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9 ◇家電を購入
こんな風にして――――
2人は、クリスマスの日に炊飯器を買いに出かけたのだった。
「美代志くん、これにしよう? 3合炊き」
「はい」
レジで支払いを済ませる由香。
側にいる美代志に、箱詰めされてお買い物袋に入れられた炊飯器をすぐに
手渡す。
何と言うべきか思いつかず、美代志は無言で炊飯器を受け取る。
そして一緒に戸口へ歩き出すと、由香が明るい声で話し掛けてきた。
「美代志くん、これ私からの就職祝いだから……」
「あの……給料出てるので僕が払います」
価格を見ると今自分の財布に入っている額で払えそうだった。
「あれーっ、美代志くん今私が言ったこと聞こえなかったのかな~?」
「聞こえてましたけど、なんだか厚かまし過ぎて……」
「その代わり、私のお誕生日にはケーキを買ってね。
期待してるから……」
「分かりました。由香さん、ありがとうございます」
「炊飯器とお米があれば、食事は何とでもなるから百人力よ。
簡単なものでもいいから、なるべく自炊頑張ってみて」
「はい」
「……って言っても、冷蔵庫を買うまではおかずはお惣菜に頼るしか
ないかも。
来月美代志くんのお給料が出たら冷蔵庫も見に来よう?」
「その時も一緒に付いてきてくれるんですか?」
「もちろんよ」
◇ ◇ ◇ ◇
ちょうどこの日、美代志くんの初めての給料日だったんけど、お給料が
出たばかりで大きな買い物をいきなりするのは、彼自身が不安になりはしないかと
思い、私はそんな風に提案をした。
何せ、何も持たない彼だからその辺に気を遣ってしまった。
私の察する気持ちは、それほど外れてもいなかったようで――――。
彼もまた『ついでだから、今日冷蔵庫を買います』とも言わなかった。
ほとんど、お金の入っていなかった通帳に残高が増え、今夜はきっと安堵して
胸をなでおろすことだろう。
そして、その充足感が、彼にとって明日への活力となるはずだ。