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初兎🐇🐾
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グラッと目眩がした…
ここはどこ?
見渡すと中央線
「あ…明日は始業式だった。」
“ものすごい速度の電車”に揺られ青い空を見る
プシュッっと音が鳴り目を開けると目的地の由比ヶ浜に着いていた
赤い夕焼けの下に見たことあるような影が見える
君は誰?
目を凝らして見ると隣のクラスのめがねくんだ。
そーっと背後から近づく
そしてふぅ〜っと耳元に息をかける
そうするとメガネくんはビクッと体を揺らし頬を確かに染めながら耳を押さえた
「なんだ…君か」
「脅かすなよ」
私は悪戯げに微笑み
「隙を作る君が悪いでしょ?」
メガネくんはまた頬を染めながらじーっと見てきた。そしたらまた海を見渡した。
「こ…こんなとこにきてどうしたんだよ」
「明日は始業式だろ?」
「えーと…冒険少女?的な」
終始無言が続いてむず痒いので聞いた
「メガネくんこそ…どうしてここに?」
メガネくんはハッと思い出したように手に持っていた手帳を自分の反対側へ隠すように置いた
押すなと言われたら押したくなる
隠されたら見たくなる
それが人間の本能ってやつでしょ?
私は迷わずそれを取り上げた
「なにこれ…日記?」
8月1日・・・・8月31日
今日まで欠かさず付けていた
内容は馬鹿げていた
「夏休み…会えなくなっちゃうな」
「俺はすごい力を手に入れたかもしれない」
「会いたい…毎晩あいつが夢に出てきて俺を誘惑する」
この歳にしてよくこんな臭い内容の日記を…いやこの歳だから?
「それ!返せよお前!」
メガネくんがさっきよりも頬を真っ赤にして眉間に皺を寄せ、今にも泣き出しそうな目で手を伸ばしてきた…が面白かったので背の高かった私はグンッとメガネくんの届かないところまで手を伸ばした
「ねえあいつって誰?」
返事は決まっているだが、からかいたくて聞いた
予想通りまた頬を赤らめた
好きな人に違いない
「ふーん…好きな人なんだ」
「で…誰?」
「私のクラス?」
俯いたままのメガネくんは何も言葉を発しない
好きな人を炙り出すまで日記は持っておこうかと思ったが、予想よりつまんなくて、そのままポイと胸に叩きつけた
「どこ行くの」
メガネくんがやっと口を開いた
「ん…貝殻集め」
メガネくんが「僕も行く!」と妙に張り切った
「なんで?好きな人と行けばいいじゃん。」
メガネくんがまた俯いた
何も言わないメガネくんがまたつまんなくなりそのまま置いていこうとした
「待って!俺は…」
正直少し呆れてきた
言えばいいのに…早く
「好き」
正直最初から勘づいてはいた。
夕焼けじゃ隠しきれない頬の染まり具合少しだけ愛おしかった
「そーなんだ…じゃあついてきていよ。」
メガネくんはただ黙って後ろから着いてくる
「ねえ…私のこと好きなら」
メガネくんは言いかけた私を不思議そうな目で見つめる
「なんだよ」
「急に普通になるね笑」
「もうバレてんだし…いいじゃん」
「で、なに?」
憎らしいあいつのことを
可哀想な私のことを
「助けて」
メガネくんはじーっと私の顔に穴でも空きそうなほど見つめる
「そのすごい力とか言うので助けてよ。発明キットとかでさ…」
メガネくんは何も言わなかった
「ごめんねこんなこと」
「私の事好きな人なんているんだ、なんて思ったら少し嬉しくて…えへへ…照れちゃうね」
メガネくんはメガネを人差し指の間接でカチャッと直し自信げに「なんでも言って!」自分の胸に大きく手を当てる
少し動揺したが、そこまで私のことを好きなメガネくんが私は好きだった。でもまだこれから…
メガネくんは言う「でなに!?僕にしか頼めないこと?」
頷く「そう…親にも先生にも言えない」
メガネくんは唾を飲む
「あいつを殺して」
メガネくんは俯く
「それはどうして?」
「あいつのことが嫌いだから」
メガネくんはメガネを取る
眼鏡を取ってしまったらそれはもうメガネくんじゃない。
メガネを服に拭きもう一度メガネくんに戻る
「理由は教えてくれないの?」
「嫌いになるのに理由は必要?」
「…そこまで嫌いになるのに理由は必要だよ」
私は下を向いたまま黙ってしまった
そしてポロポロと涙が零れた
「だ、え…だいじょうぶ?」メガネくんは予想通りとっても焦っていた。「うっ…ひくっ…」
メガネくんはどう慰めたらいいのか分からなかった。背中をさするのでさえ妄想してしまうメガネくんは抱きしめて慰めるなどもってのほかだった
「僕がどうにかする!」
メガネくんはハッと口を押さえた
その言葉を聞き逃さなかった
「ほんと?」
夕焼けに照らされた赤い目が涙で輝いていた
メガネくんは唾をまた飲み込みゆっくり頷いた
そこから作戦を立てた
作戦と言ってもほぼメガネくんの言う通りにするだけ
始業式にあいつを呼び出して後ろから殴るんだって…もちろんメガネくんが
その後のことは…わからない
メガネくんだけが殺人罪として捕まるのかそれとも私も殺人罪として捕まるのか
「ありがとね。」
メガネくんは俯きながら「うん。」と何処か寂しそうな返事をした
寂しそうなメガネくんの手をぎゅっと握りしめた
…「ばいばい!またね」
メガネくんはいつもの馬鹿さを取り戻した
電車で帰る途中恋するハイティーンになっていたのか想像していた
遂に始業式を迎えた。明日までの数十時間は眠れなかった。時間が進むのが遅く感じたような特別早く感じたような気もした
メガネくんと目が合う
だけど直ぐにメガネくんが目を逸らした
もしかして約束を破る気?
任せてって言ったのに…
苛立った私はメガネくんを人気のないところにこっそり呼び出した
「約束破る気?」
「ちゃんとするよ」
「ならいいけど。」
「じゃあ…始業式が終わる頃にあの大樹の下に呼び出しておいて」
「絶対来てよ」
「うん」
やっとちゃんと目が合った。
全てから解放される…やっとこの日が来た
決行の時間を迎える
「ねえ…あのさ」
「相談したいことがあるから…あっちで話さない?」
「えーっと…」
「だって友達多いでしょ?聞いてよ〜」
「う〜ん笑いいよ」
あいつはにこっと気持ちの悪い笑顔を浮かべた
カサッと木の葉がゆる音…
いつの間にか木もここまで成長していた。
それが私に妙な違和感を与えた
だがそれ以上に目の前のこいつに夢中だった
「で相談って何?」
「えーっとね」
メガネくんはバレないようにこっそり裏から周り、あいつの後ろに静かに立った
私は微笑んだ
「じゃあね。」
ガコンっという音と共ににあいつは悲鳴をあげることもなく意識を失った
「死んだの?」
メガネくんは酷く額に汗をかいている
それにすごく息も荒い。
「このままじゃまだ意識を失っているだけ…」
「は!?早く消してよ!」
「待って…分かってる」
メガネくんはそっと木に手を置いてグッと押した
そうするとメキメキと木の中に人一人分の扉が開いた
「ちょ…は?なにこれ」
「これに入れるんだ…それを」
「何言ってるの?そんなの意識が戻ったらバレるに決まってる!!」
メガネくんは少しだけ間を置いて説明した
「この扉に死体や意識を失った動物を入れると…そのものが昨日に戻るんだ」
「つまり…どういうこと?」
「簡単に言うと、」
つまりはこういうことだった
過去にしか行けないタイムマシーンのようなもの
まるで欠陥品。
これに入れられたものは今日の記憶をなくし昨日へ戻る、つまり昨日と今日を永久ループするということだ。
「そんなの信じられるわけ…」
「信じて…君は、信じるしかないでしょ?」
レンズ越しのアツい目に焼かれそうになった。
「うん…」
「じゃあ足持って俺は頭持つ」
「せーの」と思い体を持ち上げて木の扉へ入れた
そしてメガネくんが扉を閉める
「ほんとにこれでいいの?」
「うん…」
笑いを堪えようと必死に口を抑えた
憎らしいあいつのタイムマシンは時空間に飛ばされひとっ飛びで昨日へ消えた
メガネくんはハンカチを渡した
その時…やっと自分も酷い汗をかいていることがわかった
そしてその日の夕方
笑いを我慢せずにはいられなかった
やっと消えてくれたのだ
明日からの妄想が膨らむ…
ピンポーンと玄関のインターホンがなった
母が扉を開けた
母の声が高くなる。
知らない男の声が私のことを呼ぶ
1回舌打ちを鳴らし
「はーい!」と足をドタバタ鳴らし下へ降りた
すると母が愕然している様子で私を見てきた
途端に私の額から汗が滲み出てきた
手足の震えが止まらない
顔の笑顔も引きつっているだろう…
自然に…自然にと思うほど
「君にお話があるんだけど…」
母は小声で呟く「お前は何かやると思っていた…産んだのが間違いだった…」
警察の後ろにはメガネくんが立っていた
「あは…私!!何も知りません」
「あいつがやったの!全部」
メガネくんを指さした
「とりあえず保護という形で…」
「来てもらえる?」
「いや!私何もしてないもん!!」
手を引っ張られ、震えて歩けない足を引きずった
メガネくんは私に聞こえる声で言う
「こうなるんだよ…俺とお前はずっと一緒」
不気味な微笑みを浮かべたメガネくんから目が離せなかった
「助けてあげようか」
元々お前ががやった事だ!!と言いたかったが
私がメガネくんの立場でも自分だけが罪を背負うなんてしなかっただろう
物乞いをするように私は必死に頷いた
そうするとメガネくんは私の手を思いっきり引っ張り、走った
「おい!!待て!!」
どうせ捕まる。だがその熱い手を振り払うことができなかった
あの木の下まで走った
息を切らして。
「はぁ…はぁ…なんで」
「俺は君のことが好き。だから離してあげるつもりなんてないよ」
「ちょ!今そんなこと言ってる場合…」
パトカーのサイレンが聴こえる…まだ体が震えてる「私たちを探してるんだ…」
「どうしよう…助けてくれるんでしょ?」
「うん…助けるよ…ずっと」
視界には…赤い色だけが覆った
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俺はずっと好き
だから昨日をやり直して永遠に一緒なんだ…もう運命は変えられない
でも君が望んだことだ。
だから僕がもし昨日になっても僕は君と過ごしたことは忘れない
体は子供でも心は確実に歳をとっているんだよ…
だけど君は年中になった時から貝殻は集めなくなった。君が僕との思い出を気づいたらきっと運命を変えようとするだろう。
あの木は確実にでかくなっている。ちょうど人1人分入れるくらいに…でも寂しいな
君の体を隅々まで見て息ができなくなるくらい君で埋め尽くされるのがもうできなくなるかもしれないなんて…
でももう苦しくなんてないでしょ?
僕がずっと
からね_____
ーENDー
コメント
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読み終わりました……。これは、タイトルの「速い」が皮肉にも効いてくるお話ですね。夏の夕暮れの甘い空気から一転、あの「助けて」の一文で物語の色が変わった瞬間、ゾクッとしました。時間をループさせる木の設定も、一見ファンタジーなのに「欠陥品」という言葉が不気味で、最後のメガネくんの独白が全てをひっくり返す。計算された構造だなあと感じました。続きが気になります……というか、もう完結してるんですね。これはじわじわくるやつだ。