テラーノベル
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夜の街は、思ったよりもにぎやかだった。
金曜の夜だからか、駅前には人が多い。
俺は、るかの少し後ろを歩きながら、周りをなんとなく見てた。
るかは相変わらず、無言。
でも、逃げるでもなく、ちゃんと俺の横にいた。
(……どこ行くか、決めてねーな)
ふと思ったけど、別にいいか、とも思った。
適当に歩いて、
適当に、目についた店に入る。
ファミレス。
安いし、気楽だし、何よりうるさすぎない。
テーブルに向かい合って座ると、
るかはメニューを開きながら、ぼそっと言った。
「……パフェ、食べたい」
「……飯じゃねーのかよ」
思わずツッコむと、
るかは、ほんの少しだけ口元をゆるめた。
一瞬だけ。
すぐまた無表情に戻ったけど。
注文を終えて、
ドリンクバーを取りに行く。
るかが選んだのは、ココア。
俺はブラックコーヒー。
戻ってきたとき、
るかはスマホもいじらず、
ココアのマグを両手で持って、じっとしてた。
俺は、
何を話すか迷ったけど、結局、
「……悪かったな、あんとき」
とだけ、ぼそっと言った。
るかは、
驚いたみたいにぱちっと目を開いて、俺を見た。
少し間があってから、
小さな声で返した。
「……あたしも。ごめん」
ドリンクを一口飲んで、
るかは、少しだけ目をそらした。
たぶん、
顔を見られたくなかったんだろう。
俺も、
それ以上は何も言わなかった。
パフェが運ばれてくると、
るかはそれを前にして、ほんの少しだけ楽しそうな顔をした。
無言でスプーンを差し出す。
俺に。
「……いる?」
「……ちょっとだけ」
スプーンですくって一口。
思ったより甘くて、ちょっと笑った。
るかも、
俺の顔を見て、
すぐにそっぽを向いたけど――
耳が、ほんの少し赤かった。
言葉は少ない。
ぎこちない。
でも、
確かに、少しだけ戻れた気がした。
そんな夜だった。
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