テラーノベル
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登場人物
私(ナレーション兼):かつての片想いを胸に秘めた女性。
彼:高校時代の憧れの人。現在はバーでビリヤードを嗜んでいる。
【室内・夜】
(静かな部屋の音。バッグを置く音)
私(N):「……大人になったのかな」
帰ってきた部屋で呟いたその一言が、今日の私をそのまま表している気がした。
昔好きだった人。高校のときのあの人。
でも想いを伝えられないまま卒業して、それっきり会うこともなかった。
重ねた年月は、少年を男性に、少女を女性に仕立て上げる。
(回想:バーのざわめきと、ビリヤードの球がぶつかる音)
私(N):恋愛を考えると、私はいつも大きな果実を思い浮かべる。このままでは大きすぎるから、だから、少しずつ切り分ける必要がある。
「手元に来たひと切れ、それを私は恋と呼ぶのかもしれない」
仕事でも趣味でもない。無趣味な私を気遣って、会社の同僚がビリヤードに誘ってくれた。
正直あまり乗り気ではなかったけれど、付き合いもあるし、入社以来仲のいい人だったので、行くことにした。まではよかった。
彼:「もしかして……」
私(N):挨拶された瞬間、気づいてしまった。彼だ、好きだった人だ。
でも向こうは気づいていない。自己紹介は軽く交わしただけで、それ以上は聞かれなかった。
(場面転換:キューを構える音)
私(N):それから私はそのバーに通うようになった。何度か会ううちに、ビリヤードを教えてもらい、少しずつ上達していく。
でも本当の気持ちは違った。言葉にするのが難しく、うまく整理できない。
「大きな果実が、切り分けられない」
(バーのカウンター。皿をじっと見つめる微かな衣擦れの音)
私(N):目の前のお皿をじっと見つめる私。すると懐かしい香りがふわりと漂った。
彼:「これ、昔から好きでしょ」
私(N):前を見ると、そこには――
高校の購買でよく買って食べていたアップルパイを、彼が持ってきてくれていた。
私:「……はい、好きでした」
私(N):私は黙って、差し出されたアップルパイをそっと口に運んだ。
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