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海月
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ありんすさん、第10話読みました!ラウルがステラを「あの人は親なんだ」って語る場面、じんと来ましたね。義母でありながらここまで想える関係、たった半年の積み重ねとは思えない温かさでした。ヨハンナが拳銃を下ろす仕草も、ああいう「苦手」って言いながら心動かされる感じ、好きです。爺やのイマジナリーファミリー炸裂には笑いました(笑)。続き、アジトに乗り込むんですかね? ドキドキです…!
『ねぇねぇラウル、追いかけるって言っても賊がどこにいったのかもわからないなら無理じゃない?』
「いや、俺達の屋敷からこの市場は直線だ。絶対にここを通っている。目撃者がいるはずだ」
『街の人、さっきみたいに非協力的なんじゃない?』
「もう手段は選ばない」
俺は夜の市場に入り、周囲を見渡す。
店じまいするところもあれば、まだまだ酒を提供している屋台もある。
「ラウル様、この爺やが聞いてまいりましょう」
「待って……あそこにしよう」
俺は活気のある市場から少し外れた、路地裏にあるフルーツ屋台の前に立った。
パイナップルみたいなトロピカルなフルーツが並ぶ屋台には、日焼けした太ったおばちゃん店主の姿があった。
「いらっしゃい。あら、あんたまた来たのかい……」
「聞きたいことがあります」
「ウチはフルーツ屋だよ。情報屋じゃない。あんたと話してるとこ見られると、のけ者にされちまう」
予想通り邪険に扱われる。
俺はグダグダ言う前に、屋台に金貨を一枚置く。
店主は横目でチラリとそれを確認すると、顔をしかめたまま何も言わなくなった。
「女性を連れ去った賊を探しています。5人から10人くらいの規模で、馬車を使ってます。服装は黒で統一されていて、襲った一味はヴェノムタランチュラという反乱軍を名乗っているようです」
「……島の北側の入江付近にアジトがある。なんの変哲もないボロい漁師小屋さ」
「ありがとう」
「待ちな。入江には海賊が出る。あんたなんかいいカモだよ」
「ありがとう。それでも行かなきゃいけないんだ」
俺は金貨をもう一枚上乗せして、路地裏から出る。
「さすが見事に情報を聞き出せましたなラウル様!」
『ねぇねぇラウル、なんであのおばちゃんに聞いたの?』
「この市場はムカム商会っていう組合いが牛耳ってて、その商会に入ってない商人は路地裏に追いやられるんだ」
『商会に入れてもらえないの?』
「上納金がいるんだって。あのおばちゃんはそれを貯めてる最中で、金のためなら情報を売ってくれると思った」
『なるほどね』
俺達は入江を目指して馬を走らせる。
潮の香りがする入江に到着すると、馬を降りて岩場を進む。
「ラウル様、このようなことは言いたくないのですが、わたくしとラウル様だけでなんとかなるでしょうか?」
「なんとかするしかない」
いざってときはナハトに股間を爆発させてもらうしかないだろう。
「もしここに海賊団が現れたら……爺のただでさえ短い寿命が……」
「そういうこと言うな。お前の役目は俺を励ますことだろ」
何があっても「大丈夫ですぞ、ラウル様! この爺がついておりますぞ!」っていうのがお前のポジションだろうに。
「ラウル様、もし爺が海賊に殺されたら、棺桶は是非白バラで飾っていただきとうございます」
「その時は多分俺も殺されてるから無理だ」
なんとか爺やよりかは長生きしたいなと思いつつ岩場を探すも、全然漁師小屋が見つからない。
まさかガセ情報をつかまされたか? と思っていると、急にホルンの音が響いた。
何かと思うと、爺の嫌な予感が当たり海の向こうから黒い帆を立てたデカい船がやってくる。
ドクロの旗が掲げられており、あれが一目で海賊船とわかった。
「まずい」
海賊船から小型ボートが降ろされ、水着姿の海賊が入江を目指してやってくる。
その数4艇。それぞれに6人ほどの武装した海賊が乗っている。
「これバレてるよな」
「はい。まっすぐこちらに来ます。ラウル様、ここは一旦逃げの一手かと」
「俺もそう思う」
俺達は慌てて岩を登るも、背後からライフルの銃声が響く。
俺のすぐ隣の岩に着弾し、岩肌にヒビが入った。
「終わってる! こんなんでヘッドショット食らって終わりとか絶対嫌だぞ!」
死んでたまるかとシャカシャカと岩を登る。
「ナハト、さっきみたいに股間爆破できないか!?」
『う~ん、見渡した限り全員女なんだよね~……僕の魔法って、男専用みたいなとこあって女の子にはあんま効果ないんだ』
「乳房爆破みたいなのはないか?」
『ないね』
くそ、こうなったら自力で逃げるしかない。
しかしながら所詮はデブとジジイ、あっさりと海賊団に捕まってしまう。
ロープで体を巻かれた俺と爺は、背中合わせで砂浜に座らされていた。
そこに船長らしき赤髪の女が前に立つ。
日焼けした肌にとんでもなくたわわな胸。ノーブラらしく、汚れが目立つ白のブラウスには突起が浮いている。
鋭い目つきで、好戦的な表情をしている。俺が想像する片手が鉤爪になった海賊とは少し違い、装備がちょっとボロい。
周囲を取り囲んでいる船員たちも、皆武器が鉄パイプやナイフみたいなしょぼい武器を装備しており、格好は黒の水着。
年齢は恐らく船長含め全員10代後半。
海賊というより、海でヤンキーにからまれたみたいになっている。
船長は腰から黒ずんだ木製の柄と、鈍く輝く真鍮の銃身を持つ古びたフリントロック式のピストルを取り出し、俺の額に合わせる。
「あたしはレッドシャーク海賊団のキャプテンヨハンナだ。あんたがラウル王子だな?」
「ああ、その通りだ。お前ら金目的か?」
「違うね、ある組織にあんたの捕縛を依頼されたのさ」
「タランチュラか」
「その通り」
「あいつらの10倍金出すから、こっちに寝返らないか?」
「嫌だね。あたしらは世の中の理不尽をぶっ飛ばす、正義の海賊さ。悪の下僕にはならない」
「お前も正義かよ。この島は正義の味方が多いな」
「……おいお前、さっきからあたしの乳と会話するのはやめろ」
いや、これがなかなか目が逸らせない、ビッグボインなのだ。
恐らく100センチオーバーは間違いないだろう。
「あんたら悪人を今から連れて行く」
「悪人ってな、いきなり屋敷に押し入ってきて、俺を殺そうとした上に、母を拉致して連れ去ったんだぞ! どっちが悪人なんだよ!」
「あぁ、あそこにいた女、お前の母親かよ……。ん? ちょっと待て、明らかに年齢があわないだろ。エルフでもない限り、こんなでかい子供がいるわけがない」
「それは……いろいろありまして」
俺はステラが義母であり、引きこもりの自分を特にメリットもないないのに辛抱強く世話してくれた事を伝える。
「ってわけで、ちゃんと話したのはここ半年くらい。俺がうっせぇって言ってもずっと微笑んでて。初めてママ上って呼んだら感動で失神するほどだった。実の母親を知らない俺からすると、あの人は親なんだよ」
ヨハンナは話を聞いて、複雑な表情を浮かべると拳銃を下ろす
そして唇を尖らせなが、後頭部をガリガリとかく。
「あ、あたしはそういう親子の絆みたいな話苦手なんだよ。殺せなくなっちまうからやめろ」
「カシラ、悪人に情けかけちゃダメですって」
「わーってるって」
部下にたしなめられ、ヨハンナはもう一度拳銃を握り直す。
すると爺やが声を荒げる。
「やるならこの爺からやりなさい! この老い先短い哀れな老人の命を無慈悲に摘み取るがいい! わたくしには仕送りしてる娘と孫がいて、毎年爺が帰ってくるのを心待ちにしているが、殺せばいい! 今年5歳になる孫は爺が死ねば悲しみに泣き続けるだろうが、それでもこの爺の首を跳ね飛ばせばいい!」
さすが爺、なんて嫌な精神攻撃を仕掛けるんだ。
「ぐぐぐ……」
「しっかりしてください頭!」
「そうですって、どうせあのジジイは近いうちに棺桶に入るんですから!」
いいぞ、仲間内で揉めてる。俺はこっそり爺やを褒める。
(ナイス爺や。爺やに家族がいたなんて知らなかったよ)
(いえ、ラウル様。爺は独身でございます)
(え?)
架空幻想家族ってこと?
どうやらさっきのセリフは、老い先短いジジイ以外全部ウソらしい。
「あたしは頭だ、こいつらを食わせてやんなきゃいけねぇ……悪く思うな。アジトに連れて行くぞ」
砂浜から立たされ、背後から拳銃を突きつけられながら歩く。
道中、ナハトがこっそりと話しかけてくる。
『僕が助けてあげよっか?』
(いや、このままアジトまで案内してもらう)