。ニセモノ。
🩵「來亜。」
🩵「危ないよ。」
🤍「…っ…、離して…」
ゆっくりと力が抜けて痛覚が広がる。
手を開くと掌が真っ赤に染まり上がっていた。
もう誰も呼んでくれないと思っていたのに、叶わないのに期待だけさせて本当にずるい。
離れなきゃいけないのに離れて行けない。
🩵「私はずっとここに居ますよ、貴女が死ぬまでは。」
🩵「貴女を守るのが私の役目です。」
どうやら、私が死ぬまではこの場所に居てくれるらしい。
私が死んだらまた貴女はどうなるの?
また涼しい顔をして誰かを守るのかな。
もうどうでもいい。
🤍「ねえ、柚葉。」
🤍「私を殺して。」
next.
コメント
1件
読ませていただきました……すごく好きです、この世界観。ガラスが次々に砕けていく描写が、主人公の心の内側を表してるみたいで、痛いくらい綺麗でした。最後の「私を♡♡♡て」、柚葉はどんな顔でそれを受け止めたんだろうって考えてしまいました。続きが気になります🖤