『おいで、お兄さん』
手を広げている。何がしたいのだろう。
鬼は俺を優しく抱き締めた。
温かかった。今までで1番優しかった。
「俺…」
鬼を恐怖対象としていなかったのは、
そいつから愛を貰っていたからなのかもしれない。
俺は愛というものを知らずに生きてきた。
しかし、鬼は俺を求めて愛をくれた。
『ゆっくりでいい、話してみて』
俺は泣き始めていた。
「俺、親からは愛情ってものを貰えなくて、欲しいものも貰えなくて、」
『そうなんだね』
鬼は俺の話を聞いてくれている。
「寂しかったんだ」
俺はゆっくりと立ち上がる。
鬼も俺に合わせて立ち上がる。
「ありがとう、聞いてくれて」
『大丈夫だよ』
「俺、死のうと思ってたんだ」
鬼は驚いた顔をしていたが、その顔は一瞬。
優しい顔に戻った。
『そっか、可哀想に』
鬼は俺を理解してくれた。
『なら、俺も死んであげる』
「え、」
『1人なんて心細いでしょ』
俺は馬鹿げた発言に小さく笑ってしまった。
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