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夕暮れに帰宅して、冷蔵庫からビールを取り出して流し込む。たった独り、そんな生活をまだ20歳からしていた私も、今年で24歳になった。それに気づいたのは、友人の結婚式の招待状を見たからである。
友人は工業高校の同期であった。後に聞いた話だが、同じクラスの友人達に、ビジネスで成功すると豪語して、その際に縁を切ると言ったらしい。どうりで私が結婚式に呼ばれ、クラスの友人を見かけなかったわけだ。そんな友人を、私はかわいいと思った。
古い小説で見合いの話が出てきた。縁談など堅苦しいと子供の頃は思っていたが、今となっては夢のまた夢である。「嫁にもらう」という言葉の意味を深く深く考えていると、何だか情けなくなってきて泣いた。それからお見合いアプリとやらを見た。吐き気がする。私はプラトニックな愛しか知らなかった。
お金を払ってお見合いアプリを入れた。そこで、束の間の会話を楽しんだ。実際に会うとなると、私の胸が高鳴って苦しくなり、どうにも出会う口実を言い出すことが出来ずにいた。何人もの女性とやり取りをしてようやく出会う機会を得た。
とても知的な女性であった。いかがわしいことを考えていた私はかえって失礼な気持ちになり、申し訳ない、という気持ちでデートをした。決してたまらなく情熱的な恋愛ではなかったが、程なくして同じ家で暮らすことになった。
簡単な式を挙げた。友人の結婚式に比べれば見劣りしてしまうが友人を呼んだ。友人の子供も来た。奥さんの店が繁盛しているらしいことを聞いて、私はまたみじめな気持ちを少し、持つようになった。私もまた自分の妻に生活を工面してもらって、家ではだらしのない生活をしっかり継続していた。安いビールを飲んだ。
母が肺の病に倒れ、祖父母と同じく半年もたたずに亡くなった。慎ましい式を挙げて、遺品の整理をしていると、友人の危篤の報せが来た。返信に困っているうちに、どうやら亡くなったらしいことを人づてに聞いた。自死らしい。妻子とは離れて暮らしていたことも知った。
厳かな葬式の最中、いよいよ私も危ういと思った。