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離婚します 第二部

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離婚します 第二部

45 - 第45話 綾菜の場合(19)

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2024年11月05日

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朝になり、健二は仕事へ出かけた。


ふと、壁のカレンダーを見たらもうすぐ結婚記念日だった。

去年までは、美味しい料理を作ったりケーキを買ったりしたけど、今年はそんな気分じゃないなぁ。


あ!結婚記念日のサプライズにいいことを思いついた!

ビデオレターとかいうんだっけ?

動画を撮って健二にプレゼントしよう。

もしも、本当にもう浮気してなかったらそれでいいけど、もし、してたら何かしらの反応があるだろうし。


よしよし、仕事のパソコンでどかーん!となるようにしとこ。

うまくいきますように。


健二がいつも仕事用に使ってるものと同じ赤いフラッシュメモリーを買ってきた。

それに、結婚記念日のメッセージと、合言葉としてあの車のナンバーを入れておく。

『合言葉は、27-31』

再生が終わったあと、一瞬、ブラックアウトして、あの写真が浮かぶようにしておく。

もちろん、ナンバーは拡大してわかるように。




目印として、小さく『A』と書いたそのフラッシュメモリーを、その夜、残業(?)から帰ってきた健二のパソコンバッグに入れた。


きっと、会社でこのメモリーを使おうとして開く時があるはず。

どこでこれを見るかわからないけど、見てしまったら健二のことだから、きっと態度に出るはず。


どんな反応をするんだろう?


私はいつも通りの態度でいる。

でも、ちゃーんと健二がしてること、知ってますよと、無言で圧力をかける。

気が弱い健二のことだから、その方がきっと怖いはず。


そう、このメモリーのメッセージにこめた意味は


『どこで誰と浮気しても、私は全部知ってますよ』


あー、これを見た時の健二の顔が見たい!






それから少しした夜。

お母さんから結婚離婚記念日ってことでお祝いしないかとLINEが届いた。

それにしても離婚までお祝いするなんて、お母さんらしい。

あの離婚は不幸なことではなくて、先を見たいい離婚だったのかもしれないな。


お祝いはいいけど、健二の都合も聞かないと…。

残業だと言ってたから電話をかける。

8回コールして留守電に変わった。

LINEする。


〈忙しいとこ、ごめんね。お母さんがね、離婚のお祝いと私たちの結婚記念日のお祝いを一緒にしようってLINEがあったの。週末の健二の予定はどう?〉


しばらく待ったけど、返信がない。

ふと、嫌な予感がする、まさか?


お母さんにLINEしておく。


〈電話に出てくれないから、LINEしたんだけど、返事がないの。多分、残業に追われてるっぽい!〉


ぴこん🎶

《まだ仕事してるんだ、健二君、頑張るね!》


〈最近よく働くから。手当てがなくても仕事が終わらないと帰ってこないくらいだよ〉


文字を打ちながら、違うなぁと思う。

たしかにサービス残業は減ったけど、今だって返事がないし。


…ということは、まだあのメッセージを見ていないのだろうか?

見ていたら、電話やLINEの返事はすぐしてくるだろうにと思う。


まだ気づいてないってことかなぁ。

どこでばらそうかなぁ?


それにしても、なんで返事がないんだろう?

着歴を何回も残しておくか。

スマホを開いて何事か!とびっくりするように。


そこまでやって、私は始めたばかりの仕事のテキストを開いた。

秘書検定もあるし、結婚式場での花嫁のお手伝いにも資格があるらしい。

今までなんとなく過ごしてたけど、新しいことを勉強するって楽しいとつくづく思う。

健二についての疑惑やイライラも、集中してると忘れてしまう。


私、もう健二のこと、好きじゃないみたいだ。




その日の夜、仕事から帰ってきた健二はなぜかよそよそしかった。


「おかえり!電話とLINEしたんだけど、見てくれた?」


LINEが既読になってないことは知っていたけど、わざと聞く。


「あ!ごめん、ほんと忙しくて、スマホも見てないや。なんだった?」

「お母さんからね、私たちの結婚記念日と離婚のお祝いを一緒にやろうって言われたの、今週末に。そのことを連絡したんだけど。電話にも出てくれないから、ちょっと心配しちゃった、何かあったかと思って…」


この時私は、ちょっとカマをかけるつもりで言ったこのセリフ。

実はこの時、健二はとても焦っていたようだ。

女と出かけたラブホテルで清掃員のお母さんと出くわしたのだから。

(そのことを私が知るのはずっと後だけど。)


「え?お義母さんから?」

「そうよ、なんで?」

「いや、なんでもない。今週末だよね?うん、いいよ、何も予定ないから。お風呂入ってくるね」


バタバタと逃げるように、浴室へ向かう健二。

やっぱり、あやしい。

私が仕込んだフラッシュメモリーに気づいたからかな?と思った。


急いで健二のパソコンバッグの中を確認する。

まとめてメモリーが入れてあったケースが開いていて、中身がバッグに散乱していた。

赤いフラッシュメモリーは一つだけしかない。


あれ?私が入れておいたヤツ、ないんだけど。

どこかに落としたのかな?誰かに見られたら嫌だな。

パタンと音がして、健二がお風呂から出てくる気配がした。

慌ててバッグを元に戻した。


「ご飯は後輩と食べてきたから、もう寝るね」

「あ、そう。じゃ、おやすみ」

「おやすみ」


メモリーのことを聞こうかと思ったけど、まだやめておいた。


それよりも今は、勉強がしたいと思う。

あれからもう一度仕事をした。

大きな家具店のオープニングセレモニーのお手伝いだった。

結婚して出産して今までずっと家庭にいたから、出会う人も行く場所もやることも全てが新鮮に感じる。

おぼえなければならないマナーやエチケットも、知らなければいけない常識もたくさんある。

でも、それを身につけて経験を積んでいくと、女性としてランクアップしていける気がする。


そうやって、キャリアを積んでステキな女性になって…

健二なんか、こっちから捨ててやる、そう決めた。










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