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#溺愛
桜咲かな
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#溺愛
桜咲かな
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コメント
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わあ、第1話からすごく引き込まれました!紫一色の世界観が美しくて、リィラの「近寄らないで」と言いながらも青年を助ける優しさにじんわりしました。センティの銀髪とブルーの瞳の描写も素敵で、この後の二人の距離がどう変わっていくのか気になります。毒の里だからこその危うさと温かさが混ざった空気感が好きです。続きが楽しみです🌷
そこは国ではなく、街でもない。人里離れた森の中に奇妙な『里』があるという。
なぜ奇妙なのか、それはその色。木々を飾る葉も、野に咲く花々も、全てが『紫』一色で埋め尽くされていた。
この地に生える植物は全て毒性を持つために、人も魔物も近寄らない。
ここは、都市伝説のように存在が噂されるだけの不確かな場所、毒の里『ポワゾン』。
その里の住民は、たった一人。毒の花と同じ色である紫の髪と瞳を持つ娘『リィラ』だけであった。
その日、里を出たリィラは近くの森の中で木の実を拾っていた。片手に小さな籠を持ち、足元だけを見ながら歩いている。
昼間なのに森の中は静かで、動物の鳴き声はおろか虫の音さえ聞こえない。それは全ての生物がリィラを避けているからであった。
その時、近くの木々が騒がしい音を立てて揺れ動いた。
(近くに……誰かいる?)
リィラが顔を上げて前方の木に目線を合わせた瞬間に、木々の間から何者かが勢いよく飛び出してきた。
「わぁっ!!」
「きゃあっ!?」
全力で森の中を駆けて来た男性がリィラと正面衝突した。男性の勢いに弾き飛ばされたリィラは地面に尻餅をついた。
「あっ、ごめん、大丈夫!?」
男性は息を切らしながら片手を伸ばして、地面に座ったままのリィラを立たせようとする。
リィラが見上げて目を合わせると、相手は20歳くらいの若い青年であった。銀色の髪と美しいブルーの瞳に目を奪われる。
息を呑むほどに秀麗な顔立ちの青年は白いマントに全身を包んでいて、その上質な布地と装飾から高貴な身分だと推測できる。
リィラは差し出された青年の手に触れる事なく立ち上がると、逆に青年に詰め寄る。
「あなたこそ大丈夫なの? 私とぶつかって痛くない? 苦しくない? 息してる?」
「……え? 僕は大丈夫だよ……?」
青年は少し引きながら苦笑いをする。大怪我をするような衝突ではないのに、まるで命の心配までされているようだったからだ。
見つめ合ったままの数秒の沈黙の後、リィラはすぐに数歩後ろに下がって距離を取った。
「……だめ、私に近寄らないで!」
詰め寄ってきたのはリィラの方なのに、なぜか拒絶されてしまった青年はまたも苦笑いをするしかない。
その瞬間、近くから獣の咆哮が聞こえてきた。だんだんとこの場所に近付いてきている。
青年はハッとして背後の森を振り返った。
「そうだ、魔物に追われていたんだ。ここは危険だよ、君も早く逃げた方がいい!」
「魔物……分かった。私についてきて」
リィラは青年に背を向けると、反対側の森の中に向かって駆け出していく。
青年もリィラの背中を追って走り出すが、リィラの後ろ姿を見た途端に不思議と目を奪われた。
リィラは黒のロングドレス姿で、美しい紫色の長いストレートの髪を揺らしながら青年をどこかへと導いていく。
森の木々を抜けて、やがて視界が開けた場所に辿り着いた。
薄暗い森から一気に眩しい世界を目にした青年は、息を整えながら目を細める。
「すごい……森の中にこんな場所があったなんて」
目の前に広がるのは、紫一色の花畑。周囲を囲む木々の葉も紫で、視界に紫のフィルターでも乗せたかのような世界。
心を奪われたかのように一歩踏み出そうとする青年の前にリィラが立ちふさがった。
「……だめ、入らないで。花には毒があるの」
我に返った青年は正面のリィラに目を合わせる。リィラの瞳も花畑と同じ紫色で息を呑むほどに美しい。
「私はリィラ。ここは毒の里だから花には触れないで」
「毒の里だって? じゃあ、ここがポワゾンなんだね? 本当に紫色ばっかりなんだ」
「……そう。本当は誰も入れたくなかったけど」
毒の里というだけあって、毒性に覆われたこの地に魔物は近寄らない。それは生物の本能。だからこそリィラは青年をここへ導いた。
外敵から身を守るには最も安全な場所ではあるが、その毒性は普通の人間にとっては危険な場所でもある。
「あ、僕の名はセンティ。アディール王国の者だよ」
センティは礼儀正しく一礼をして名乗った。その気品溢れる容姿と所作から高貴な身分であることは一目瞭然。