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「レトさん…?」
驚いた顔で俺を見る。俺は泣いちゃいなかったけど、横でそんな顔されたらさ…ちょっと甘やかしたくなっちゃうでしょ。
「キヨくんって素直なんやね」
「んだよそれ…」
「泣いてたの、内緒にしとくからさ」
「レトさんが偉そうなの、ムカつく…」
「なんでだよ」
俺は寂しさにも慣れて、映画を観ても何を見てもそんな感情は出てこなくなっていた。だから素直に感情移入して泣けるこいつを、少し羨ましいなって思ったんだ。背中を丸めて泣いて…かわいいやつだ。
ズズッと鼻水をすするキヨくんは、まだ何かを言いたげで、俺の顔をじーっと見つめていた。
「なに?」
声をかけてみてもなんの反応もなくて、頭を撫でる手を引っ込めようかと思ったその時だった。
「うわっ…!」
突然腕を引っ張られ、よろけてしまう。
「ごめん」
あ、またこの感覚だ。キヨくんはあの時みたいに俺を抱きしめて、はぁ、と溜息をついた。
「ねぇ俺が泣いてるんじゃないんだけど」
この前は俺が寂しそうだったからってしてくれたけど、今日のは違うじゃん。そう思って引き剥がそうとすると
「俺がこうしたいから、させて」
俺の頭を抱えて耳元でそう答えた。その声が普段とは違って真面目で、俺はキヨくんの背中に腕を回し、大人しくしていた。
部屋にある掛け時計の秒針が嫌に大きく聞こえてきてくる。気づいたときには映画のエンドロールも終わっていた。ちょっと前に聞いた話を思い出す。確かキヨくんは末っ子なんだっけ。いくら大人っぽく振る舞ったってこういうところは末っ子っぽいんだなって。
「もしかして、キヨくん寂しくなっちゃった?」
「…だったら?」
「俺が甘やかしちゃう!」
「なにそのバカっぽい言い方…」
さっきより安心したのか、いつものキヨくんの雰囲気に戻りつつあった。
「おかしいな、俺がレトさんを甘やかす予定だったのにな…」
「新鮮なキヨくん見れて良かったなー」
「うっせ」
多分実家ではこんなに感情を出してこなかったんだろう。末っ子ってそんなものだから。意外なことにキヨくんは俺と似た境遇なんだなってそう思った。
とてつもなく眠くなってきた俺たちは、片付けなんて明日の朝にしようとすぐに布団に入る。一緒に寝てやろうか?とキヨくんから提案されたけど、またからかわれてるんだとその提案を断った。
でもちょっと後悔はしてる。さっきのアレのせいで人肌が恋しい…
提案してきたの…キヨくんもそうだったのかな…
To Be Continued…