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#投稿🐢
yozakura🌸
305
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羨ましい。
仲間に慕われていて、誰にも負けないくらい強くて、不器用だけど努力家な仁。
そんな彼が、心底羨ましい。
こんな自分が、心底嫌いだ。
何故だろう。
俺は、どこで間違えたんだろう。
ああ、俺は仁みたいにはなれない。
俺も、愛されたい。
報われたい、独りは怖い、強くありたい、負けたくない―――
こんな俺を置いて…
―――今日も、明るくて暗い、朝が来る。
ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー
「おはよ…」
「どうしたんだ、瑠衣?
いつもより暗いな」
「ん〜…
ちょっと寝不足で」
へらり、といつもの笑みを貼り付ける。
大丈夫。
俺は、大丈夫だ。
「それよりおっさん、今日の依頼は?」
「ああ…最近TOKYOCITYで相次ぐ通り魔事件を解決してほしいとのことだ」
何か言いたげに瑠衣の方を視ていた仁はおっさんの方を向く。
「今から行くか」
「分かった…珍しいな」
ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー
―――捜査中。
瑠衣は、辺りに響き渡る悲鳴を耳にした。
振り向いた視界に入ったのは、少女にナイフを突き刺そうとしている黒尽くめの男。
「…、危ない!」
咄嗟に少女に覆いかぶさった瑠衣の耳に切実な声が聞こえる。
「…っ、瑠衣!」
黒い筒先からぱん、と乾いた音が響いたのと右肩に衝撃が走ったのは同時だった。
「…っか、は…っ」
撃たれた場所が悪かったのか、口に血の味が広がる。
「瑠衣、瑠衣…!」
必死に呼びかける仁の声が段々と遠のいていく。
「る…い、…るい…!」
泣きそうな顔をした仁の頬に手を伸ばし―――視界が反転した。
ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー
暫くして、瞼を開いた瑠衣は見慣れた天井を見上げる。
うまく働かない頭で捉えたのはおっさんの声。
「おはよう、瑠衣…」
「…ん、おはよ…
って、あれ…?」
俺、何をしてたんだっけ…と考えていると、聞き慣れた男の声が耳に届く。
「お前は子どもを庇って撃たれ、倒れた…
全治1ヶ月ほどだと」
「ああ、なら良かっ…」
「良くねえだろ」
突然声を荒らげた仁に、思わず身を竦ませる。
「おい、仁…」
「おっさんは黙っていてくれ…
今回ばかりはもう許せない」
仁は拳を握りしめ、瑠衣と真っ直ぐ視線を合わせる。
その眼に浮かぶのは怒り―――悲しみ、心配。
いつもの瑠衣なら心配からの説教だと気づけたはずだが―――
今の瑠衣は、もう限界だった。
「一人で突っ走るなとあれほど言っただろう!
何のために俺たちが…」
「はは…、そうだよな…
俺はもう…」
「は…?
瑠衣、おい、瑠衣!」
玄関に向かって踵を返す。
下駄箱の前で振り返ることなく声をこぼす。
「…じゃあな、仁、おっさん」
不思議なことに、怪我よりも痛いのは心だった―――。
ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー
―――まださほど事務所から離れていない路地裏。
瑠衣は、ガラの悪い風貌をした不良たちに囲まれていた。
「あれ?
こいつ、ホークアイズのところの…」
「ああ、物怪瑠衣じゃね?」
にやにやとしながらこちらににじり寄ってくるリーダー格の男。
思わず身を引き、後ずさる。
「おいおい、逃げちゃってんの、かわい〜」
「はっ、ホークアイズの記録者が情けねえなあ」
「おい、連れてくぞ」
「「はい」」
びり、と首筋に電流が流れるのを感じた瞬間、瑠衣は再び眠りに落ちた。
ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー ✿ ー ❀ ー
「…ん、い…っ」
硬い床の上に身を起こし、痛みに呻く。
「……」
あたりを見回すが、窓などは見当たらない。
「あ、こいつ起きたぞ」
ばたばたと騒がしい足音が聞こえ、上から光が差し込む。
「よっ…と」
たん、と暗い地面に着地したリーダーの男はにやりと口角を上げた。
「よう、物怪サン、調子はどうだ?」
「………」
「だんまりかよ、つまんねーの」
やれ、と合図を出す男に反応し、瑠衣を男たちが囲む。
―――地獄の時間の始まりだった。
後ろ手を縛られている瑠衣が抵抗できるわけもなく。
数分も立たないうちに、地に伏していた。
「お前さあ…ホークアイズに必要ないんじゃね?」
「……っ」
「だって…」
お前に何ができるんだ?、と―――
さも楽しそうに嗤う男を前に、瑠衣は身を強張らせた。
―――分かっていた。
仁は、本当に強い。
仁の対人格闘術は誰にも引けを取らない。
だが、俺は簡単に仁に負ける。
一度も勝てないくらい、俺は弱い。
おっさんは、気配り上手。
仁との長い付き合いからか、本当に気が利くし、仁のことをよく理解している。
だが、俺は知らない。
2人との間には、越えそうで越えられない、透明で高い壁がある。
「はは…そうだよ」
もう、どうでもいい。
瑠衣は壊れたように笑った。
その笑顔を見て男たちはぞっとしたのか、黙り込む。
「…もういい、始末してホークアイズの事務所に送っとけ」
「はい、了…」
「…瑠衣!」
「あれ、ホークアイズの探偵サンじゃん
ちょーど良いところに…」
こいつ、要らないでしょう?
歪んだ笑み。
仁は怒りをなんとか堪える。
「瑠衣が、要らない…?」
俯いた仁の口から零れたのは、聞いたこともないくらい低く、冷たい声。
「…ふざけんな…!」
めき、と仁に掴まれた男の手が鈍く悲鳴を上げる。
「瑠衣は…、俺たちの家族だ!」
真に迫ったその言葉に、瑠衣は大きく目を見開いた。
「家族で、唯一無二の仲間で―――
高め合うライバルなんだよ…!」
「仁に同意だ。
…私たちの家族に手を出した以上…
生きて帰れるとは思わないことだな」
「ひ…っ、や、やめ…!」
「やめろ…?
お前が最初からやめておけばよかったのにな」
にやりと笑った仁はそっと構えを取る。
「悪いな…
正当防衛だ」
次の瞬間、一陣の風が吹く。
青い旋風に、男たちは次々に倒れ伏していく。
「は、はは…
やっぱり強いなあ、仁は…」
完敗だ。
瑠衣は久しぶりに清々しい笑みを浮かべた。
「…何故か分かるか?」
おっさんが静かな声で尋ねる。
「…え…?」
その深い新緑色の瞳に宿るのは真剣な光。
「瑠衣が大事な家族だからだ。
家族が傷つけられたら俺たちも傷つく―――」
当たり前だろう、と優しく微笑むおっさんに、視界が涙でぼやける。
「……そっかあ…」
「俺…二人のそばにいてもいいの?」
その問いに、2人は微笑んで答える。
「当たり前だろう」
「誰がなんと言おうと…
瑠衣は瑠衣で、ホークアイズの一員で、大切な家族だ」
「あはは…あれ、何で…?」
目尻から涙がこぼれ落ちた。
そっと近づいてきた仁にぎゅ、と抱き締められる。
仁の爽やかな柔軟剤の香りが瑠衣の緩みかけた涙腺をくすぐった。
「泣きたいときに泣けばいい…
瑠衣は、他の誰にもなる必要はない」
少なくとも、俺の眼に映る瑠衣は―――
優しくて、気遣いができて、何度でも挑みかかれる向上心があるやつだ。
その暖かい言葉に、瑠衣は心から涙した。
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俺も、愛されたい。
―――ずっと、二人のそばにいたい。
報われたい。
―――報われるまで努力しよう。
強くありたい、負けたくない。
―――仁に、勝ちたい。
独りは怖い。
―――俺は、もう独りなんかじゃない。
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Darling 本当の音を聴いて
やるせない日々の膿は出切らないけど
ねえ 私の私でいても良いの?
あの子にはなれないしなる必要もないから
Mrs.GREEN APPLE『ダーリン』より
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コメント
1件
うわあ…読んでいて胸がぎゅっとなりました。瑠衣くんの「自分は弱い」「仁にはなれない」っていう自己否定感が冒頭からひしひしと伝わってきて、そこから「俺も愛されたい」って本音が漏れるシーン、すごく響きました。でも最後に仁が「家族だ」って言い切ったときの安心感、そして「他の誰にもなる必要はない」という言葉が本当に救いですね。タイトル『あなたの涙に、花束を。』が、ラストの瑠衣の涙でようやく意味を持った気がします。世界観の作り込み(ホークアイズ、TOKYOCITYの通り魔事件)も気になりますし、続きがとても楽しみです。素敵な第1話をありがとうございました🌸