『森の囀りと陽光の街』
「あちらの生地を2m、先程言った生地はそれぞれ1.4mづつお願いしますね」
ルヴェルヌの生地屋で、石榴が慣れた様子で店員と会話を交えている
「はーい、かしこまりました」
生地屋の店員が慣れた様子で布をカットしていると、
その様子をアレキとペリドットが興味津々に見ている
「すっごーい…速い…」
「いつも見てるけど…やっぱり凄いなぁ…」
二人のキラキラと光る瞳に気づくと、店員はくすりと笑う
「何せ私は石榴さん御用達の生地屋だからね、腕には自身があるんだよ」
店員が二人にニコニコ笑いながら告げていると、石榴も微笑みながら口を開く
「ええ、いつもお世話になっておりますよ」
「あはは、今後ともどうかご贔屓に」店員はにこりと笑って石榴の頭を撫でる
街中を歩いていると、
大体誰かしらが石榴に話しかける
老人や若者、子供など
年代や性別は本当に様々で
可愛らしい花売りの娘は「石榴さんが好きって言っていたお花っちゃんとありますよ〜っ、一輪如何ですか?」と、人懐っこい笑顔で近寄り
練習休憩中だった舞台団員の数名が「まぁ!石榴ちゃん」「丁度良い、これあげるよ」と、石榴に余った化粧品と造花を持たせ
明るい笑顔が特徴なカフェの店員は「まぁ!石榴さんっ丁度いいとこに!」なんて言いながら石榴の口にスコーンを押し込んで感想を求め
小さな天使のような子供達が「あっ、石榴さんだーっ」「ねねっ、また遊んでくれる?」などと口々言い、石榴の周りを囲む
穏やかそうなパン屋の主人は「石榴ちゃん、また徹夜でもしたのかい?ちゃんと食べないとダメだよ?」と言いながらバケットをお裾分けする。
そんなことをされる度
石榴は笑いながら「ええ、ありがとうございます」と口にする。
そんな石榴からは一旦離れた場所に座りながら
「なんか…すーっごく意外〜」石榴の様子を見たアレキが言う
「意外って?」アレキの迷子防止に手を繋ぎながらペリドットが小首を傾げる
「だってさー、石榴さんってなんてゆーか…近寄り難い?ってかんじだからあんな風に街の人に囲まれてるの意外じゃん?」
「そうかなー?、僕が作られた時からずっとああだからなぁ…」
「ほんと〜?」とアレキが言うと「ほんと」とペリドットが返す。
クオーツはそんな弟妹の頭にぽんと手を乗せながら
おすそ分けで貰ったお菓子を口に運ぶ
「わかります、最初は私も意外だと思いましたし」
「え、だよねだよね!」
クオーツが小さく頷いて、街の人と話している石榴の方に目をやる
彼女の白瞳は一見冷たく、触れてはいけない印象であるが
確かな芯のある眼差しでそれは正に石榴の従者であるべき者の瞳だ。
「石榴様は人と関わること自体元々好きな方ではある様ですし…
ジョークもお好きですので、それが街の人達から慕われている要因かと」
クオーツの説明を聞いてアレキはわかったような
そうじゃないような曖昧な表情を浮かべてから石榴に視線を戻す
石榴はいつの間にか数名の婦人たちに囲まれ
額に触れられたり大量のお菓子を持たされ
「石榴ちゃん、もっと食べないといけないわよ?」
「そうよ、顔色があまり良くないわ…昨日はちゃんと寝たの?」
「ご飯はちゃんと食べた?また床で寝たりしてない?」
などと、口々に心配そうな表情を浮かべたまま質問されていて
「昨晩はベッドでぐっすり眠りましたし、
最近は三食きちんと食べていますのでご心配なさらないで下さいませ」と石榴が返しても
「本当に…?」と、不安げな様子から普段の石榴の生活と
婦人達が石榴のことを大切に思っていることが伺える。
「…ですので皆様、お菓子はもう大丈夫ですよ?」
「ダメよ!お菓子でも今は良いからもっと食べて!」
そんな風に苦笑しながらも何処か嬉しそうにお菓子を詰め込まれている石榴の背後に
オレンジ色の人影が音もなく近寄ったかと思えば
石榴の身体がふわりと宙に浮く
石榴口から「ひゃぁっ!?」と
普段の冷静と妖艶さからは想像のできないような声が漏れたあと
石榴は自身の身体を両手で軽々と持ち上げた相手に顔を少し赤くさせたまま視線を向け「また貴方ですか!?」と叫ぶ
相手はくすくす笑いながら「やあ私の可愛い妹」と言って石榴の腰を両腕で軽々と持ち上げたまま赤くなった石榴の顔を愛おしそうに眺める。
女性にしては低く、まっすぐと芯の通ったアルトボイス
長く、風になびくウェーブがかった太陽のような髪を風になびかせ
オレンジの瞳には溢れ出る自信と品が映り
健康的な肌にはよく似合うそばかすが咲き、
一国の気高い女王かと思えば騎士団長にも見える長身の美女
カーネリア・ド・ソレイユ
貴族の令嬢でありながら自由かつ勇猛果敢な性格が影響し家出した結果
この街随一の舞台団こと、『 焔麗座』を開設した張本人で、街の中でも屈指の経験とカリスマ性を誇る実力者であり、太陽の様な人格者
そして、石榴のことを妹分として可愛がっている変わり者
「一体全体…いきなり何ですか!?」
「お前が麗しい女性からお菓子をせびっているように見えてな、姉として叱ってやろうと思ってね」
顔を赤らめている婦人たちとは別の意味で顔を赤くしている石榴を見て、大笑いしながらカーネリアは石榴を下ろしてあげると石榴の頭をぽんと撫でて噴水の方をちらりと見たあと「お詫びにあの可愛い子達の好きなケーキを買ってあげるよ、良いかい?」と言って石榴の顔を覗き込み
「ああ、勿論石榴のも買うさ」とカーネリアが言って石榴の頭を撫でる。
石榴が「…クッキー入りのを…お願いします」と言うとカーネリアは満足そうに微笑む
時刻は午後14時少し過ぎ
暖かな陽光が街に差し込み、森に鳥の囀りが響く時刻
そんな中、石榴は踵で地面を叩く
それはダンスのステップを踏むように優雅で
同時に、少し幼い子供のように
コメント
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今後、ルヴェルヌの街の人達は何があっても暖かくて良い人たちとして書くことをここに宣言します←優しい集団の人に弱い女
石榴さん可愛いぃぃぃぃ!!!スコーン口に突っ込まれてんのも可愛い〜!!!!!!