:これは二話になります!一話を見ていない方はぜひ一話も見てください!:
「じゃあ、俺から始めるぞ。俺は佐野万次郎、マイキーだ!」
「俺はさっき紹介したんだが…龍宮寺堅、ドラケンだ。よろしくな。」
「場地圭介!」
「俺は松野千冬!場地さんに手ェ出したらシバくぞ。」
「ちょ、千冬…。あ、花垣武道っす。よろしくっす。」
…なかなかに性格の濃い方々。
大丈夫か、と少し不安になったが、私は焦らず続けた。
「朝比奈まふゆです。これからよろしくお願いします。」
「宵崎奏…。よ…よろしく…。」
「東雲絵名!絵の事はなんでも言ってよね!」
「ボクは暁山瑞希だよ~♪よろしくね!」
「初音ミク…。まふゆの思いでできたセカイから来たの…。よろしく。」
佐野さんの目が少し開いたが、すぐに普通の調子に戻して場を仕切り始める。
「じゃあ…帰る家だが…この調子じゃなさそうだし、家出ってわけじゃないなら、帰れるまで俺らの家で過ごすか金払って宿の二択だよな…。」
マイキーがそう言って考え込む隙もなく、龍宮寺さんが言った。
「じゃあ、瑞希連れてくな。」
「は!?え!?」
あまりの場の速さについて行けない。瑞希も困惑してるし。
その流れに絵名が乗ったのか、花垣さんの手を掴んで言った。
「私をアンタの家で匿って。そのダサさ見てらんない。」
「あ、はい、分かりました…。」
相棒言われてやんの、と松野さんが嘲笑していたがそれは置いておいて。奏と場地さんは意気投合したらしく、行く家が決定していた。多分お相手さんがカップラーメン好きなんだろう。
「まふゆっち!」
「ふぁ!?あ、はい、どうしましたか?」
「まふゆっちさ、俺の家来ない?絶対エマが喜ぶからさ!てか来て!」
…唐突な勧誘。なんかものすごい明るい。
私は圧に押され、「じゃあ、お邪魔させていただきます。」と答えてしまった。
「うし、決まり。ミクちゃんは千冬が連れて帰るっぽいな。猫好きだったっぽいし。」
確かに、ずっと野良猫を愛でてる。ミクも心なしか嬉しそうだ。
「まふゆっち!置いてくよ!早く乗れって!」
遠くで私を呼ぶ声が聞こえる。私はその方角に向かって走っていった。
―これは、柔らかくて脆い、少年少女の話である―
:ここからマイキー視点です:
「マイキー!先週抗争があってケンちゃん死にかけて焦ったのに今度は女子拾ってきたの!?」
エマが大声で俺にそう怒鳴りつける。
「仕方ねーじゃん、ぶっ倒れてたんだし。」
「仕方なくない!全く…。」
エマはそう言ってコンロの火をつけて、作り置いていた晩飯を温め始めた。
「やっぱり私帰りましょうか…?」
まふゆっちはそう言ったが、エマは「まふゆちゃんは悪くないよ~!」と返答して引き留めた。
そして、近くにあった服を俺に投げて言った。
「悪いのは全部マイキーだから、マイキーそれ畳んで倉庫に置いてきて!一昨日からあったんだからね!それ!」
俺は少し萎縮して、二回返事して静かに倉庫へと向かった。
外の風が少しぬるい。
夏だな~と思いつつ、倉庫のドアを開けた。
…この時期に毎年見える幻覚。
「シンイチロー…。」
俺はその名をぽつりと零して、静かに中に入っていった。
服だけをベッドの上に雑に置いて部屋を出る。
後ろを振り向くと、そこで作業しているシンイチローが見える気がした。
…寂しいって言えたら。
…声を上げて泣けたら。
どれだけ楽かは知らないが、少なくとも俺にはできなかった。
…俺なんて、ただ喧嘩の強いだけの兎だ。
過去に囚われてばっかで、弱いところを隠してしまう、独りぼっちが嫌いな、そんな奴。
ふとエマが呼んでいる気がして、俺は倉庫のドアを閉めて向かった。
目に入ったシンイチローがいる仏壇は、少し儚げだった。