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「外から見ても大きいけど、門をくぐると、もっと大きく見えるね」 威厳たっぷりの鉄柵の門と、石造りの門柱をくぐって、朝倉くんは言った。
そこをくぐると、その奥には芝生と庭の、中央に噴水、天使やら、ダビデやらの石膏像が並び、その奥に白亜の城みたいな豪邸。
なんというか、ビバリーヒルズ? みたいな、土地が余ってる大陸の高級住宅街にある、お金持ちのお屋敷の感じ。
私を含む女子は二回目だけど、朝倉くんは初見なんだから、もうちょっとリアクションしてもいいんじゃない? ほら、同じく初見の後藤くんは、口をあんぐり開けて固まってるぞ。
これが自然な反応だと思うんだけどなぁ。
爺やの先導で、玄関の前に立つと、両開きの扉が自動で開いて、開いたドアの真ん中にマヤちゃんが、ちょこんと立っていた。
ちなみに、電動式の自動ドアではなく、メイドさんが両側に一人ずつ付いて、内側から押している。
「みなさん、ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりました」
マヤちゃんが、にっこりと笑って、私達に向かって礼をした。
この前は、駅前まで迎えに来てくれて、一緒に門をくぐったけど、こうやって迎えられるのも、もてなされてるって感じがして嬉しい。
「招待してくれて、ありがとう。楽しみにしてたんだ」
朝倉くんは、マヤちゃんに微笑みかける。
爽やか主人公スマイル。こういう時に、こういう顔出来るのは、流石主人公って感じだ。
時々様子がおかしいけど、基本はイケメンの言動なんだよなぁ。様子のおかしさは、天下のTONAMieと言えど、ギャルゲーは不慣れだった結果だったりするのかな。
「オレまで呼んでくれて、ありがとうな」
後藤くんは、照れくさそうに頬をかいて、マヤちゃんにお礼を言った。
「うふふ、お友達はたくさん居た方が楽しいですから。ね、佳奈さん」
え、私に振るの?
そりゃ、友達が多いに越した事は無いけど、なんでその話を私に振ったのか、理由が分からない。
私が困惑していると、マヤちゃんは頭上に大きなハテナを浮かべて首を傾げた。
「佳奈さんが、情報屋をしているのは、皆さん友達を作ってあげるためではないの?」
私的には、情報屋を始めたのは、そもそもが私利私欲のためだし、友達じゃなくて朝倉くんに恋人を、というのが目的だ。
でも、結果的に、みんなに友達を増やすという事にはなってる。マヤちゃんの目に映る私は、そういう風に見えるらしい。
「ん〜〜……まあ、そうと言えばそう、そうではないと言えばそうでもない、と言った所でしょうか」
「なあにそれ」
「ふふふ、人が仲良くなるように図っている、とだけは言っておきましょうか」
恋人であれ、友達であれ、仲良くなるのに違いはから、嘘は言ってない。
マヤちゃんの頭上のハテナは、ますます大きくなった気がするけど、まあいいや。
「伊集院さん、きっと情報屋には話せない秘密がたくさんあるんだよ」
朝倉くんが、フォローを入れてくれた。
朝倉くんには、情報源は秘密だと私から説明したことがあるから、他にも秘密があると思われたらしい。
まああるよ? 私が異世界転移をしてきた事とか、ここがギャルゲーの世界だと知ってるとか、チート能力を使ってる事だとか、言えない秘密はたくさんある。
「そうなの? なら、聞かないのがマナーね」
「察していただいて、ありがたい限りでございます」
マヤちゃんは、素直に朝倉くんの意見を採用してくれた。
ちょっと申し訳ない気もするけど、ここは甘えておこう。
「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
マヤちゃんは、そう言って私達を部屋へと案内してくれる。
中央をぶち抜く長い廊下、等間隔に配置された美術館みたいに大きい絵画、二階へ続く階段はまるで宝塚の男役が降りてきそうだし、天井からはぎらんぎらんしたシャンデリアがぶら下がっている。
いかにもお金持ちらしい、豪華絢爛な造り。
初見の二人は、キョロキョロしながら歩いている。
私達も、最初はそうだったよ。そして、この後出てくる手作りクッキーと、爺やが淹れた紅茶で、味覚的にも驚かされるがいい。
*********
今日は、とっても楽しかった。
男の人を家に呼ぶのはいかがなものか、なーんて、爺やは言ってたけど、翔太さんとケンジロウさん本人を見たら、考え直してくれた。
お茶会の後に『お二人とも、よくできた御方でございました』だなんて、現金な事言っちゃって。
『お嬢様が、こんなに早く、こんなにたくさんのお友達を作るとは、嬉しい限りでございます』とまで言ってた。
こっちに引っ越してきて、最初に作ったお友達が、佳奈さんで良かった。
前に居た所のお友達は、仲良くはしてくれたけど、他に人に渡したくない、自分達だけの味方にしたいみたいだった。
それを感じてたから、ずっとモヤモヤしてた。
でも、佳奈さんは違う。自分一人で独占しようとしないし、みんなが仲良くなるように気を遣ってくれる。
さやかさんとこのみさんが仲良くなったのも、二人が翔太さんと仲良くなったのも、佳奈さんのおかげなんだって、みんな口を揃えて佳奈さんを褒めてた。
マヤも、佳奈さんと友達になれたから、さやかさんやこのみさん、翔太さんとも友達になれた。
ケンジロウさんとだって、あの場を収めてくれたのが、佳奈さんじゃなかったら、友達になれなかったかもしれない。
でもどうして、佳奈さんは自分より、他の人を優先するの?
佳奈さんなら、もっとお友達がたくさん居てもいいはずだし、独り占めしたい事だって、たくさんあるはずなのに、なんでそれをしないの?
もしかして、人を信じられなくなる何かが、佳奈さんの過去にあるのかな。
だから、自分より他人を優先しちゃう……とか?
もしかしたら、不思議な喋り方も、自分を隠すために、別人を演じてる……とか?
あんまり、考えたくない。佳奈さんの心に暗い所があって、その裏返しがみんなに対する優しさだなんて、思いたくない。
でも、もしそうなら、マヤに出来る事は、今日みたいにお茶会を開いたり、遊びに誘ったりして、佳奈さんを楽しい気持ちにする事だと思う。
今日のお茶会、みんな楽しんでくれてたと思う。翔太さんが笑えば、このみさんが嬉しそうにして、さやかさんが笑えば、マヤが嬉しくなる。
みんなが楽しそうにしてると、佳奈さんが
幸せそうに笑ってた。
マヤは、佳奈さんにもっと笑ってほしい。もっとたくさん笑わせたら、きっと本当の友達になれるはず。
本当の友達になれた時、佳奈さんの心の氷が解けて………、本当に、悲しい過去があるのかは分からないけど、もっと笑ってくれるはず。
そのために、マヤは出来るだけの事をする。佳奈さんが、たくさんたくさん、心から笑ってくれるように。
#R15
(株)姫神V
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