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売上の締めであるラストオーダーの24hまで残り時間後10分。呼べるお客さんは全て呼んだ。元々楓の義理の延長であったり、黒川にも助力して貰った。仲の良い子のヘルプだった所を頼み込んで、本指名に指名上げして貰ったりと、出来る努力はして来たつもりだった。
―――だが、絶対的に太客《神様》が少ない……
現在京華は1150万の売上。対する私は1100万。ダメだった…… 届かなかった…… ラスト10分では来店はもう見込めない。入り口のボーイが営業時間を告げるからだ。深夜1時までなのに、これから新規で入る馬鹿は居ない…… 諦めかけたその時―――
―――ちかさん、風向きが変わりました!
若いマネージャーが慌てて駆け込んで来る。
「うっ売り上げが、京華さんに売り掛けが発生して、マイナス50万です。 ラスト5分で売り上げが、いちかさんと並びました!! 」
「並んだ⁉ どういう事? 」
「並んだんですよ、売掛です、売掛はランキングの現金扱いでは無いんですよ、50万の売掛が発生したんです」
売掛金とは、所謂《いわゆる》「カケ」とか「ツケ」と言われるもので、未収代金の事を指す。販売した商品やサービスの代金を後から請求する方法の事を言い、売掛金はその支払いを受ける権利、つまり債権の事である。
京華陣営は大いに狼狽《うろた》える―――
―――此処に来て計算が狂ってしまった……
「ちょっと、マネージャー、ぼーっとしてないで、今から私を本指名出来るテーブル探しなさいよ!! 若《も》しくは場内でも良いし、何ならヘルプでも構わないわ」
「皆様、京華さんに何を強請《ねだ》られるか分からないと、怖がってしまいまして…… その…… 」
「何よ! 貧乏人ばっかりじゃない、何なのよ! 私がNo,1なのよ? 負ける訳無いじゃない、あたしが1番じゃなきゃいけないのよ!! みんなだってそう思ってるのよ? あんな新人にあたしが負けちゃいけないのよ!! 」
ラストオーダーが終わりの合図…… 此処で指名がどちらかに1本入れば決まる。でも…… こんな時間ではもう誰も来ない……
―――残り時間1分……
「あっあの、もうラストオーダーでして…… 」
入り口に現れた男にボーイが告げると、社長が大きな声を投げた。
「まだ終わってないぞ、至急お席にご案内しろ」
「え⁉――― 」
「至急お席にご案内しろと言っている!! 聞こえないのか? 」
「あっ、はい、失礼致しました。あのっご――― 」
「もういい下がれ、私がご案内する」
「はっハイ、申し訳御座いません」
「やはり最後は貴方でしたか…… 」
「…… 」
「ようこそおいで下さいました。ご指名は? 」
「―――さんでお願いします」