コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
綺麗に磨かれたガラスに反射された、私は、口から血を流し、真っ赤になっていた。
目を覚ました時、そこは名も知らぬ町の、どこかの家のような所にいた。視界が異様に暗いし、視野が狭いような。でも、なぜか全体を見渡せる。
違う位置から、私の姿が見えた。硬くて黒い、熊の爪のようなものも着いている。まるで蜘蛛のようだった。八本の足は自由に動かせる。
だが、目は生前のままだった。少し灰色がかった、人間とは思えないような瞳。この目のせいで何度も虐められたこともある。
なぜ、今こんなことを思い出すのか。
窓から陽の光が差し込むのに気がつく。私は陽に当たっては駄目だ。そう思った。
こんな姿だから誰かが私の事に気が付き、この世のものでは無い化け物として、殺すかもしれない。
またあの痛く辛い思いをしたくない。そんな思いで私は、自分の事を隠した。ずっと、ずっとずっと、何年も何十年も、深い眠りについた。
私が目覚めたのは、まだ生き生きと働いていたあの頃から、何年も経った頃だと、そう感じた。
目の前は黒が続いている。体も全く動かない。その代わり、様々な情報が入ってくる。近くにいる人間の鼓動、足音、心音、声。それは遠く、さらに遠くまで聞こえてくる。私自身の体はもう動かない。何か違う物が、私の思った通りに、素早く動く。
何年もかけ、蜘蛛のような姿から形を変え、液体となり、この町全体へ私の細胞が広がり、少しずつ、少しずつ、この町を喰っていった。
私の心臓は、いくつもあり、1つ1つ動いている。ドクン、ドクンと正常に。痛みも感情も何も湧かない。思うとするなら、
_________私をこの暗闇から解放してほしい。もう、いい。いいから。
だれでもいいから、お願い。
人は私を、鬼と呼び、恐怖する。危険区域と呼ばれることもある。そして、私の深核。…心臓を壊せ、と。