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余たちは戦闘着に着替えて、校庭へと出る。
他のクラスの者たちと合同で魔法のテストとやらを行うそうだ。
「ふん! 私の実力を見せつけるのに、格好の舞台を用意してくれたってわけね!」
フレアが自信満々にそう言う。
「僕だって負けないさ。たくさんの証人がいる前で、僕の実力を見せてあげるよ」
シンカも負けじとそう言い返す。
この2人は本当に、仲が悪いな。
まだ入学して1週間しか経っていないというのに。
「見ろ……。あの2人、入学式で暴れていた首席合格者だぜ」
「魔力の波動がとんでもねえな……。常時開放魔力で、この量かよ……」
周囲の生徒たちがそうつぶやく。
フレアとシンカの知名度は、かなり高い。
なにせ、入学式でド派手なバトルを繰り広げたわけだからな。
高校一年生としては、破格の実力を持つと言って間違いない。
「フレア様の赤い髪、素敵……」
「ううん。シンカ様の方が魅力的よ……。見て、あの透き通りそうな青い髪を……」
女生徒たちがうっとりとした表情でそうつぶやく。
さらに、フレアとシンカ以外にも注目を集めている者がいる。
それは——
「見ろ……。あいつが、首席合格者の2人のケンカを止めていたやつだぜ」
「得体の知れない技で、2人の魔法を止めていたようだった。なんなんだ、あいつは……」
余を遠巻きに眺め、生徒たちがそうつぶやく。
注目を集めているのは余だ。
まあ、仕方あるまい。
あんな戦い方を見せてしまったからには、噂になるのも無理はない。
余は将来の伴侶を探すために、この学園に通っている。
魔王という肩書に惑わされぬ、真実の愛を探しているのだ。
過度に実力を見せれば余が魔王だと勘付かれるかもしれぬが、あの程度であれば問題あるまい。
余だけでなく、四天王や六武衆クラスでも発動可能な魔法だしな。
と、余がそんなことを考えている内に――
「皆の者! これより、合同での魔法のテストを開始する! なお今回は特別に、六武衆のバラガン様が視察に来られているのじゃ!」
教師のリーズがそう叫ぶ。
六武衆のバラガンか。
この学園で会うことになるとはな。
「儂がバラガンである! 諸君はヒヨッコだが、将来有望なヒヨッコだ! 世界の平和と発展のために、がんばるのだぞ!」
やつがそうあいさつをする。
無骨な武人タイプの魔族だ。
年齢は60歳を超えている。
「では、さっそく魔法のテストを行っていく! あの的を見るのじゃ!」
リーズがそう叫ぶ。
ここから離れたところに、的が並べられている。
的までの距離は、まちまちだ。
近いものでは、ここから20メートルぐらい。
遠いものでは、ここから100メートル以上離れている。
「あの的に魔法を当てろってことか?」
「近いやつはともかく、遠くの的は厳しそうだな……」
生徒たちからそう声が上がる。
彼らの推察通り、あの的に対して遠距離攻撃を行えるかどうかを見るテストだろう。
いかに繊細な魔法式を構築できるかが肝だ。
それに、威力や攻撃範囲も重要である。
威力が不足していると、的に届くまでに霧散してしまうかもしれない。
威力をたっぷり込めて攻撃範囲も広めにしておけば、多少狙いがずれても問題ない。
しかしその分コントロールが難しくなり、暴発や不発のリスクが高くなる。
そのあたりのバランスを考えて魔法式を構築する必要がある。
「その通りじゃ。諸君の今の実力をあらためて見せてもらうぞ。何、失敗しても即落第などはないから安心してくれ。ここは、諸君を教育する機関じゃからな」
リーズがそう言う。
入学テストでも、魔法の試験はあった。
生徒たちの実力はある程度把握しているはずだが、念のため最新の実力を知っておこうといったところか。
入学テストから数か月は経過しているし、各自成長しているはずだからな。
「わかったよ。まずは、僕が挑戦してもいいかな?」
最初に声を上げたのは、シンカだ。
「シンカ=アクアマリンか。いいじゃろう。実力を示してみろ」
リーズがそう許可を出す。
「おお……! 首席合格者のシンカさんだぜ!」
「人族の希望の星! 頼むぜ!」
生徒たちからそう声が上がる。
その声援を背に、シンカが前に出る。
的当ての規定位置に立ち、呼吸を整える。
「……澄みわたれ! アマリリス!」
しゅわわわ……。
シンカの髪が半霧化し、水の魔力が彼女を覆う。
入学式のフレアとの戦いでも使っていた技だな。
これ自体は攻撃技ではなく、魔力を開放して攻撃態勢を整える技だ。
次に放つであろう、攻撃魔法を見せてもらうことにしよう。