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僕のセフレは、二人いる──
溺愛系キャバ嬢のジュリ。
──そしてもう一人は壮一。
壮一とは、ノンケも出入りできるバーで出会った。
僕は、適当に夜の相手を探すために、声を掛けられるのを待っていた。
すると、その日友達と偶然飲みに来ていた壮一と目が合い、向こうから声をかけて来た──
店に入って来た時からすぐにノンケだとわかった。
連れもいたし、面倒だったから、
すぐに断った。
──だけど、
「誰か探してるなら、俺にしてくれないか?」
断っても真剣に食い下がる奴も珍しくて、興味本位で一夜限りの関係を持った。
──僕は「一回限りだから。」と、相手には前置きを必ず伝える。
そのときは了承したはずなのに、そのあともバーへ行くたびに壮一が声を掛けてくるようになった。
「あんた、本当はノンケのくせにしつこいよ。僕と一回寝たんだから、もう満足したでしょ?」
「……いや、お前の都合で良いから、俺をまた呼んでほしい」
「めんどくさいって言ってるのに……」
最終的には断ることが面倒になった。
ジュリの時と同様に、僕は意外と押しに弱いらしい。
ジュリといい、コイツといい、僕に寄ってくる奴はやたらと強引だ。
壮一と名乗ったこの男も、必死だった。
僕の身体はそんなに良かったのか……?
──そういえば、壮一と初めてセックスをした夜「男を抱くのは初めてだ」と緊張していたっけ。
ガッシリとした見た目の割に、あの時の僕の身体に触れる手はとても優しかった。
セフレ関係にあたっての約束事を”二度目の前”に壮一に伝えた。
──僕は特定の誰とも付き合うつもりが無いこと
──誘いを断る場合があること
──僕の相手が他に何人いても気にしないでいること
──それが条件になっている。
そんな自分勝手な条件でも、壮一はあっさりと受け入れてくれた。
そして、身体を重ねる僕らの関係に名前が付いた。
◇
壮一に他のセフレの名前を出したりしないけど、他にもセフレがいることに気付いているのは明らかだった。
「今日は、俺で良いのか?」
と、聞かれたことがある。
「いいからここにいるんだよ」
そう答えると嬉しそうな顔になっていた。
──僕は、セフレを作る理由を壮一には話していない。
でも、一度も聞かれたこともない。
「ツキ、いつもヤッたあと気絶してるけど、身体は大丈夫なのか?」
「──大丈夫。気持ち良いし、それくらいがちょうど良いから……壮一は?ちゃんと満足してる?」
「満足してるよ。」
壮一は不満を一切言わない。
彼は、僕が求める分だけ応えてくれる……
ジュリからは呼び出されるだけ。
でも、壮一とは家を行ったり来たりすることもあって、時々バーまで迎えに来てくれる。
壮一は、僕の顔が好きらしい。そこはジュリと同じ。
この顔の何がそんなに良いんだか……
ある時「セフレになる前、何であんなに強引だったの?」と、聞いてみた。
抱き合うようになってから知った普段の壮一は、どう見ても誰かに自分から声を掛けるようなタイプではない。
「ツキの顔が忘れられなかったから……」
「顔が好きだってこと?」
「たぶん……」
そう言って、珍しく困った顔になっていた。
どうやら、出入りしているハッテン場の中では、僕は”一度きりの関係しか持たないネコ”として有名らしい。
それなのに、そのことを他の客からの話で知っても、忘れられないくらい見た目が好きだったのか……
だとしても、これ以上その先は知る必要のないこと。
眠れない時に、誰か傍にいれば良いだけ。
──今夜も夢を見ない為に身体を重ねる
◇
──翌日。
いつも通りの時間に起きて、隣で眠る壮一を起こす。
「壮一、起きて……時間だよ」
「……おはよ。身体は大丈夫か?」
「大丈夫」
どんな状態で眠ってしまっても、起きると身体がキレイなのは、いつも壮一が拭いてくれているからだろう。
身支度を整えた壮一が帰る。
「じゃあ、また」
「……うん、またね」
とくに次に会う約束はしていない。
セフレなんて、そんなものだ──