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こんにちは、初の方は初めまして。零と申します。今回初めてノベルの方で書いてみました。簡単に言うと夏休みループ物語です。伏線回収や、誤字脱字、よく分からない部分もあると思いますが読んでくれると幸いです。
𝐬𝐭𝐚𝐫𝐭↓↓↓
第一話「ひぐらしの声が止むときに」 ―
夏休みの終わりを告げる、ひぐらしの声が、山あいの村に響いていた。
空は茜色、風はまだ温かく、だけどどこか、終わりの気配を孕んでいる。
「なぁ、まだ覚えてる?あの日のこと」
夕暮れの神社の石段に腰を下ろし、僕は隣にいる少女に問いかける。
風鈴のような声で、彼女は静かに笑った。
「うん。だって、何度目かの夏だもの」
少女の名前は 澪(みお)。
昔、祖母の家に預けられていた僕が、毎年のように出会った、夏の幻のような子。
田舎の小さな神社でしか会えない彼女に、いつからか僕は惹かれていた。
でも──
その夏、彼女はもうこの世にいないと知った。
「ねえ、もし、またやり直せたらさ」
僕が言いかけたとき、境内の鈴がひとりでに鳴った。
空気が揺れて、景色がぼやける。
「……また、始まるんだね」
そうつぶやいた澪の声が、遠ざかる。
気づけば僕は、ひとり、昼のまぶしい田んぼ道に立っていた。
セミの声、眩しい日差し、懐かしい景色。
――夏休みの初日だった。
そう、これはもう何度目かの「始まり」。
僕は何かを間違えて、この夏を、何度も繰り返している。
「もう一度だけ、あの日を」
願うように、祈るように、僕はまた澪に会いにゆく。
けれど、果たしてこの夏の終わりに、彼女は笑えるのだろうか。
それともまた──
時は、静かに巡りはじめる。