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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第136話:消えた提灯と村の涙。需品科の血が騒ぐ『夏祭り復活作戦』発動!
真夏の太陽が、十勝の限界集落を容赦なく照りつけている。
縁側の軒下に吊るされた風鈴が、チリンと涼しげな音を鳴らした。
古民家の庭(ベルサイユ宮殿風)では、体長三メートルの巨大ヒグマが、タライに張った水に浸かって「グルォ……(極楽だぜ)」と溶けている。
その横では、キタキツネのコン吉とコン次郎が、氷を浮かべた冷水に顔を突っ込んで涼を取っていた。
そして特等席である座布団の上では、純白の神獣シロが『冷感マイナスイオン』をフル稼働させ、極上のクーラーと化している。
「はぁ〜……お兄さん、今年の夏は暑いですねぇ。シロちゃんのマイナスイオンがなかったら干からびちゃいますよ」
麦わら帽子を被った小春ちゃんが、縁側で足を投げ出しながら、真っ赤なスイカにかぶりついた。
シロの『大地の錬金術』によって育った、成人男性の胴体ほどもある規格外の極上スイカだ。
「ああ。だが、この極端な気温上昇も、想定内の環境変化だ。需品科たるもの、常に適切な水分と塩分を確保し、熱中症という見えない敵から陣地を防衛しなければならない」
俺はいつもの折りたたみチェアに深く腰掛け、氷をたっぷり入れた冷たいほうじ茶を啜った。
今日は村の農家のおばあちゃん達も、涼を求めて俺の古民家に集まっていた。
「アキヤさんちのスイカは、本当に甘くて瑞々しいねぇ。生き返るようだよ」
「本当だねぇ。……こうやってみんなで縁側に座ってると、昔の夏祭りを思い出すわね」
おばあちゃんの一人が、遠くの入道雲を見つめながら、ポツリと呟いた。
「夏祭り……ですか?」
小春ちゃんがスイカの種を吹き出しながら聞き返す。
「ああ。昔はこの村にも、立派な鎮守の森の神社があってね。お盆の時期になると、村中の人が集まって盆踊りをしたもんさ」
「焼きトウモロコシの屋台が出て、提灯がずらーっと並んでね。子供たちの笑い声が夜まで響いて……本当に、一年で一番楽しい夜だったんだよ」
おばあちゃん達の顔に、懐かしさと、そして深い寂しさが入り交じった影が落ちた。
「でも……若者がどんどん街へ出ていって、村の資金も底をついちゃってね。……もう十年も前に、お祭りは無くなっちまったんだよ」
「提灯の灯り……死ぬ前にもう一度だけ、見たかったねぇ……」
おばあちゃんが、しわくちゃの手で目元を拭う。
限界集落が抱える、過疎化と高齢化という残酷な現実。
かつて村の人々の心を繋いでいた大切なコミュニティの場は、カネと人が消えたことで、音もなく消滅してしまっていたのだ。
小春ちゃんが、切なそうな顔で俯いた。
ジンバルに固定されたiPhone miniの向こう側で、この配信を見ていた一千万人のリスナーたちも、しんみりとした空気に包まれていた。
『10年前になくなったのか……切なすぎる』
『田舎の祭りが消えていくの、リアルで胸が痛いな』
『おばあちゃん達の涙、見てられないよ……』
居間に重い沈黙が落ちた、その瞬間だった。
「……小春ちゃん」
俺の、信じられないほど低く、そして冷徹な……いや、静かに燃えたぎるような声が響いた。
「え……? はいっ、なんでしょうお兄さん」
俺は、持っていたほうじ茶の湯呑みをコトン、とローデスクに置いた。
その目つきは、完全に『戦場に赴く歴戦の指揮官』のそれへと変貌していた。
「……祭りが消滅しただと? 資金難? 過疎化?……馬鹿を言うな」
俺はゆっくりと立ち上がり、おばあちゃん達を見下ろした。
「祭りとは、単なる娯楽ではない。地域コミュニティの連帯感を極限まで高め、部隊(村人)の士気を維持するための、最重要の『精神的ロジスティクス』だ」
「お、お兄さん……?」
「それを資金難という物理的な理由で放棄するなど、元・陸上自衛隊需品科のこの俺が断じて許さん。カネがないなら稼げばいい。人がいないなら呼べばいい。それだけのことだ」
パチンッ!
俺の脳内で、完全に『本気のスイッチ』が切り替わる音がした。
「これより、限界集落・精神的ロジスティクス修復作戦――『オペレーション・フェスティバル(夏祭り復活作戦)』を発動する」
俺がビシッと前方を指差して宣言した瞬間。
「キュンッ!!」「コンッ!!」
コン吉とコン次郎が「待ってました!」とばかりに立ち上がり、庭の巨大ヒグマが「グルォォォッ!!」と鬨の声を上げた。
『ミャウ(面白くなってきたじゃない。やっておしまいなさい)』
シロもまた、神秘的な『オッドアイ』の瞳――左目のサファイアブルーと右目の琥珀色――を輝かせながら、不敵な笑みを浮かべて尻尾を揺らした。
そして、この世界で最も規格外な『共犯者』たちが、俺の宣言を聞き逃すはずがなかった。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Master!! You hit my heart! A festival lost to funding shortages? I’ll buy the whole festival right now! Wait for me, I’m flying to Japan!“(主よ!! 私の心を撃ち抜いたぞ! 資金難で失われた祭りだと? 今すぐ祭りを丸ごと買い取ってやる! 待っていろ、日本へ飛ぶぞ!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”Tears of the elderly cannot be ignored! I will release the absolute defense budget for this festival!“(老人たちの涙は見過ごせない! この祭りのために絶対防衛予算を解放する!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)=”Oh my God! I’ll bring a team of Hollywood set designers to build the best festival venue!“(なんてこと! ハリウッドの美術チームを連れて行って、最高の祭り会場を作ってあげるわ!)』
世界経済を牛耳るトップVIPたちが、画面越しに完全に理性を焼き切らせて大暴走を始めた。
チャット欄のスクロール速度が、一瞬にして光を超えた。
『うおおおおおおおお!!! 主の目に火がついたぞ!!!』
『オペレーション・フェスティバル発動キタァァァァ!!!』
『資金難(石油王と銀行家がバックにいる)』
『過疎化(ハリウッド女優と一千万人のリスナーがいる)』
『この村の夏祭り、規模が東京オリンピック超えるぞwwww』
おばあちゃん達が「えっ? えっ? なんだかアキヤさんのスマホがピカピカ光ってるけど……?」と戸惑っている横で、俺は静かに、そしてストイックに自分のタッパーを開けた。
中に入っているのは、完璧な水加減で炊き上げられた『冷やし玄米』と、自家製の『大豆ミートのピリ辛夏野菜炒め』である。
「よし、作戦行動を開始する前に、まずは指揮官のエネルギー充填だ」
俺は世界中の大富豪たちが数億円規模の予算を動かして日本へ向かおうとしているこの大パニックの真っ只中で、一切の表情を崩すことなく、大豆ミートを玄米の上にバウンドさせて咀嚼し始めた。
「お、お兄さぁぁん!! なんかVIPの人たちがプライベートジェット手配し始めましたよ!? なんでこんな国が動くレベルの騒ぎになってるのに、一人だけ真顔で大豆ミートのピリ辛炒め食べてるんですか!!」
小春ちゃんがパニックを起こしてツッコミを入れるが、俺は涼しい顔で玄米を飲み込んだ。
「当然だ。祭りの設営という超重労働に備え、良質な植物性タンパク質とカプサイシンを摂取し、基礎代謝を極限まで高めておく。いかなる時もルーティンを崩さないのが需品科の鉄則だ」
俺は冷たいほうじ茶で喉を潤すと、カメラの前に向き直り、キリッとした真顔でいつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。私が村のお年寄りたちの涙に心打たれ、粋なヒーローとして夏祭りを復活させようとしていると思われているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『この熱すぎる超展開で、まだ言い訳する気かこの男は!!!』
『主の限界言い訳タイム・夏祭り復活作戦編ww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは、村の伝統を復活させるとか、そういうエモーショナルな話ではありません。最近、敷地内の雑草が伸び放題になっており、広範囲の草刈りと整地が必要になっていました。そこで『祭り』という名目で労働力を集め、効率よく陣地を整備するための『極地サバイバルにおける労働力確保プログラム』のテストを実施するだけです。ええ、ただの『合理的な雑草対策』と『土地の有効活用』ですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
小春ちゃんが、持っていた麦わら帽子で俺の後頭部に完璧なスマッシュを見舞った。
「極地サバイバルの労働力確保ってなんですか!! 雑草刈るためだけに石油王さんと銀行家さんをドバイとスイスから呼び寄せるバカがどこにいるんですか!! おばあちゃん達の涙見て、お兄さんの心の中の熱い何かが爆発したんでしょうが!! 素直に『俺が最高の夏祭りを見せてやる』って認めなさいよ!!」
『小春ちゃんの麦わら帽子スマッシュ炸裂www』
『極地サバイバルにおける労働力確保(ただの夏祭りの準備)』
『合理的な雑草対策(国家予算レベルの祭り会場設営)』
『適応力バグおじさん、ついに村の祭り復活まで草刈りのせいにするww』
俺の理不尽極まりない限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのツッコミに、おばあちゃん達の流していた切ない涙は完全に吹き飛び、一千万人の視聴者たちは大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ふふっ、最高の夏になりそうね)』
シロが、俺の足元でゴロゴロとご機嫌な喉を鳴らした。
「……まぁ、理由はどうあれ。陣地が綺麗になって、ついでに美味い飯が食えるなら悪くない」
俺は苦笑いしながら、十勝の青く澄み切った夏の空を見上げた。
限界集落の消滅した夏祭りが、世界一バグったスケールで復活を遂げる。
カネも人も規格外の『オペレーション・フェスティバル』の幕開けは、VIPたちの暴走と大爆笑に包まれながら、最高に熱く、そして騒がしく始まろうとしていた。
コメント
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もうね、冒頭のおばあちゃんたちの「提灯の灯り、死ぬ前に見たかった」って台詞で一気に泣きそうになったのに、次の瞬間には「雑草対策です」って顔で大豆ミート食べ始めるお兄さんに笑わされたよ。需品科のロジックで祭り復活を「労働力確保プログラム」って言い換えるところ、もう完全にバグってるけど、この不器用な優しさが大好き。小春ちゃんの麦わら帽子スマッシュも炸裂で、最高の回だった!