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#続かないとオーバーブロット
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「美と誇りの頂へ」
–ポムフィオーレ寮へようこそ、美しさの本質を問う章–
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〔ある日の放課後・鏡の間〕
ナイトレイブンカレッジの鏡の間に、学園長クロウリーの声が響き渡る。
「やあ、君たち。実は急ぎでお願いがありましてね! 今度の学内マジカルシフト大会、ポムフィオーレ寮の運営協力を頼みたいのです!」
ユウ:「えっ、マジカルシフトの大会? また面倒ごとじゃないよね……」
エース:「運営ってことは、準備係かよ~」
グリム:「働いたらご飯が豪華になるとか、そういうのか!? オレ様それならやるぞ!!」
デュース:「ポムフィオーレって、確かヴィル先輩が寮長だったよね」
フェイドは仮面の奥で静かに微笑みながら、
「美と規律の寮ですね。……興味深いです」と、落ち着いた声で呟いた。
⸻
〔翌日・ポムフィオーレ寮前〕
エメラルドの森の中にそびえる、荘厳で美しいポムフィオーレの城館。
その前で、一行は立ち止まる。
グリム:「すっげぇ……お城みたいだぞ!」
エース:「あー、絶対ここ、めちゃくちゃうるさい寮だぞ。身だしなみとか、変なルールありそうな予感しかしない」
デュース:「とにかく、失礼のないようにしないと……」
フェイドは、リボンを結び直しながら目元に柔らかな笑みを浮かべる。
「“秩序”と“美学”の空間。
さて、どれほど厳しく、どれほど眩しいのでしょうか……」
そんなフェイドのつぶやきに、ユウは少しだけ緊張しながらうなずいた。
〔ポムフィオーレ寮・大広間〕
「遅いわね。こちらはあなたたちを迎える準備、整えていたのだけれど」
現れたのは、完璧な姿勢、整えられた髪、そして冷たくも凛とした目をした美しい寮長――ヴィル・シェーンハイト。
「あなたたちに期待しているのは、従順さと美しさ。
乱れた身だしなみや姿勢でここを歩くことは、許さないわ」
ルーク:「おやおや、ヴィル、少し厳しすぎるのではないかい?
ほら、エースくんがすでに縮こまっているよ」
エース:「 なんかもう、帰っていい……?」
エペル:「……また誰かが怒鳴られてる……」
グリム:「オレ様、まだ何もしてないぞ!? なんで睨まれなきゃいけないんだ~!!」
フェイドはヴィルに向かい、ゆっくりと一礼した。
「ご挨拶が遅れました。私はオンボロ寮より参りました、ネメシスと申します。
どうか、本日はご指導のほど、よろしくお願いいたします」
ヴィルはその姿を一瞥し――目を細めた。
「……あなた、なかなか悪くない態度ね。気配りと礼節、それに“仮面”もまた、美のひとつ」
ルーク:「美の探求者よ……我が寮に、良い風が吹いてきたようだ!」
「規律と鏡と、仮面の奥」
–美しさは痛みと共に、誇りの中に在る–
⸻
〔ポムフィオーレ寮・訓練室〕
朝の光が磨き込まれた大理石の床に反射し、規律正しい気配が空間を満たしている。
アウルたちは、ヴィルによってマジカルシフト大会のサポートチームとして組み込まれ、まずは寮の「姿勢指導」を受けることになっていた。
「はい、背筋を伸ばして。顎を少し引く。手の角度はこのくらい――」
ヴィルは完璧な姿勢で、片手を挙げる。
「……あなたたちの立ち方では、観客に信頼を与えられないわ。
“美”とは、外見だけではなく“構え”のことよ。覚えておきなさい」
エース:「いや、俺たちって応援チームじゃないよね!? これ必要か!?」
デュース:「……でも、こういうのも大事なのかも。カリム先輩のときも、礼儀の差があったし……」
グリム:「オレ様、背筋伸びないんだぞぉ……!」
フェイドは一歩前に出て、ヴィルに向かって頭を下げる。
「お言葉、身に沁みます。
私も、規律を形にする姿勢というものには、深い興味がございます」
ヴィルはフェイドの整った所作を目で追い、ふ、と僅かに表情を緩めた。
「……仮面の中の表情が見えないのは、興味深いけれど……
それでも、あなたは“保っている”のね。立ち姿が。
中身を知りたくなるという意味では、悪くないわ」
「過分なお言葉です。仮面の下にも、美しき意志を忘れず在れればと――」
その時、ヴィルがすっと手を挙げて制した。
「……その言い回し、少し気取ってるわよ。もっと自然に言えないの?」
「……これは私にとっての“素”です。どうか、お許しを」
「……ふん。まるで舞台俳優のようね」
ルーク:「実に“演者”たる美しさ。仮面の奥に燃える意志こそ、芸術だ!」
〔その後・ポムフィオーレ寮・食堂〕
休憩時間。
エースとデュース、グリム、ユウ、フェイドは小さなテーブルを囲んでいた。
エース:「ふぁぁ~、なんか変な疲れ方する寮だなあ……
正座でサラダ食わされるの初めてだったわ……」
デュース:「けど、ヴィル先輩って……一貫してるよな。言ってること、やってること全部が“美”に繋がってる気がする」
ユウ:「うん……怖いけど、かっこいい。ちょっと羨ましいかも」
グリム:「オレ様も将来“美獣”になるからな! 今日から美食生活だぞ!」
フェイド:「……今日の夕食が“カブのカルパッチョとザクロの冷製スープ”で良ければ、ですが」
エース:「美って胃袋にも厳しいな……」
みんなが笑い出す。
その空気に、フェイドは少しだけ目を細めた。
仮面の奥にある表情は――“安堵”と“静かな喜び”。
「エペルという名の野生」
–繊細な見た目の奥で、牙を隠す少年–
⸻
〔ポムフィオーレ寮・廊下・夕刻〕
フェイドが静かに本棚を整理していると、背後から足音。
ふと振り向くと、そこに立っていたのは、ポムフィオーレ寮の1年――エペル・フェルミエだった。
「……あんた、オンボロ寮から来たって聞いたけど……あの仮面、何なの?」
フェイドは本を閉じ、柔らかな声で答える。
「私にとっては、“意志”の象徴。
他人に形を委ねることなく、自分の“核”を見失わないためのもの、でしょうか」
エペルはふっと顔を背ける。
「へぇ……なんか、小難しいね」
「僕、そんなの気にしたことなかったけどさ。
……最近ずっと、誰かの“理想”押しつけられてる気がして」
「ヴィルさんのこと、でしょうか」
「……言うなよ、そんな名前。
僕、あの人に見た目も、言葉も、歩き方まで矯正されてさ……
こんなの、本当の“俺”じゃねぇよ」
フェイドは少しだけ表情を変え、ゆっくりと近づいた。
「あなたが“自分”を失いたくないのなら――それは、正しい願いです」
「でも……」
「けれど、それを誰かに伝えなければ。
“仮面”は、ただの隠れ蓑にもなります。
本当の自分を、誰にも見せずに生きていくのは……とても孤独なことですから」
その言葉に、エペルはふと目を見開いた。
フェイドの仮面は、静かに彼を見つめていた。
⸻
〔夜・ポムフィオーレ寮・大広間〕
その夜。
夕食後の自由時間、エペルはひとりソファに座っていた。
そこへ現れたのは、ヴィルだった。
「明日のマジカルシフトの練習、スローランがまだ未熟よ。フォームを矯正するわ」
「……またかよ」
「その口の利き方、直しなさい。
あんたは“ポムフィオーレ寮の一員”なのよ。
あんたの見た目はとても華奢で可憐。それを活かしてこそ――」
その瞬間。
「……俺は、花じゃねぇ!!」
エペルの怒声が響いた。
「俺は、田舎の果樹園で育って、鍛えた体でバリバリ働いて……!
弱くねぇし、守られたいなんて思ってねぇ!」
「……言ったわね」
静寂が落ちる。
エペルは肩で息をしながら、言葉を続ける。
「ネメシスに言われたんだ。
本当の自分を、誰にも言わないままじゃ、孤独なままだって」
ヴィルの目がわずかに揺れた。
フェイドは、廊下の影からそっとそれを見ていた。
⸻
〔深夜・ポムフィオーレ寮・屋上〕
屋上でひとり風にあたっていたエペルの元に、フェイドが現れる。
「あなたは、とても強い方ですね」
「強くねぇよ……ただ、やっと言えただけ。
でも……なんかちょっと、スッとした」
フェイドはそっと、夜風の中で微笑む。
「“美しさ”とは、与えられるものではなく、“選びとるもの”……
あなたがその道を、自分の言葉で選び取ったのなら、それが真の強さだと、私は思います」
エペルは、夜空を見上げてぽつりと言った。
「……なぁ、
名前、ネメシスっての、本名じゃないだろ?」
「…………」
風が吹き抜けた。
フェイドは、しばらく沈黙したあと――
「それも、秘密です」
と、静かに微笑んだ。
「美しさの価値、誇りの意味」
–譲れない美と、仮面の奥に秘めた誓い–
⸻
〔ポムフィオーレ寮・朝の練習場〕
冷たい朝の空気の中、ヴィルの指導は今日も厳しかった。
マジカルシフト大会に向けた連日の練習。
「その走り方では衣装が乱れるわ。
あなたたちが何者か以前に、まず“美”であるべきなの」
エース:「はあ!? 走り方と美しさが関係あるってどういうこと!?」
デュース:「ヴィル先輩の言ってること……確かに、筋が通ってる気もする」
ユウ:「うん。なんだろう……舞台の上に立つみたいな感じ?」
グリム:「オレ様の走りはワイルドで美しいぞ!!(どやっ)」
フェイドはヴィルの指導を黙って見ていた。
その目は冷静に、しかしどこか――“懐かしさ”を含んでいた。
「……ネメシス。あなた、見ているだけで何も言わないわね」
「私は、観察することで多くを学ぶ質です。
“指先の震え”すら、目に映すものとして」
「皮肉のつもり?」
「いえ――称賛です。“細部”にこそ、理念が宿る。あなたの教えは徹底されている」
ヴィルは一瞬、目を伏せた。
「……あなた、何者なの? 仮面の奥、隠しすぎじゃない?」
フェイドは微笑を保ったまま、答えを返さない。
⸻
〔昼・ポムフィオーレ寮・応接間〕
ヴィルは一人、鏡に向かっていた。
「……昔、私は“ただの美少年俳優”だった。
期待され、型に嵌められ、それでも評価を得られなければ、ただ消えていくだけ」
彼は鏡に映る自分に問いかける。
「“美”とは、何なのかしら。
強さの象徴? それとも弱さを隠す仮面?」
その背後の扉が静かに開く。
「――答えは、ひとつではございません」
「……盗み聞き、趣味なの?」
「偶然です。……ですが、共感するところが多くありました」
「あなたも“仮面”を被ってる。私と同じよ」
「……けれど、私は“それでも舞台に立つ者”を、美しいと思います」
一瞬、ヴィルの目が揺れる。
フェイドは小さく一礼して去っていった。
その背中を、ヴィルは長く見つめていた。
〔その夜・オンボロ寮〕
久々に帰ってきたフェイドとユウ、グリム、エース、デュースは、
オンボロ寮の小さな暖炉を囲んでいた。
エース:「ポムってさ、ほんとに全員気を抜いたら怒られそうだよな……」
デュース:「でも、なんか……ヴィル先輩って不器用なだけかもしれないな」
グリム:「ネメシス、ヴィルのとこでなんかあったのか?」
フェイドは少し考えて、首を振った。
「いえ。ただ――“鏡の中の自分”に問いかけることは、私にも覚えがありますので」
ユウ:「ネメシス……」
暖かい灯りの中。
静かに揺れる火のように、フェイドの心にも何かが灯っていた。
「舞台の裏側、真実の仮面」
–美の裏にあるのは、誰にも見せない涙か、誇りか–
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〔夕方・ポムフィオーレ寮・控えの間〕
練習後、ヴィルは一人、鏡の前に座っていた。
整えられた髪、完璧な化粧、乱れひとつない制服――
だが、その目はどこか遠くを見ていた。
「どうして私が“美”に縋るのか、誰にも話したことはないわね」
「……話してくださっても、よろしいのですよ。
言葉にすれば、救いになることもございます」
静かに入ってきたフェイドが、椅子の向かいに腰を下ろす。
ヴ「あんたには、言ってもいいかもしれない。
あなたの仮面の奥にも、同じものが見えるから」
「……同じ、もの?」
ヴィルはそっと視線を落とす。
「幼いころから、“美しさ”だけが私の価値だったわ。
父が有名な俳優で、私は“その美貌を受け継いだ子”として育てられた」
「けれど、どれだけ努力しても、
“父の遺伝のおかげ”“容姿だけの俳優”と陰で言われたわ」
フェイドはそっと目を伏せ、低く穏やかに答える。
「……価値を他者に決められることほど、空虚なことはありませんね」
「だからあたしは、誓ったの。
“美しさ”とは、造形だけでなく、態度・努力・誇り――
“自らの意志”で創り上げるものだと証明するって」
「あなたの美しさは、完成された“意思”ですね。……私は、そう思います」
「あんたも、“選んで”仮面を被っている。そうでしょう?」
フェイドは微笑んだまま、ほんの少しだけ――
仮面の縁に指を添える。
「ええ。私は、“正体”を知られぬように隠しています。
でもそれ以上に、“誰かの命を守るために仮面を選んだ”のです」
ヴィルは静かに瞬きした。
「……ずいぶんと、深い理由ね。
……少し、あんたが気になってきたわ。もっと知りたくなった」
「では――私も、あなたの中にある“傷”と“強さ”を、知りたくなりました」
ふたりの視線が交わった。
まるで、舞台の上。
主役と対等なもう一人が、ようやく台詞を交わす瞬間のように。
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〔その夜・オンボロ寮・暖炉の前〕
フェイドが戻ると、グリムが毛布をかぶってうとうとしていた。
グリム:「ん……ネメシス、今日もおつかれだぞ……って、ねむ……」
フェイドはそっと笑ってグリムに毛布をかける。
エース:「お、帰ってきた。おつかれー。なんかヴィル先輩と長話してなかった?」
「ええ、少し。……舞台裏の話を、少々」
ユウ:「……ネメシス、少し柔らかくなった気がする。最初の頃より」
「そう見えるのは、あなたたちが変わらず“私を受け入れてくれる”からでしょう」
暖炉の火が、やさしく揺れる。
その光が、仮面の奥の素顔を、ほんの少しだけ照らしていた。