テラーノベル
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深夜三時半過ぎ、黒兎の足ダンで起こされて変な霊体の処理を三十分かけて行った。
前日も同じく無駄な労力を使って夜間ほとんど眠れず寝不足だったので、四時過ぎには気絶するように即寝した。
夢の中で、私は見知らぬ男女三人と昔ながらの喫茶店でお洒落なメロンソーダを飲んでいた。
固めのプリンやナポリタン、珈琲がテーブルに乗っている。
この三人と出会ったのはつい先刻。喫茶店から近くにある小さな公園だった。
女二人が既にいて、喉が乾いたから喫茶店行こうと話している所に、たまたま私も立っていただけ。
どうして公園にいたのかも分からない。
「暇なら一緒にどう?」と声を掛けられて、何もすることがないので初対面だけど一緒に着いて行った。
時間にして夕暮れ。周辺の街灯が点灯し始めた。
喫茶店の前には、男が一人いた。
彼も彼女達の知り合いだったようで、流れで相席することになった。
皆きっと生身の私よりは若く、二十代前半くらいだったと思う。
そして話の冒頭に戻り、注文した料理がテーブルに並んだ。
女二人が携帯を取り出す。これまた一昔前のガラケーだった。
「ブログに載せよ」
片方の女がそう言ってガラケーでカシャカシャと撮影する。
……ブログ?Xやインスタならまだ分かるけど、今更ブログ?また若い人達の中で流行っているのかな?
よく見たら女二人の服装も、平成初期に流行ったものだった。男の服装が平成初期に流行ったものかどうかは、覚えていないのでよく分からない。
昔流行ったものが再ブームなんて話はよく聞くから、平成の再ブームかなぁと気楽に考えながらメロンソーダを飲む。 普通に美味しい。
食器もレトロでお洒落だった。
注文した料理を皆が食べ終える頃、改めて店内を見回した。
穏やかなオレンジ色のランプが店内を照らしている。大きな窓と濃い色の木のテーブルと椅子。
店内は結構賑わっていて、子供から大人まで年齢層も幅広い客層だった。メニュー表にはお子様ランチもあった。
ふと入口に視線を向ける。入口付近にどう見てもプリクラの機械が一台ある。かなり古そうだ。あんなに目立つのに、入店時には気付かなかった。
黙って見ていたら、女も気付いたようで「プリ機あんじゃん」と声を上げた。「皆で撮ろ!記念に!」と言われ、懐かしいプリ機に心踊った。
やっぱり古い機種らしく、今みたいな盛り方はできないみたい。四人で機内に入ると結構狭かった。
何枚か撮った後で、四枚選んでね!と音声が流れた。各々選ぶと落書きブースへ移動してね!の音声が流れ、それに従い移動する。
落書きブースはやはり狭いので、二人はみ出る形だった。
女二人が落書きしてくれて、私と男は横からそれを眺めていた。
ふと、途中で男一人だけ写ったプリクラに異変があった。プリクラの中の男の顔が、どんどん歪んでいくのだ。
目を擦っても見間違いではなく、本当にぐちゃぐちゃになっていく。女二人は気付いていないのか、楽しそうに落書きを続ける。
はっとして眺めている男の顔を見上げると、前髪に隠れているが徐々に顔が溶けるように歪んでいた。
驚いてプリ機から離れると、 「どうしたの?」と女が声を掛けてくる。
恐る恐る再度、落書き中のプリクラを覗くと、今度は女二人の顔も歪んでいた。
歪む、溶ける、というニュアンスが正しいのか分からない。ただ、潰したようにぐちゃぐちゃになっていく。
女二人の顔に視線をやると、男と同様にぐちゃぐちゃになり始めていた。何かおかしい。
「ーーーあっ、落書き時間終わっちゃった」
片方の女が残念そうに呟いてペンを置いた。己の顔が崩れ始めていることには全く気付いていないようだ。
後退りする私の目の前で、カタンと音を立てて完成したプリクラが出てきた。咄嗟に拾って、変な声が出た。
私以外全員、顔がぐちゃぐちゃの血塗れだ。女のうち一人は首が折れていた。もう一人は頭まで潰れて損傷が激しい。男の腕はおかしな方向に曲がって折れ、顔には硝子の破片が刺さっていた。
そして何より、彼らの頭の上に落書きで【死因:転落死】と書かれていた。
何にせよ落書きに死因を書く奴はおかしい。明らかに不謹慎である。
プリの中の私の頭上には【死因:】までしか書かれておらず、内容は分からない。
そしてその横に、女二人は二十三の数字が添えられている。男は二十八と書いてあった。
咄嗟に浮かんだ。これは……享年?
「これって……」と振り向けば、もう彼らの姿はそこになかった。
彼らの姿どころか喫茶店も、周囲にあった住宅街も全てなくなっていた。
あるのは霧に包まれた空間と、所々にひっそりと佇む街灯だけ。
ただ最後に、霧の中でふわりと空間を漂うように片方の女の声が聞こえた。
「……うちに帰りたかったなぁ」と。
ただの夢だったのか、不慮の事故で亡くなった人達が集まる場所に呼ばれたのか、全く分からない。
藤塚 太陽
31
けだま15号🍓🐾໊
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コメント
1件
うわ、これめっちゃ怖かった…!最初の喫茶店のレトロな雰囲気から一気にホラーになる展開、本当に巧いなって思いました。特にプリクラで顔が歪んでいく描写がじわじ来て、最後の「帰りたかったなぁ」がすごく切なくて…。ただの夢なのか、霊的な何かだったのか、その余韻も含めてすごく好きです。雪さんの描くダークな世界観、毎回丁寧で惹き込まれます🌙